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旅神のご加護がありますように!  作者: マリオン
第34話 教団

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8

「逃げるぞ!」

 絶影は声を張りあげながら。

「──え?」

 事情の呑み込めぬ私の手を引く。


「暗殺者はまだそこら中にいる! 新手が出てくる前に逃げるんだよ!」

「ちょ──っと、待って!」

 今にも駆け出そうとする絶影の手を振り払って──私は床に転がった異界の短剣を拾いあげて、腰に戻す。


 アシディアル翁は、闇のグンダバルドの敗北が信じられぬようで、いまだ呆然としている──が、信徒の群れの中に、他にも暗殺者がまぎれているとなると、いつ老翁の命により新手が襲いかかってくるやらわからぬ。確かに、逃げるにしくはなかろう。


 私たちは聖域を飛び出して、長い通路を駆ける。私は遠慮なく疾風のごとく駆けて──絶影は、先の透しの要領であろう、平然とそれについてくる。


 火吹山より出でて、通路に窓が現れたあたりで──私たちは振り返り、追手のないことを確認して、速度を落とす。


「二人の勝利だな!」

 絶影は、私に向けて、右手を掲げて。

「いいや──()()だよ」

 言って、私はフィーリをなでながら、絶影と手を打ちあわせる。


 フィーリがいなければ、私は胸を貫かれて死んでいたであろうから、最大の功労者と言っても過言ではあるまい。


「そういえば──フィーリって、絶対に壊れないの?」

 北壁で落とした折にもそのようなことを言っていたな、と思い出して、私はフィーリに尋ねる。

「私の外装には時間という概念がないのです」

 フィーリは簡単なことのように返すのであるが──当然わけがわからない。


「長い──長い旅をするための旅具が、劣化して壊れてしまっては、本末転倒でしょう。そのため、私の外装は、魔法により時が止まった状態となっているのです。時の止まったものを壊すことはできません」

「──そんなことができるんだ」

 いくら魔法の力とはいえ、そのようなことができるとは、にわかには信じられず──私は思わずそうこぼすのであるが。

「特別な旅具なので」

 返すフィーリの言葉は軽い。


「ちょっと──困ります! お待ちください!」

 と、不意に──通路の先の突きあたりの角から声が飛んで、そちらに目をやる──と、現れ出でたのは黒鉄と、その黒鉄を何とかして引き留めようとする信徒の群れである。


「おお! マリオン、ここにおったか!」

 黒鉄は、自らに群がる信徒をものともせず、そのまま引きずるようにして、こちらに駆けてくる。


「──どうしたの!?」

 私は足を止めて──黒鉄と、その後ろを駆けてくるロレッタを待つ。

「緊急事態なんじゃ!」

 黒鉄は信徒を振り払いながら告げる。


「こっちも──」

 緊急事態だよ、と返しかけたところで──黒鉄の後ろから、ひょっこりと顔を出した愛らしい黒猫の姿を認めて。

「──エリス!?」

 私は驚きの声をあげる。


 エリスは黒鉄の後ろから飛び出して、私の腰にすがりつく。黒猫は上目で私をみつめる。その瞳は涙で潤んでおり──ただ事ではない何かが起こったであろうことが知れる。


「ルジェン様が──」

 エリスは震える声で続ける。


「ルジェン様が──さらわれてしまったのです!」

「教団」完/次話「災禍」

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― 新着の感想 ―
感想失礼します たまたま目について読ませていただいたのですが一気見してしまいました 次回も楽しみです
流石きな臭い教団本部一筋縄にはいかないですね ドキドキする戦闘で面白かったです
絶影との最初の遭遇はルジェンと出会う前でしたっけ… 冥界の犬に襲われ、アシディアル翁を紹介されすんなり奥に通された挙句、罠に掛かる。 ルジェンの存在も何者かであるかも筒抜けでしょうね。 ここへ黒騎士…
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