表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
98/234

第91話 『 聖大天使との密会 』

ここからアムネトパート

作者はこのパート書いてアムネトにキュンとしました。

【 side颯太 】


 ―― 4 ――


「どういうことだよ、アリシアがまだ人間になってないって」


 告げられた衝撃の余韻に体が震えたまま、颯太は声を震わせて先を促した。


「やはり、お前は頭は冴えるようだが聡明ではないようだな」


 皮肉を交えながら吐息すれば、アムネトの声音が低くなった。


「貴様の願い程度で、本当にアリシア様が堕天するとでも思ったのか」

「――ッ」


 その厳然とした声音に、颯太は恐怖に足を竦ませた。ただならぬ威圧に、声が出なかった。


「己惚れるな、人間」


 それは宮地颯太という人間の小ささを自覚させるのと同時に、どこか寂寥感も滲んでいた気がして。


「俺が、アリシアの隣に立つのに足らない人間だっていうのは認めてる。だから、どうしてまだアリシアが天使のままなのか、暴走の事も含めて、教えて欲しい」

「――――」


 自分がアリシアに不釣り合いだということは、誰でも颯太が一番自覚している。その事実に奥歯を噛みしめながら、颯太はアムネトに頭を下げた。


「説明してやる。だから頭を上げろ」


 大きく吐息する音が聞こえれば、アムネトがそう促してきた。彼の言葉通りおずおずと顔を上げれば、颯太は激情を堪えながら黒瞳に緑の天使を映した。


「――ここは太陽が綺麗だな」

「……夕日のことか」

「夕日というのか、あれは」


 説明を始める前、顔を逸らしたアムネトはこの坂道から見える夕日に双眸を細めた。


「立ったまま話すのも気が進まない。せっかくだ。景色を見ながら話そう。この話は、私としてもあまり愉快なものではなないからな」


 これがアムネトなりの颯太への配慮なのか、それとも本当に景色を楽しみたいからなのか。颯太には分からなかったが、頷いた。


「分かった」


 相槌する颯太にアムネトは初めて気を緩めてくれた気がした。

 それから、颯太はゆっくりと坂道を降りていくアムネトの背中に続いた。

 そして彼と歩幅が会えば、アムネトは颯太を一瞥してから口を開いた。


「アリシア様が堕天して尚、未だ人間ではなく天使なのは、あのお方が特別な存在だからだ」

「アリシアが特別な存在?」


 アムネトに言葉を復唱すれば、彼はこくりと頷いた。


「アリシア様は他の天使と違って、神様の恩恵を多く与えられた方なのだ」


 確か、以前にもアリシアがそれを言っていた気がする。

 神様の恩恵、とまた復唱する颯太の様子を窺いながら、アムネトは続ける。


「アリシア様が与えられた神様の恩恵は、いま天帝の座席についているものと同等、あるいはそれ以上のものなのだ。故に、天帝様がアリシア様を堕天させても、天使という存在そのものが完全に消せることはできなかった」

「どんだけ神様に愛されてるんだよアリシアは」


 自分の恋人が運命を司る神様に余程気に入られていることを知って、颯太は驚愕した。


「もう少し、いや、これにしっかり危機感を持て」

「……悪い」


 叱責するアムネトに居住まいを正され、颯太は己の頬を叩いた。


「アリシアが神様に凄い愛されてて、それが強すぎて天使のままっていうのは何となく理解できたよ……」


 かなりざっくりしてはいるが、要は、天帝様はアリシアの神様の恩恵を消す事ができなかったということだ。それが、アリシアが天使としての残滓が残ったままの原因なのだろう。


「それが、暴走と関係あるんだよな」


 神様の恩恵と暴走になんの結びつけがあるかは分からないけれど、この二つが問題であるということは分かった。


「話が早くて助かる」


 褒めてやる、と変わらず高慢な態度のアムネトに「そらどーも」と適当に返して、颯太は先を促した。


「アリシア様はまだ、完全には人に堕ちておられない。天使としての存在が残っている影響で、神様の恩恵すらも多く残ったままなのだ」

「それって良くない事なのか? 神様から沢山恩恵を貰ってるんだから、普通に良い事なんだと思うんだけど……」

「これだから人間は駄目なのだ。考えが甘すぎる」


 と思ったことを言葉にすればアムネトに落胆された。

 それから肩を落としたアムネトが「見ていろ」と顎で指示してきたので、颯太は眉間に皺寄せながら従った。


「……誰もいないな」


 きょろきょろ、と周辺の人が二人に注目していないことを確認すれば、アムネトは右手を上げた。

 その瞬間だった。


「うおっ⁉」


 驚愕に声が上がったのは、アムネトが上げた手にいつの間にか水晶がはめ込まれた錫杖が握られていたからだ。刹那の間に顕現されて、


「うおおっ⁉」


 そして刹那の間に消えた。

 まるで手品でも見ているかのような一瞬は、まだ続いた。

 今度はアムネトが手を下げて、路地の小石に指を指した。


「浮いた⁉」


 次は小石が宙にゆらゆらと浮いた。小石はアムネトの指が動かした方向に自由に舞い、それを目で追う颯太の前にぴたりと止まった。おずおずと手を差し出せば、その手に小石が着地した。


「これが、神様の恩恵だ」

「す、すげぇ……ッ」


 胸の奥から言い知れぬ感動が込み上がってきて、少し疲れたように吐息するアムネトに子どものような無邪気な瞳を向けた。


「なにこれすげえ! 今のって超能力だよな⁉ え、天使って皆これできるの⁉ すげぇ!」

「語彙力が乏しくなっているぞ貴様」


 こんな光景を目にしたら誰だって知能は低くなるはずだ。感嘆する颯太にアムネトは煩わしいと手で颯太の拍手を一蹴してから、


「全ての天使が出来る訳ではない。神様の恩恵が多いものか、出来てもせいぜい純大天使くらいからだろうな」

「ということは、アリシアも出来たのか⁉」

「当然だろう」


 しれっと答えれるも、颯太にとっては中々に驚愕の事実だ。まさか、恋人が超能力者だったとは、アリシアへの尊敬がまた一つ上がった。


「まぁ、地球でやるのはやはり疲れるな。そう何度もやりたくない」

「やっぱそういうのって疲れるもんなのな」


 洋画でも超能力を使い過ぎると疲労が蓄積する描写があるが、どうやら本当のことらしい。

 気怠そうなアムネトに気を遣いつつ、颯太は手に持つ小石を捨てて、


「ちょっと待っててくれ」

「?」


 アムネトをその場で待機してもらい、颯太は小走りで自販機に寄った。

 小銭が無かったので500円を入れて、ボタンを押す。ガコン、と鉄に容器が落ちる音を聞いて、また一つボタンを押した。

 小銭を財布に入れて、容器を2本両手に持てば、大人しく待つアムネトの元に駆け戻る。


「ほい、どっちがいい?」

「なんだこれは?」


 ぐいっ、と彼の前に容器を2本差し出せば、アムネトは初めて見るものだと顔を顰めた。

 やはりどの天使も地球には疎いらしく、それが全員共通なんだと少し嬉しくなった。


「飲み物だよ。喉が渇いたし、そこに自販機があったから買ってきた」

「……しかし」

「別に、地球の物を食べちゃいけない、なんて法はないだろ?」

「それはそうだが」


 どうやらアムネトが渋い顔をしているのは、天界の法に叛くことではなく純粋に未知の代物を受け入れがたいようだ。そこはアリシアと違うんだな、と思わず苦笑が漏れた。


「物は試し、だろ。アリシアだって普通に飲んでるんだ。安全性は保障するから」

「うぅむ。あの方が平気で飲まれているのであれば……そうだな」


 アリシアを引き合いに出せば容易く折れるアムネト。どこかの誰かに似ているきがして、妙に親近感が湧いてしまった。


「どっちがいい? とりあえず今日はおしる粉とカフェオレにしたけど、好きな方選んでいいぞ」


 お茶はありきたり過ぎてつまらなかったので、少しの悪戯心が働いておしる粉をチョイスさせてもらった。もう片方のカフェオレは、アムネトが好みそうだったので選んだ。


「むむむ。どちらも形が違うのだな」

「……好奇心が働くのそっちなのな」


 中身が分からない缶と中身が見えるペットボトル。交互に見比べるアムネトに、颯太はアリシアとの思い出が蘇る。


 ――アリシアにもやったなぁ、これ。


 その時はスポーツドリンクとおしる粉で、アリシアは前者を選んだ。おしる粉を選ばなかった理由としては、中身が分からなくて怖かったからだそうだ。


「よし、私はこちらにしよう!」


 と思い出に浸っていると、アムネトが楽しそうに声を上げて指を指した。


 ――お、意外だな。


 目を丸くしながら、颯太はアムネトが要求した方を渡した。


「ほい。おしる粉な」

「おぉ、これがオシルコかぁ……!」


 渡したおしる粉の勘を目を輝かせながら舐めますように眺めるアムネト。好奇心の前では皆こんな顔をするんだな、と颯太は彼に気付かれないよう苦笑を浮かべた。


「ほら、早く飲まないと冷めちゃうぞ。おしる粉は温かい方が美味しいんだ。あ、そうだ。缶を開ける前にしっかり振ってくれ」


 缶を手で振るジェスチャーをすれば、アムネトは困惑しながら真似した。


「こうか?」

「そうそう。大体10回くらい。うん、それくらいでいいよ」

「よし……では、さっそく。待て、これどうやって飲むのだ?」

「ん。あぁ、これはこうやって開けるんだ。やってみな」


 缶の開け方を知らないアムネトに開け方をレクチャーしつつ、実践は彼にさせた。缶を開ける事は人間にとっては知っていて当然だが、彼は天使だ。地球に訪れる機会も滅多にない。だから、少しでも珍しいことや楽しそうなことは体験してもらいたかった。それで地球のことを良く思ってくれれば嬉しいし、何よりも、思い出として胸に取っといて欲しかった。感を開けることが思い出と言われても複雑ではあるが。

 ともあれ、アムネトにとっては缶を開けることも貴重な体験なはずだ。ならば、颯太の役目はそのお手伝いで代わりに開けることではない。


「こうして、こう……」


 天使の缶開け初挑戦を、颯太は親のような眼差しで見守った。敵対していたはずなのに、缶開けごときに奮戦するアムネトになんだかほっこりしてしまう。

 颯太の心情などつゆ知らず、アムネトは缶の蓋をグッと引き起こすと、


「おぉ、開いた! 開いたぞミヤジソウタ!」

「おぉ、良かったなぁ」


 達成感に額の汗を拭うアムネトに、颯太はそんな大仰な、と内心でツッコまずにはいられなかった。


「飲んでいいのだな」

「お好きなタイミングでどうぞ」


 ごくりと生唾を飲み込むアムネトに、颯太は余ったカフェオレの蓋を開けながら適当に返事した。


「よし、飲むぞ……飲むからな。飲むぞ!」

「いや早く飲めよ! なんでたかがおしる粉ごときに熱湯風呂みたいに躊躇してんだよ!」

「貴様が好きなタイミングでいいと言っただろう」


 中々飲まないアムネトに、颯太もじれったくなってしまって声を荒げた。

 そんな颯太にアムネトは文句を言いつつ、ようやくおしる粉を口に運ぶ覚悟が整ったようで、


「よし――」


 ゆっくりと、缶を持つ手を少しだけ緊張で震わせながら近づけていく。

 やがて、缶と口が触れて、缶が大きく傾く。それと同時に、アムネトの喉がゴクリと波打った。


 ――どんな反応してくれっかなー。


 さて、異界の食べ物、それもおしる粉という甘さの暴力を呑んだ天使の感想は如何なものか。


「う……」

「う?」


 ぷるぷると体を震わせるアムネトがぽつりと何か呟いて、颯太は聞き耳を立てた。


「うっま――――――――――い⁉」


 そんな天使の歓喜の雄叫びが、町に響いたのだった。


  ―― Fin ――

拝啓、読者の皆様。今日の更新日にこのお話を見られたということは、作者は寝ているか起きていることでしょう。卒業制作展であるにも関わらずw

ムリムリ! 3話更新で卒業制作展に行くとかスケジュールハード過ぎるからw お話作り置きしないとミイラになるって⁉

ということで、今話の更新から本日残り2話は予約投稿しております!

第92話、第93話の更新予定としましては、

第92話 15時

第93話 20時に更新を予定しています。

。。。おい、俺がせっかく祝日に「今日は書ける! お話作り置きできるぞー!」と思って進めたストックはどこにいったんだよ⁉ もうないよ⁉

なんかあとがきが作者の愚痴をこぼす場所みたいになっていますが、読者の皆様はこれも楽しんで見ていただけたら幸いでございます。

というわけで土曜日は天メソ祭りじゃー!!!

あ、卒業制作展での作者の様子が気になるかたはTwitterの方をフォローしていただけると嬉しいです。自分が卒業制作展で描いたアリシアがアップされますので、気になる方はチェックだチェケラ!


↓↓↓

コメント、ブックマーク、感想など気軽に頂けたら励みになります!  

各サイトのリンクは下記から↓↓↓

Twitter→@yuno_takuyaとなります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ