第70話 『 互い。寄り添い合って 』
作者も気づかぬうちに70話目です! いやホント、更新頻度を頑張って上げてますが、それでもこうやって続くのは嬉しい限りですなぁ。
【 side颯太 】
―― 3 ――
ガタン、ゴトンと、車輪がレールを走る音に身を委ねながら、揺れる電車で二人は肩をくっつけていた。
「ソウタさん」
「ん、なに?」
ボー、としていると、アリシアが名前を呼んだ。静かな声音の方に顔を振り向かせれば、アリシアは小さく頭を下げた。
「先程はワガママを言ってごめんなさい」
「あぁ、あれか」
先程のワガママ、とはおそらくお迎えの件だろう。結局、なんやかんやでアリシアが迎えに来ることを了承してしまったが、その事にアリシアはどうやら反省しているようだった。
「まぁ、承諾してしまったものは仕方ないし、アリシアは来たいんでしょ?」
そう問いかければ、アリシアはこくりと小さく肯定した。それから、「でも」と継ぐと、
「あの時は勢いでお迎えに行く、って言ってしまいましたけど、ホントはやっぱり来ないほうがいいですよね」
「まぁ、頻繁に来るのはやっぱり心配になるから避けて欲しいけど。たまにならいいよ。その時は一つ連絡してくれれば、俺もアリシアが迎えに来るんだって分かるし」
「いいんですか?」
「むしろ、俺としてはアリシアと居られる時間が増えて嬉しいからね」
部活でアリシアと一緒にいられる時間が減った分、その足りない欲求を満たせるのならその提案は颯太にとっても満更ではなかった。けれど、やはりアリシアを一人で暗がりに外出させる不安は残る。
「前にも言ったけどさ、俺は、アリシアのやりたい事を応援するって決めてるから。それが俺のやりたいことでもあるしね。アリシアが嫌じゃないことなら、俺は別に止めない」
「ソウタさん」
「だから、不安はあるけど信用してる。それに、アリシアが痴漢にあったら、そいつを地獄に叩き落すしね」
「あはは。本当にやりかねない目が怖いです」
天使の無垢な身体を悪辣な感情で穢そうとするのだ、そんな輩、颯太が許さない。
「アリシアは俺の大切な恋人だから、守るのは当然の義務だよ」
「なら、ソウタさんにもしもの時があれば、私がソウタさんをお守りしますね」
「ヤバイ惚れそう。とっくに惚れてるけども」
アリシアの意外にも男らしい言動に、颯太は不覚にもときめいてしまった。胸が弾むのを抑え込みながら、颯太はアリシアの手を握り直した。
「俺は、何があってもこの手を離さないし、守りぬくから、だからずっと笑顔でいてね」
「なら私も、何があってもこの手を離しませんし、隣にいますから、ずっと笑っていてくださいね」
握り直した手に、それと同等の熱を帯びて握り返される。
互いに、傍にいる約束を誓う。その誓いに、笑みが零れた。
「アリシアはどんどん可愛くなっていくし、頼りになっていくね」
「いつまでも、ソウタさんに頼ってばかりの私じゃいられませんからね」
そのままでいいのに、と言えば、アリシアはゆるゆると首を振った。
「私は貴方の恋人として、恥じない自分でありたいんです。貴方の隣に、いつも胸を張っていられるよう、〝人〟として立っていたい」
「――そっか。なら、俺もアリシアが自慢できるような、そんな男にならないとな」
「それじゃ、お互い、まだまだ、ということですね」
「だね。これから二人で一緒に成長していこうか」
少しずつ、ゆっくりでいい。互いが互いに、隣り合う事に誇りを抱けるよう、成長していこう。
繋ぐ手の温もりを、二人はいつまでも堪能し合っていた。
―― Fin ――




