第80話 『 テスト、頑張ってくださいね 』
登場人物紹介~
宮地颯太 (みやじそうた) 本作主人公。今回は皆の先生になります。苦手科目は科学。
アリシア 本作メインヒロイン。まだまだ地球の文化を勉強中の元・天使様。勉強す姿もふつくしい。
三崎朋絵 (みさきともえ) 颯太が抱える問題児の一人。集中できないのは颯太と距離が近づいてしまうため。苦手科目は、数学、英語、化学 得意科目は意外にも国語。
倉科陸人 (くらしなりくと) 颯太が抱える問題児の一人。苦手科目は多いが、飛びぬけて英語が苦手。
神払聖羅 (かんばらせいら) 陸上部期待の新人で颯太がマネージャーを務める少女。苦手科目は国語。
優良三津奈 (ゆらみつな) 颯太のお姉ちゃん。学生時代は生徒会を務めるほどの秀才でした。弟好きは変わっていない模様。
【 side颯太 】
―― 13 ――
――日曜日。明日から始まる中間考査に迎え、三人は午後からテスト勉強する事となった。場所は颯太の都合で宮地家となった。
なのだが、
「うわぁぁん‼ もう何も分かんないよ~‼」
子どものように泣き叫びながら、朋絵はテーブルに突っ伏していた。
「あああ! もうどこが分かんないだよ!」
「ここです先生ぃ~!」
「ここは公式を当てはめて解くだけの応用問題だろうが!」
「宮地先生! 何度和訳しても僕の地球が絶滅してしまいます!」
「何をどう訳したら地球が絶滅するんだよ! これは意味が違う! 文法も滅茶苦茶だ!」
「そもそも日本人なのにどうして英語が出来なきゃならないんだ!」
「そのありきたりな現実逃避やめろ! 勉強しなきゃいけないことに変わりはないんだから、さっさとやれ!」
「颯太先生の鬼ーッ!」
「この問題児どもが……ッ」
問題児二人をどうにか捌きながら、颯太はぜぇぜぇ、と額に汗を垂らした。
「全部授業でやってた所だろうが! なんで出来ない⁉」
「「寝てたから」」
「真面目に受けろや!」
シンクロする二人に吠えて、颯太はついに眩暈を覚え始める。
どっと襲い掛かる疲労に項垂れていると、隣からくいくい、と袖で引っ張られた。
「ソウタさん。ここが分らないんですが……」
「ん、あぁ。これはこうやって、こうすれば解けるから」
「ふむふむ、なるほど! 分かりました! ありがとうございます、ソウタさん」
「どういたしまして」
アリシアの疑問に、颯太は普通に教えた。いつものように、自然と。
しかし、その対応に前二人はえらく不満なようで、
「なんでアーちゃんの時だけそんな優しい教え方なのさ!」
「そーだそーだ! 宮地先生は生徒によって態度変えるんですか⁉ それって不公平じゃないですか⁉」
とテーブルを叩きながら猛抗議してくる朋絵と陸人に、颯太は顔を引き攣らせた。
「いいか、俺はアリシアに普通に教えてるだけだ」
「いや普通じゃないから⁉ アーちゃんにだけ優しいオーラ全開だから⁉」
「俺たちにも優しく教えろー!」
「お前たちは優しく教えた分だけ怠けるから厳しくしてるんだろうが! そもそも、アリシアに厳しくしても俺の心臓が痛むだけだからやらねぇし!」
アリシアの悲しむ顔など見たくないし、それ以前に、アリシアは教えればしっかり自分の中で反芻して答えを導きだす。教え甲斐も二人と雲泥の差がある。
不服を表明する二人に颯太も正論で返す口論を続けていると、アリシアがさらりと白銀の髪を揺らして言った。
「私はソウタさんにもう少し厳しく教えてもらっても構いませんよ?」
「ほら、アーちゃんだってこう言ってるんだから、ソウタ先生ももう少し厳しくしていいんじゃない」
「絶対やだ。こんな可愛くて素直な子に厳しく教えるとか良心が苦しむ。やってと言われても心が拒絶する」
「結局颯太の私情じゃん!」
力強い眼差しを見せながら首を横に振れば、朋絵が胸に感情を堪えきれないまま爆発させた。
――この二人、完全に集中力切れてんな。
時計の針をちらりと見れば、短い秒針が一つ進んでいた。午前中は部活ともあって、普段から集中力の低い二人からすれば午後にテスト勉強はかなり苦行かもしれない。そういう理屈でいえば、午前から家事をこなしているのに、午後もなんなく勉強に集中できているアリシアは強靭なのかもしれない。
「時間も丁度良い頃ですし、一度休憩しましょうか」
と二人の様子をみてか、それとも単なる彼女が自身の勉強に一息吐いたからなのか、絶妙なタイミングでアリシアはそう提案した。
アリシアの提案に、勉強疲れで灰になりかけていた二人は一斉に息を吹き返した。
「賛成!」
「勉強は一時休戦といこうぜ、な! 颯太!」
「アリシアが言うから休憩するけど、お前らもう勉強する気ないだろ」
そう指摘すればあからさまに視線を逸らす二人に、颯太は何度目か分からない溜息を溢した。
「ソウタさんも私たちに沢山教えてお疲れでしょうし、休憩しましょう」
「ん。俺も一息吐きたいと思ってから、少し休むよ」
「では、お茶を持ってきますね。そうだ、買っておいたお菓子も用意しないと」
二人から来ることを前日に報せていたので、アリシアは来客に備えて色々と準備していた。そんな用意しなくてもいいよ、とはアリシアの上機嫌な顔を見れば言えなかった。二人がテスト勉強でも家に来るということは、アリシアにとってはこの上なく嬉しいイベントなのだ。実際、二人を連れて玄関を開けた時はそわそわと玄関前で待っていたくらいだ。
「トモエさん、リクトさん。お飲み物は何が飲みたいかリクエストはありますか?」
「そーだなぁ、何があるの?」
「緑茶に炭酸系……オレンジジュースとリンゴジュース、レモンティーとアップルティーがありますよ」
「種類豊富だね⁉ じゃあ、私はアップティーで!」
「俺は炭酸系が飲みたいなぁ」
「レモンでも口に突っ込んでやろうか? 頭が冴えるぞ」
「もうっ、ソウタさん。お友達をイジメちゃダメですよ」
「ごめんなさい」
つい思ったことが漏れて、それをアリシアに窘められてしまう。アリシアに叱られる様子を朋絵は笑いを堪えながら、陸人は「颯太嫁に怒られてやがるw」とお構いなしに笑っていた。
嫁、と言われ少し頬を赤らめたアリシアはそれを隠すように咳払いして、
「でしたら、リクトさんはコーラでよろしいですか?」
「オッケー! むしろ最高!」
「ふふ。分かりました。ではお持ちしますので、少しだけ待っていてください」
「「はーい」」
アリシアが微笑みながら立ち上がれば、颯太も同じ瞬間に椅子を引いた。
「俺も手伝うよ、アリシア」
「そんな。ソウタさんも待っていてください。ソウタは特にお疲れでしょうから」
「心配してくれてありがと。でも平気だから。それに、一人じゃ飲み物とお菓子用意するの大変でしょ」
「それはそうですが……」
「なら一緒にやろうか。今日はアリシアと一緒にいられる時間が減ってるから、少しでも一緒にいたいし」
「……んっ。胸に矢が刺さりました」
突然頬を朱に染めて心臓を抑えるアリシア。颯太としてはただ本心を伝えたつもりなのだが、それがアリシアの乙女心にクリティカルヒットようだ。
「おーい。夫婦漫才は気が済んだかー?」
「イチャイチャするのは二人だけの時にしてくださーい。コーヒーが飲みたくなってしまいまーす」
糖分たっぷりの一幕に、朋絵と陸人は耐えられなくなって声を上げた。
二人のやっかみを浴びながら、颯太は後頭部を掻くと、
「はいはい。飲み物とお菓子持ってくるから、そこで大人しくしてろ……覗きこんでくるなよ?」
「ちっ、バレたか」
「二人きりになった颯太がアーちゃんに何かやらないか興味あったのに」
邪な妄想を繰り広げる二人にため息を溢しながら、颯太は歩き始めた。
「本当に、楽しい方たちですね、トモエさんとリクトさんは」
二人から十分に距離を離れたところで、アリシアが颯太の顔を覗き込みながらそう言った。
「まさか。楽しい、じゃなくて騒がしいの間違いだよ」
「でも、ソウタさんも二人と一緒に居る時はにこにこしてますよ」
「変な事言うのはこの口かー」
「ほんほのこといっはられれすよ~!」
くすくす、といじらしく笑うアリシアに、颯太はむ、と頬を膨らませた。そして、両手を伸ばすと彼女の柔らかい頬を抓ると、呂律が回らない愛らしい抗議を受けた。
あうあう、と暫く彼女のほっぺの柔らかさを堪能していると、背中越しに不穏な視線を察知して、
「「じぃ~~~~~~~」」
振り返ってみれば、覗き込むなと忠告したのに覗き込んでいた二人と視線が合う。
颯太の視線にお構いなく、二人はにやにやと悪い笑みを浮かべて、
「いつも家ではこんな事してるんだ~」
「羨ましい限りですな~朋絵氏」
「同感でござるよ陸人氏」
二人の揶揄いに、アリシアは見られていた事への羞恥心で顔を真っ赤にして。
颯太はそんな二人に爽やかに言った。
「次覗き見たらもう勉強教えない」
慌てて敬礼しながら去っていく二人を、颯太はアリシアの頬を抓みながら見届けるのだった。
*************
鐘の音とともに、試験監督の先生が手を叩く。
「はい、終了ー。それじゃあ後ろからテスト回して集めてこーい」
教室に回収と声が響けば、生徒たちは平然とする者や顔を蒼くする者、ひそひそ声で問題の難しさを共有している者たちに別れた。
「やぁっと二日目終わったー!」
「朋絵さんや。あと二日残ってることを忘れてはいないかね」
「思い出させるなー!」
陸人が現実を突きつければ、朋絵はその背中を容赦なく叩く。何やってるんだと苦笑しながら、颯太はいそいそと身支度を整えていた。
――よし、帰るか。
時間は十三時手前。今から小走りで学校を出れば、一本早い電車に乗れる。これに乗り遅れれば、次は40分後の電車だ。それは避けたかった。
「じゃあな、朋絵、陸人」
席を立ちあがって、颯太は談笑する二人に手を振る。
「帰り支度早! もうちょっとゆっくりすればいいのに」
「電車に乗り遅れたくないからな」
「どうせその理由もアーちゃんと一緒に居たいからでしょ」
「それ以外の理由なんてないだろ」
「またのけました。颯太くんは俺たちとの友情よりアリシアちゃんを優先するんですね!」
「お前たちの友情も大事だけど、アリシアの方が何百倍も大事だからな」
「酷い⁉ でも友情を抱いると知って嬉しい自分がいる⁉」
当然、朋絵たちも大切な友達であることには変わりない。それを告げれば、二人は何故かそわそわし始めた。
二人の態度を怪訝に思いながらも、颯太はリュックを背負い直して、
「んじゃ、お先。明日もテスト頑張れよ」
「颯太も受けるじゃん!」
「受けるけど俺は普通に赤点なんて取らないからな」
「不登校だったくせに優等生がぁ~~ッ⁉」
吠える朋絵に苦笑を浮かべ、颯太は今度こそ教室を出た。
「はぁ、あたしも颯太みたいに頭良かったらなー」
「諦めようぜ、朋絵。俺たちは一生お馬鹿なままだ」
「あたしは陸人よりは成績良いもん!」
「ぐはっ! 突然見限られた⁉」
同類だと言われた気がして、その事に遺憾だと朋絵は肩に置かれた陸人の手を振りほどいた。
「三崎さん、ちょっといいですか」
陸人と朋絵の下らない言い合いに割って入ってきたのは、クラスメイトであり同じ部活仲間でもある、神払聖羅だった。
二人にとっては珍しい質問者に、陸人と朋絵は揃って首を傾げる。
「どうしたの、神払さん」
「少し、聞きたいことがあって」
「あたしに? 分からない問題があっても答えられないよ?」
「そんな自信満々に言われるとこちらも困ってしまうんですけど……勉強のことじゃないです」
ならば何事かと、朋絵は一層疑念が強まった。
眉尻を下げる朋絵に、聖羅は視線を左下へ下げて、とある席を見つめながら問いかけた。
「ソウタくんの事なんですが、昨日も今日も帰りが早いですよね」
「うん。それが?」
「深い意味はないんですが、どうしてこんなに早く帰るのかなー、と少し、ほんの少し気になりまして……」
あくまで興味本位なんですよー、と強く協調する聖羅に懐疑的な視線を送るも、本人は気付いていないのか、或は気付いて尚気付かぬフリをしているのか分からない不気味な笑みを貼っていた。
おそらく、聖羅としてはこの部活もない期間を利用して颯太にちょっかいを掛けたいのだろう。最近は二人も仲が良好なようで、その事に朋絵は僅かに嫉妬心を抱いていた。
「あー。そっか。神払さんは知らないんだっけ」
「何がですか?」
「あーでもこれ言ってもいいのかな……」
「知っているのなら、是非教えて欲しいのですが」
朋絵は神払聖羅という少女に、あまり好印象を抱いていない。彼女が転校しておよそ一カ月が経過して、部活でもそれなりに会話はするものの、その評価は以前変わらなかった。
――別に颯太も隠してる訳じゃないし。言っても構わないよね。
朋絵の言葉の先を促す聖羅に、朋絵は数秒間の逡巡をしてから告げた。
「颯太。彼女がいるんだ。その子に早く会いたくて、だからさっさと帰ってるんだよ」
それを口にした時、朋絵のみならず、隣にいた陸人さえも、背筋を凍らせた。
「「――――ッ!」」
眼前に立つ少女。その笑みが消えて、何か、胸裏にただならぬ感情を渦巻かせているような、そんなゾッとする顔。
「――へぇ」
彼女の唇から漏れた吐息は、熱を帯びていなくて。
まるで、凍える吹雪のようだった――。
―― Fin ――
80話目にしてランキングタグの存在を知ったぞー! 皆様、応援のほどお願いします!((土下座
作者のポイントくれくれ圧はさておき、久しぶりのあとがきだー!
というわけで今話、お楽しみいただけましたでしょうか。
前半はいつものメンバーでテスト勉強のお話。颯太はテスト前になるといつもこんな苦労をしている所と、アリシアと自分たちの勉強を教える態度の違いに憤慨する二人。そして、朋絵と陸人の前でも颯太とアリシアは普通にイチャイチャしていましたね。(いいなぁ。羨ましいなぁ)
そして試験が始まり、二日目の放課後。ついに! 聖羅は颯太に恋人がいることを知ってしまいます!
物語りとしても、そろそろ聖羅に気付かれそうだな、と思った読者様は多くいるのではないでしょうか。「え!? この回で⁉」と驚いてくれたら作者は満足です。
果たして、今後聖羅はどう動くのか、彼女の動向に注目しがら、今後も天メソをお楽しみください!
『 紫惑、白欲 』が交わるのもそろそろでございます。
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ここからは作者の個人的感想になります。ご興味があれば、引き続き御覧ください。
常日頃から天罰のメソッドをご興味、そして面白いと感じて読み続けてくれる読者の皆様!!
おかげ様で天メソは総合PV2000を突破しました! そして、この物語をブックマークしてくれる方も少しずつ、でも確実に増えています!
連載が始まったのが11月20日なので、もうすぐ2カ月が過ぎようとしてますね。
これだけの期間にこれ程の評価を頂けたのは、ひとえに読者様が興味を持ち、そしてこの子たちの物語を見続けてくれる結果でございます。
本当に、作者として皆様に感謝御礼申し上げます。
いつか、この作品を応援し続けて良かったと思われるような、そんな素晴らしい結果と結末を残せるよう、これからも作者は精進していきます。
改めて、読者の皆様、天罰のメソッドを常日頃からご愛読くださりありがとうございます!
・・・いやほんと、なんで毎日投稿できてるのか不思議なくらいなんですけど、いやー、でもやっぱ読者の期待裏切れないスッワー。というか毎日投稿切れたら見られなくなるだろ⁉ という不安の方が強い為死ぬ気で毎日投稿してます。
さて、長い話もここまでにして、天罰のメソッド! これからも、応援、そしてご愛読のほどお願いしマッスル!!
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