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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
86/234

第81話 『 女王様の詰問 』

とうとう聖羅に恋人がいることがバレた颯太。さぁどうなる⁉

【 side颯太 】  


―― 14 ――


「ソウタくん。ちょっと聞きたいこと……うんん、確認したいことがあるんだけど、いいかな?」

「なんだよ改まって」


 中間考査も終わり、いつも通りの日常が戻りつつある放課後。颯太は部活に向かう途中で聖羅に呼び止められた。

 いつになく真剣……というより剣幕を孕む彼女の様子に、颯太は眉根を寄せた。


「この前ね、三崎さんから聞いたの」

「何を」

「ソウタくん、カノジョがいるのよね」


 随分と畏まった態度で何を言われるのかと若干緊張していた分拍子抜けしたが、颯太は肯定と頷く。


「あぁ。いるよ」

「そ、そうなのね。うん……そう、居たのね……カノジョ」


 淡泊にそう答えれば、聖羅はゾンビのように体を揺らしていた。


「それが何か問題あるか? 恋人が居るからといって、部活に支障がある訳でもないし」

「そそうよね。何も問題ないわよね。ただ、ごめんなさい。貴方にカノジョがいるという事実がなかなか受け入れられなくて」

「あん? もしかして俺、お前に喧嘩売られてる?」


 迂遠な言い回しで『お前に恋人いなさそう』と嘲笑された気がして、颯太は頬を引きずらせた。

 そんな颯太に聖羅は慌てて両手を振ると、


「誤解よ! 確かにソウタくんは不愛想だし女心とか相手の気持ちとか私の想いを全く気付かない鈍感野郎だけど、そんな人にも恋人ができるんだと驚いてるだけだから!」

「いや明らかに喧嘩売ってきてるよな⁉ 揶揄うどころかナイフで突き刺してるぞお前!」


 饒舌に颯太の悪い所を列挙されて、不覚にも心に傷を負わされた。

 よほど自分に恋人がいる事実に困惑している聖羅に、颯太は大仰に吐息すれば、


「あのさ、なんで神払はそんなに慌ててる訳? 別に、俺に恋人が居た所で、今更俺とお前の関係が変らないだろ」

「それは、どういう……」


 怪訝な顔をする聖羅に、颯太は断言した。


「俺とお前は、友達で、一緒に目標に向かって進む相棒(パートナー)だ。だろ?」

「――――」


 聖羅は颯太の数少ない友達であり、部活では互いに本音をさらけ出しあった仲だ。これを〝相棒〟(パートナー)と言わずしてなんと呼ぶ。

 颯太の言葉に、しかし聖羅は口を開くことはなかった。

 俯いたままの聖羅に、颯太は流石に何か失言でもしたかと不安を覚え始めた。


「神払?」


 この沈黙が妙に居心地が悪くて、颯太は彼女の顔色を窺う。

 覗き込むように、一歩足を踏み入れた瞬間だった。


「えぇ。そうですね! 私たちは、友であり相棒(パートナー)ですよね!」


 パッ、と顔を上げた聖羅の顔は、先程の慌てようが演技だったかのように、いつもの何か企んでいるような笑みを浮かべて答えた。


「……あ、あぁ。そうだよな」


 その笑みに胸がざわつくも、颯太は無理矢理に押し殺した。


「ごめんなさい。取り乱して」

「いや、気にしてないからいいよ。まぁ、普段の神払とは違う一面が見れたから新鮮だったけど」

「そうね。ソウタくんに恋人がいるという事実は、私が生きた人生の中で1番か2番目くらいの衝撃だったわ」

「お前の人生どんだけ平坦だったんだよ。つーか冗談だろ」

「…………」

「いや冗談だよな?」

「当たり前じゃないですか」

「じゃあ間を空けんなよ⁉」


 不安を煽るように返答の時間をズラした聖羅に颯太は犬歯を見せてツッコんだ。


「それでは改めて、これからも私たちは同じ目標を掲げる相棒(パートナー)である。それは何も変わらない、でいいのよね」

「あぁ。俺はお前を絶対に選手として活躍させる。約束だ」

「――ふふ」

「……何笑ってんだよ」


 笑う瞬間などなかったはずだが、微笑みを浮かべる聖羅に眉間に皺を寄せた。

 そんな彼女は颯太の怪訝な眼差しに気にした様子もなく、


「いえ、そう力強く断言してもらえて、嬉しかっただけですよ」

「ならいいけど……」


 颯太は渋々と聖羅の言葉に納得した。


「で、神払の聞きたかった事ってこれで終わりか」

「はい。私の気も済んだことですし、部活に行きましょうか」

「だな……ヤベ、あと五分で始まる。急ぐぞ、神払」

「そうですね、急ぎましょうか。ソウタくん」


 腕時計を見れば、もうすぐ部活が始まる時間が迫っていた。慌てて走りだす颯太に、聖羅はにこやかな笑みを浮かべてその背を追う。


「あ、そうだ。ソウタくん。ソウタくんのカノジョさんは可愛いですか?」

「あ? 当たり前だろうが。世界一……いや宇宙一可愛いよ」

「臆せずに言うなんてスゴい。よほど、その人に想いを寄せているんですね」

「当然だろ。あの子はなんたって――俺の〝天使〟だからな」

「……天使」

「なんだよ? 何か文句あるか?」

「いえ。なるほど、ソウタくんの恋人は〝天使〟なんですか」


 にやにやと意地悪な笑みを浮かべる聖羅に、颯太はバツが悪い顔をした。


「言うじゃなかった。これからお前にこの事で絶対揶揄われる」

「あらら、私が人の恋人で出汁を取るような女の子に見えますか?」

「見える。めっちゃ見える」

「酷いなぁ。それじゃあ、私が悪魔みたいじゃないですか」

「俺にとっては半分悪魔だぞ、お前」

「あーあ、傷ついた。今日はもう練習したくないな」

「子どもみたいなこと言い出すなよ。分かったよ。あとで飲み物奢ってやる」

「ふふ、相変わらずちょろいですねー。ソウタくんは」

「やっぱ悪魔じゃねえか……」


 談話をしながら小走りで廊下を通り抜け、玄関の靴箱で互いの靴を履く。よっ、とリュックを背負い直して、颯太は聖羅に振り返った。


「じゃあ、また部活で」

「えぇ。今日も宜しくお願いしますね。マネージャーさん」

「はいよ」


 男子更衣室と女子更衣室はそれぞれ距離が離れている為、ここで二人は分かれることになる。

 互いの更衣室に向かう直前にそんな会話を交わして、颯太は聖羅に短く手を振ってから走りだした。


「――証明してあげる。人と天使に、絆なんかないことを」


 ぽつりと、少女が呟いた。

 しかしそれは、夕日に向かいながら走る少年の耳朶に届くことはなかった――。


 ―― Fin ――


気付いたら80話超えてたー⁉ 


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