第84話 『 女王様のお誘い 』
今日サラッとなろう勝手にランキングをチェックしたら16位でした。こりゃおったまげた!
登場人物紹介~
宮地颯太 (みやじそうた) 本作主人公。天使のハートを射止めた元不登校児。
アリシア 本作メインヒロイン。可愛さの権化。こんな彼女が欲しいよぉ――――!!
優良三津奈 (ゆらみつな) 颯太のお姉ちゃん。皆様お待たせしました。久しぶりの登場でございます!
神払聖羅 (かんばらせいら) 学年一の美少女。ついたあだ名は《女王》 颯太を揶揄うのが好きなので実施女王。
三崎朋絵 (みさきともえ) 颯太の親友。女友達にしたいランキング一位はこの子で。早く報われろ!
倉科陸人 (くらしなりくと) 颯太の親友であり、朋絵に想いを寄せる少年。早く告白しろよぉ!
【 side颯太 】
―― 18 ――
「…………まじか」
部活も終わり、これから帰ろうとしていた時だった。
「ソウタくん。ちょっといいかな」
「あ? なんだよ、神払」
振り向けば、こちらに手を振るのは聖羅だった。彼女のトレーニングウェア姿もいつの間にか見慣れて、学年一の美少女ではなく同じ部員なんだと意識が根付く。
「何か用?」
「うん。ちょっと相談があって」
「相談?」
はて、と首を傾げる颯太に、聖羅は続けていく。
「ソウタくん。今日はもう特に予定ないわよね」
「なんでない事が確定事項みたいな言い方されるんだ」
聖羅のさりげなく胸を抉る発言に頬を引きずらせると、彼女はふふ、と悪戯な笑みを浮かべながら謝った。
「あぁ、ごめんなさい。いつも早く帰るから、友達と遊ぶ予定なんてないものだとばかり思ってたから」
「友達ならちゃんといるし、早く帰るのには理由があるからだよ」
「それって、カノジョさんのこと?」
「だったら、なんだよ」
改めて指摘されると、なんだか気恥ずかしくなる。
バツが悪くなる颯太に、聖羅は真意の掴めない表情を貼りながら、
「ううん。なんでもないわ。ただ、ソウタくんは本当に恋人想いなんだな、って」
「恋人なんだから当たり前だろ?」
「そういうことをさらっというの、ソウタくんの美徳であり減点対象ね」
いったい何が減点なのかと眉間に皺を寄せる颯太に、聖羅は間髪入れず質問を投げる。
「それで、今日は予定あるの? ないの?」
「んあ……まぁ、今日はない、かな」
「あら、曖昧な返事ね」
煮え切らない颯太の態度に聖羅は眉根を寄せた。
颯太としても、今日は即帰宅する予定だったのだ。今日は日曜日の午後。アリシアと一緒に居られる貴重な時間。なのだが、あいにく、現在アリシアは外出中だった。
――みつ姉のやつ、急にアリシア買い物連れていきやがって。
帰る間際にスマホを確認した時に、みつ姉からメールが届いていた。メールの内容は【アーちゃん借りるわね、旦那さん】というものであり、みつ姉の車に乗ってピースするアリシアの写真付きで送られてきた。
誰が旦那だ、という脳内ツッコミはさて置き、颯太の午後の予定も未確定になってしまった訳だ。アリシアが何時頃に帰ってくるのかも詳細不明なので、なら家に帰ってだらだらしようとしていたのだが。
「なんか用事があるなら、今日は付き合えるぞ。あ、ただし! 俺に被害が及ばないやつで」
「強調されるのが私としては物凄く不服だけど、安心して。ソウタくんの評判になんら被害はないわ」
「できれば評判だけでなく俺の精神面においても被害が及ばないで欲しいんだが……」
「できるだけ善処するわ」
「そこはしっかり善処しろよ」
軽口の応酬はそこまでにして、二人は一度息を整える。
「んで、用は何?」
頭を掻きながら聞けば、聖羅はにこりと笑って答えた。
「今から、私と――デートして欲しいの」
「はい却下。じゃあまた明日な神払」
恋人がいると既知していながら堂々たる聖羅の発言に、颯太は冷淡に突き放した。
途端、聖羅は慌てながら袖を掴んできた。
「冗談よ、冗談! 本気にしないでよソウタくん」
「いや冗談でも行かないわ⁉ ていうか、恋人がいる相手によくデートしようなんて言えたな⁉ 全員が全員断るわ!」
「ソウタくんならワンチャンあるかな、って」
「ある訳ねぇだろ、離せ!」
説得する気もない聖羅の手を力づくで引き離せば、颯太は数メートルほど彼女との距離を話す。
先の発言で警戒心を強くした颯太に、聖羅は困ったと吐息した。
「デートの言うのは嘘だから。本当に、少しだけ付き合って欲しいだけよ」
「……一応、聞いてやる。何に付き合うんだ」
流石に聖羅も度が行き過ぎた反省したのか、しゅん、と顔を伏せる。颯太は警戒心こそ解かないものの、彼女の様子を窺いながら先を促した。
すると、聖羅はぱあっと顔を上げて、
「スパイク選びです」
と聖羅が端的に答えて、颯太はなるほどと納得した。
「まぁ、それなら確かに付き合って欲しいと言われるのも理解できるが、でも、今年はもう買う必要ないだろ」
陸上は短距離と長距離のシーズンに別れ、冬場は短距離(要するにトラックで行われる競技)の試合はない。なので、今から購入したところで使うのは来年の春以降だ。
その説明は以前にも一通り聖羅に説明したはずなのだが、聖羅は「そうなんですけどね」と顎に手を置いて、
「でも、慣れておくのに損はないかと思って」
「そう言わればそうだが、でもなぁ」
スパイクが欲しい、と言っても、当然学生が易々と買える手頃な値段ではないのだ。安くて1万5千からで、メーカーによっては一足3万前後は余裕でする。
「お前がどうしても欲しい、って言うなら俺は別に止めないぞ。そんな決定権は俺にはないし。でも、スパイク選びだったら、それこそ女子部員同士で行けばいいだろ」
なんならその方が聖羅も気を遣うことなく楽しく買い物できると思うのだが。
そんな颯太の思惟に、聖羅は真紅の双眸を細めて、挑発するように言った。
「あらら、ソウタくんは、私のマネージャーじゃないですか」
「お前のマネージャーではあるが専門ではないな」
「そういうこと聞きたいんじゃないのよ⁉」
何食わぬ顔で返せば、思わぬカウンターを喰らった聖羅が涙目になる。
「ソウタくんじゃなきゃ駄目なの! 私のことを一番知ってるのは、ソウタくんでしょ」
「―――――」
その言葉に、颯太は答えられない。だって、颯太は聖羅のことをまだまだ知らないから。
それでも、聖羅は颯太の部活の相棒なのだ。彼女があまり人を頼らない性格なくらいは知っている。だから、聖羅は唯一頼れる相手として颯太を選んだのだろう。
はぁ、と颯太は深く溜め息を吐くと、
「……条件がある」
「何ですか?」
渋々、といった表情で声を低くすれば、聖羅はそれを飲み込むべく意識を傾けた。
「スパイク選び以外の買い物をしようとしたら、俺はその時点で帰る」
それは恋人がいる者としての最低条件だろう。他の女の子と楽しく遊ぶのは、颯太も気が引けるしそれを許容したくもなかった。
「分かりました。ソウタくんの心情も理解できるので」
颯太の胸中を見透かしたように、聖羅はこくりと頷く。
「それと、俺を揶揄いだしたら帰るからな」
「それはちょっと、了承しかねますね。つい、揶揄ってしまうかも」
「それを抑えろと言ってるんだ。それが出来なきゃこの話はナシだ」
「…………」
こちらの方が断然楽なはずなのに、先程の提案よりも長考する聖羅。
「――分かりました。私がソウタくんで遊び始めたら、すぐ帰っていいですよ」
数十秒の沈黙を得て、聖羅は颯太の差し出した条件を呑んだ。
これで、わが身の保身はできたはずだ。アリシアにも、後で連絡しておけば問題はないはずだ。
「すぅ」
大きく、息を吸って、深く息を吐く。
それから正面に向き直れば、颯太は黒瞳に不気味に笑う少女を写して――
「よし、なら行くか」
――怪しげな買い物に赴くのだった。
一歩、歩き出そうとして、颯太はその足を止めた。
不思議そうに首を傾げる聖羅に、颯太はスマンと手を顔の前に置くと、
「一言、連絡だけはさせてくれ」
とりあえず、これだけは事前にアリシアに報せておきたかった。
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「はい。分かりました。えぇ。ソウタさんもお気をつけて」
電話越しに一礼すると、通話がぶつりと切れた。
「ありがとうございました。みつ姉さん」
渡されたスマホを持ち主に返せば、その女性――みつ姉は全然と笑いながら受け取った。
「それで、ソウちゃんからの連絡は何だったの?」
「ソウタさんも友達と買い物に行くから遅くなるとのことでした」
「あらあら律儀ねぇ。わざわざそんなこと報告するなんて」
困った風に吐息するみつ姉に、アリシアも同感だとふふ、と笑った。
「私の事を心配してくれたんだと思いますよ。ソウタさん、私が一人だと寂しがるんじゃないかっていつも気を使っているので」
やや幼子に思われてる気がしなくもないが、それでも自分の事を案じてくれているのは嬉しかった。だから、たまには彼にも自分のことなど気にせず羽を伸ばして欲しいものだ。
そんなアリシアの言葉に、みつ姉は微笑みながら言う。
「相変わらず、ソウちゃんとアーちゃんは仲睦まじくていいわね」
「みつ姉さんだってハルヒコさんと仲良いじゃないですか」
「ううん。私たちだって普通に喧嘩するわよ。本気で怒った時は数日くらい口きかないしね」
二人にも譲歩できないものはあるらしく、それがアリシアには意外だった。
「それに比べて二人は喧嘩しなさそうね」
とみつ姉に羨ましがられたので、アリシアはそれに反論した。
「いえ、私とソウタさんも喧嘩しますよ」
「嘘⁉ え、どんな喧嘩するの⁉」
なぜか食い気味に催促してくるみつ姉に、アリシアは顔を引きずらせながら、
「ええとですね。この間は、夕飯に出すおかずで揉めました。私はソウタさんの食べたいものでいいと言ってるのに、ソウタさんは私の食べたいものを作ると言ってきかなくて、結局、その日は互いの好きなものをおかずにしましたけど」
答えると、みつ姉は双眸を細めて肩に手を置いて、
「アーちゃん。それは惚気話っていうのよ。それ、お互いが好きな人に好きなものを食べさせたいだけだから。喧嘩じゃないわ」
「えええ⁉ 30分も口論したんですよ!」
「愛情もそこまで行くと人をアホにするのね……」
笑みを引きずらせるみつ姉にアリシアは不服だと訴えるも、頭を撫でられて窘められてしまう。
「はぁ。本当に、二人が羨ましいわ。そんなに仲良くて。色々順調みたいだし」
「それは、まぁ……はい」
「あらあら、なにその恥じらう姿⁉ さては進展あったのね⁉ もっと詳しく聞かせて頂戴⁉」
「ええ……うぅ、凄く恥ずかしいなぁ」
興奮スイッチが入ったみつ姉の圧には逆らえず、アリシアは頬を赤らめがらこれまでのソウタとの思い出を明かしていった。
デパートに木霊する姉と少女の恋バナは、永遠とも思えるほど続いたのだった――。
―― Fin ――
原稿進める時にやる気が引く時はアニソン聞きながら執筆してます。




