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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
72/234

第68話 『 四つ星キラキラ 』

登場人物紹介~


宮地颯太 (みやじそうた) 本作主人公。肉まん派

アリシア 本作メインヒロイン。あんまん派

三崎朋絵 (みさきともえ) 颯太の同級生で親友。あんまん派

倉科陸人 (くらしなりくと) 颯太の同級生で親友。肉まん派

優良三津奈 (ゆらみつな) 颯太のお姉ちゃん。ピザまん歯

神払聖羅 (かんばらせいら) 美人転校生。肉まん派

【 side颯太 】


 ―― 1 ――


「くあぁ~‼ 今日も疲れたな~」


 目尻に涙を溜めながら、朋絵は唸り声を上げて背を伸ばす。


「それな~。ぶっちゃけ、シーズン中のメニューよりオフ中のメニューの方がキツいわ」

「お前は年中、弱音吐いてるだろうが」

「だって練習キツいんだもーん」

「もーん、じゃねぇよ。それに、今日のメニュー全然キツくないだろ。五千メートルの後に筋トレ、ストレッチだけだぞ」

「だけって……これだからストイック君は嫌だなぁ」

「変なあだ名付けんな」


 陸人と颯太。互いに肘を突き合っている光景に朋絵は苦笑した。


「それにしても颯太。だいぶマネージャー仕事が板に付いてきたんじゃない? 今日もさり気なく女子マネのサポートとしてたし」

「サポートというか、給水ボトルとかメディシンボール外に運んだだけだぞ」

「それが女子にとっては大助かりなんだよね。力ないから運ぶの一苦労だし、意外に重労働だから。それを颯太が率先してくれてやってくれるのありがたいんだ~」

「お役に立ててどうも。神払の練習にも必要だからついでだっただけだよ」

「うわ、さらっと言うのイケメン。また惚れそう」


 朋絵はお膳立てしてくれるが、同じ部の部員なら協力は必須だ。だから、特に感謝される言われはないのだが、こうも直球に褒められるとなんだかむず痒くなってしまう。

 ぽりぽりと頬を掻いていると、陸人が不服そうに叫んだ。


 「なんだそれ⁉ お前、アリシアちゃんと言う唯一無二のカノジョがいるのに、まだ女子人気を奪うつもりなのか⁉」

「そんなつもり微塵もねぇよ。世の中の適材適所に乗取ってるだけだ」

「その適材適所でモテてんだろうが!」


 血の涙を浮かべる陸人に呆れていると、朋絵が「でも」と陸人に同調してきた。


「実際、颯太女子から今凄く注目されてるよ。元々顔は良かったから颯太を狙ってる女子結構いたんだけど、ほら前の颯太って絡みづらかったじゃん」

「そうだな」

「そこ、同調すんな」


 朋絵の物言いにしれっと肯定する陸人の腿を蹴った。


「けどさ、学校戻って来てからの颯太ってさ、物腰相当柔らかくなったじゃん。自分から他の部員にアドバイスしたりてさ」

「分かる。こいつ、後輩には優しくしてるのに俺に凄く厳しい」

「それはあんたがサボろうとするからでしょ」

「うぐっ」


 朋絵に正論で返されて陸人は口を噤んだ。


「後輩の女子なんかは特に颯太と話せるのが嬉しいみたいでさ。わざわざ私に報告してくるの。「先輩! 今日宮地先輩とお話できました!」って」

「お前なんなの? 王子様なの」

「ただの陸部のマネージャーだ」


 白い目を向ける陸人に颯太は淡泊に返した。


「鈍感激ニブ野郎の颯太だって流石に気づいてるでしょ。最近、やたら女子に多く話掛けられるの」

「そうか? ……まぁ、言われてみれば確かに」


 朋絵に指摘されるも、思い当たる節がない颯太は首を捻った。確かに不登校前よりかは会話することが増えたかもしれないが、以前が会話することを遮断していたせいで普通という感覚が乏しいので判断材料が足りなかった。

 そんな颯太に、朋絵は深く溜め息を吐いて、


「ホント、颯太のそう言うところ、もう少し見直した方がいいよ」

「ぜ、善処するよ」


 友達からの助言だ。それを胸の棚に入れておくことにした。


「ともかく、今の颯太……ううん。ニュー颯太は女子にとって恋愛対象になってるの。陸部関係なしにね」

「なにそれ、ハーレム主人公かお前!」

「いや、普通の高校生だよ。……カノジョ持ちの」

「さらっと俺の心にメスを入れるんじゃねぇぇ!」


 確かに今のは他意に満ちた返しだった。

 嫉妬の憎悪を煮えたぎらせる陸人を朋絵は「どぉーどぉー」と宥めつつ、


「颯太くんや。自分の立場を弁えないと、いつか後悔するよ?」

「つってもなー。朋絵はそうやって言うけど、俺、告白とかされてないぞ? それで女子人気と言われても、実感ない」

「ほほぉ。まだ言いますかこのアーちゃん一途主人公は」

「お前らの中で俺を主人公にするの流行ってんの?」


 陸人といい朋絵といい、何故そこまで自分を主人公と揶揄するのか甚だ疑問だった。宮地颯太はどこにでもいる普通の高校生。どちらかと言えば、カノジョのアリシアの方が主人公ではないかと思ってしまうが。

 困惑する颯太に、朋絵は遠い目をして言った。


「なら何故、颯太に意中を抱きながらも告白しない女子どもが多いのかを教えてしんぜよう」

「――ごくり」


 カツ、カツ、と両靴の音を鳴らしながら足を開き、貫禄すら覚える腕組をしながら、朋絵は告げた。


「それは全員、私と同じだからだよ!」

「なるほど理解した。以後気を付けます!」


 朋絵の毅然とした顔で言われた答えに、颯太は即座に頭を下げた。

 朋絵と同じ。それは朋絵の告白を受けた颯太だからこそ瞬時に理解できた発言だ。朋絵は五年間、颯太に恋慕を抱きながらも勇気を出せず告白できずにいた。朋絵にとって颯太は憧れの存在でもあったからこそ、余計に踏み込むことが出来なかった。

 そして、先の女子たちはかつての朋絵と同じ境遇なようらしい。


「……高嶺の花かよ、お前」


 そう表現するしかない現状を、陸人がまるで雲の上の存在でも見るかのように視線を向けながら言った。


「私たちは友達だから言えるけど……颯太は全然そんなじゃないよね」

「確かにその通りなんだけど言われるとめちゃくちゃ腹立つな」


 朋絵が笑いを堪えながら言うものだから、颯太は頬を引き攣らせた。

 鬱憤を晴らすべく朋絵の頬を抓っていると、陸人が心底羨ましそうに言った。


「おまけに、学校一の美女とも仲良いとか……お前の人生羨まし過ぎるんですけど。何回リセマラすればお前みたいな薔薇色の人生送れんの?」

「ホントそれ! あたしも颯太みたいな人生がいい! 交換しよ!」

「できる訳ないだろ、それに、後悔したら最高に可愛いカノジョと一緒に暮らせなくなるから嫌だ」


 人生をリセマラする気も、誰かと交換する気も、今の颯太にはなかった。昔の自分ならば、きっと迷いなく交換しようと言えたはずだ。あの悲惨な過去の全てと別れられるならば、その程度は容易い。

 そんな人生を変えたのは、間違いなくたった一人の天使だ。白銀の髪を靡かせる天使との出会いが、颯太の人生を変えた。

 脳裏にすぐ思い浮かぶ、笑ってこちらを振り向く少女に、颯太はふと笑みが込み上がった。そんな颯太に、朋絵は頬を膨らませた。


「出た。隙あらば惚気る颯太。今、絶対アーちゃんのこと考えたでしょ」

「当たり前だろ。俺の思考は、一にアリシア。二にアリシア。三四にアリシアだ」

「なんでそれでテスト高得点なのさ!」


 文句を垂れる朋絵を、颯太は宥めながら歩いてく。


「はぁー。やってられないわー。今日はもうあんまん食べて帰ろう!」

「お、いいね。俺肉まーん」

「俺早く帰りたいんだけど……」

「颯太は日頃の惚気と女子人気をかっさらたバツとして今日は付き合ってもらいまーす」

「意義なーし!」


 拒否権も却下されてしまい、颯太はお腹を空かせた友人二人に呆れながら付いて行く。


「陸人はともかく、朋絵は太っても知らないからな」

「大丈夫だって、これくらいじゃ太んないから。運動部マネージャーの運動量舐めないでよね」

「俺もマネージャーだっての」


 それから最寄りコンビニまで、三人は談笑を続けた。

 空はすっかり暗く、星々たちが輝き始めている。その中で最も強く輝く星、一番星は三人の背を見届けて――


「あれ、アリシア?」


 と最寄りのコンビニに赴く直前、颯太は数十メートル先の道路で見慣れた人影を捉えた。白のブラウスにブラウンのスカート。極めつけに白銀の髪が揺れれば、この町で白髪の少女はただ一人しかいない。


「え、アーちゃん?」 


 颯太の言葉に、朋絵も目を瞬かせた。


「悪い、ちょっと行ってくる」

「う、うん」「おう」


 二人に申し訳なさそうに頭を下げて、颯太は小走りで少女の方へ向かった。

 徐々に、鮮明にその姿を捉えていくと、やっぱりアリシアだった。


「アリシア!」


 大声で名前を呼ぶと、少女は自分が呼ばれたのだと気付いてびくりと肩を振るわせた。

 そして、近づいて来る颯太を見て、少女――アリシアは破顔した。


「あ、ソウタさん! 良かった、行き違いにならなくて」


 そう安堵するアリシアに、颯太は肩で息をしながら問いかけた。


「どうしたのさ、急に迎えに来るなんて」

「あはは。早くソウタさんに会いたくて、つい来てしまいました」


 思わず抱きしめたくなったが、颯太はその感情をぐっと堪えるとアリシアの肩を掴んだ。


「その気持ちは嬉しいけど。でも一人で夜の町を歩くのは危険だって言ったでしょ。アリシアは可愛いんだから、どんな不審者が襲って来るか分からないんだ」

「可愛い」

「違う。いまそこ拾わないで」


 無意識に漏れた本音にアリシアは頬を朱に染めるが、そこを拾うべき時間ではなかったはずだ。

 心配の目を向ける颯太に、アリシアは微笑を浮かべると、


「大丈夫ですよ、ソウタさん。何も何の防犯もなしに出歩くなんてことしませんから」


 そう言って、アリシアはピンクのショルダーバッグをごそごそと手探り始める。眉根を寄せていると、アリシアは「あった、あった」と二回呟いて、


「てれれってってれー! 防犯ブザー! です!」


 青い猫型がロボット風に言って、アリシアは自慢げにそれを見せてきた。


「みつ姉さんにも注意されましたからね。この町にも変態はいる。だから、いざって時の為にこれを持ってれば安心だって。これを鳴らせば、町の人たちはすぐに駆けつけてくれるからって。特に私の場合はと言われたのがよく分かりませんでしたけど」

「いや、俺は凄くよく分かるよ」


 アリシアは町の人気者でそれなりに顔も広がっている。特に老人はアリシアを孫の溺愛している為、アリシアの顔をよく覚えている。アリシアが防犯ブザーを鳴らしたとあれば、ヒーローの如く勢いで駆けつけることだろう。確かに、これを持っていれば鬼に金棒、いや、天使に金棒だ。


「やっぱり、迷惑でしたか?」

「んぐっ」


 子犬のように鳴くアリシアに、颯太は心臓が悪くなった。

 颯太は奥歯を噛み締めながら、アリシアに言った。


「迷惑じゃないよ。でも、やっぱり少し不安になるから今度からは事前に教えて欲しいかな。そうすれば、俺もダッシュで迎えに行けるから」

「それではお迎えに行く意味がありません」


 全くもってその通りだ。迎えに来てもらう立場なのに逆に迎えてどうする。

 どうすればいい感じに説得できるか苦悩していると、背後から失笑が聞こえてきた。


「まったくもぉ。颯太は過保護だな」

「過保護で結構。愛するカノジョの安全が一番だろうが」


 その声音に、颯太は棘のある声で応じる。

 振り返れば、颯太に追いついた朋絵と陸人が互いに呆れてた顔を作っていた。


「トモエさん! リクトさん!」


 二人を捉えたアリシアは大輪の如く笑みを咲かせた。そんな笑みを浮かべるアリシアに、朋絵は上機嫌に寄ると、


「ひっさしぶりー、アーちゃん! はぁ。この無垢な笑顔だけで今日の疲れが吹っ飛ぶ。明日もガンバリシアできそう」

「おい、さらりと上手いこと言うなよ」


 アリシアを愛でる朋絵に颯太はジト目で返すも、その造語は中々に悪くない響きだと内心で感嘆してしまった。……明日から使ってみよう。

 アリシアを甥っ子のように愛でる朋絵に牙を鳴らしていると、そんな颯太を見かねて朋絵が肩を落とした。


「颯太が心配するのも分かるけど、過保護すぎなんだって。アーちゃんのこと信頼してるなら、別に迎えくらい着てもらえばいいじゃん」

「で、でもな……」

「トモエさんの言う通りです! 私だって成長してるんですからね!」

「アリシア⁉」


 朋絵の言い分にアリシアが両腕を上げて猛抗議してきた。それに狼狽する颯太の隣から「ぷ」と笑い声が聞こえて、脇腹に肘を入れた。「うっ」と笑い声が悶えに代わるのを無視しながら、颯太は眉間に皺を寄せて、


「なら、せめて週に一回だけなら……」

「むうぅ」

「じと~」


 女子二人からの視線の圧に、颯太は声にならない唸り声を上げた。


「週に、二回。これでどうでしょうか、アリシアさん」

「だって、どうする? アーちゃん」

「むぅ……」


 これでも苦渋の決断だった。それに、これ以上譲歩すると毎日迎えに行くと言い出しそうで怖かった。

 真剣に悩んでいる様子のアリシアは、やがて納得したように吐息すると、


「分かりました。それで許しましょう」

「ありがとうございます」


 天使様は要求を呑んでくれたようで、颯太は安堵か分からないが胸を撫で下ろした。


「良かったね、アーちゃん」

「はい。トモエさんがいてくれたおかげです」


 頭を撫でる朋絵にアリシアは感謝を伝えた。アリシアの言葉通り、朋絵が説得に加担しなければアリシアはすんなりと引き下がっていただろう。颯太に強く意見が出来る友達を持ったアリシアに、颯太は内心で戦慄を覚えた。


 ――みつ姉に朋絵、アリシア側の女子陣営強くないか⁉


 みつ姉には基本頭が上がらないし、朋絵には集団の圧で屈服することが屡々ある。天使の陣営の厚さに比べたら、颯太は蟻んこ同然だった。

 颯太が途方に暮れていると、朋絵は頭に電球が灯ったような声を上げた。


「そうだ、アーちゃんもせっかくだし肉まん食べて行こうよ。颯太の奢りで!」

「いいんですか!」


 朋絵の提案に、アリシアは瞳を輝かせた。


「おい、アリシアの分を買うのは構わないが、いまさり気なく自分の分まで足さなかったか?」


 すると朋絵は分かりやすく舌打ちした。


「ちっ、バレたか。いいじゃんか別に、颯太は金持ちなんだからー」

「別に金持ちじゃねぇよ。自分の分は自分で買え!」

「ソウタさん。いつもトモエさんにはお世話になってるんですから、そのくらいは買ってあげましょうよ」

「アリシアそう言ってるけどそれ俺のお金で買うんだからね⁉」

「あれ、さらりと俺入ってなくね?」

「あ、リクトさんの分忘れてました⁉」

「今日一番傷つくんだけど⁉」

「あ~~! 会話が渋滞してる~~⁉」


 町に響く、賑やかな四人の声。

 夜空に輝く一番星はその輝きに負けないくらい、四人は輝いていて――。

 

  ―― Fin ――




本当は今日改稿作業だけで更新予定なかったんですけど、なんか書けたので上げました。

何気にこの四人のペアは初絡みかもしれないです。

そんな訳で天罰のメソッド、第二部第三章の開幕です! タイトルは【 紫惑・白欲、交わりて 】です!

始まった三章もお楽しみに!

↓↓↓

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