第67話 『 雨上がりの虹 』
登場人物紹介
宮地颯太 (みやじそうた) 本作主人公。天使と共に歩く人間。
アリシア 本作メインヒロイン。人ともに歩く堕天使。
―― 28 ――
「少しは気持ち、楽になった?」
「ずび……はい」
泣き止んだアリシアは鼻を啜りながらこくりと頷いた。沢山泣いた後のアリシアの顔は目が真っ赤になっていたが、どこか憑き物が晴れたような顔だった。
「ごめいわくおかけしました。泣くつもりなんてなかったんですけど、我慢しきれなくて」
「我慢なんてしなくていいよ。泣きたいのを我慢する時はあるかもしれないけど、傍に居てくれる人がいるならうんと泣けばいい」
「うぅっ。ソウタさんの優しさが身に沁みますぅ」
渡したハンカチを握りしめながら、また泣きそうになるアリシアに颯太は苦笑した。
そして、颯太はアリシアの目尻に浮かぶ雫をそっと払いながら、
「アリシアはずっと、言えなかったことを抱えたんだ。散々迷って、悩んで、それでも俺に打ち明けてくれたのは、嬉しかった」
「ソウタさん」
「俺はまだ、天界の法とか、それに従順する天使のことはよく分からない。アリシアの意思を聞いても、やっぱり納得いかないと思う事はある。だからさ、天界のことも、少しずつでいいから、知っていきたい」
頬を撫でる手に、アリシアの指が絡んできた。その温もりを享受しようとする天使は微笑みを浮かべて、
「はい。あなたに、沢山教えていきます。私が、天界で学んだこと、見てきたこと、感じてきたこと。全部、知って欲しい」
「うん」
それを聞いて、天界に変革が起きる訳ではない。ただ、颯太は人として、天使という存在に歩み寄りたかった。もっと色々なことを知れば、きっといつか、自分とアリシアのように、理解し合える日が来ることを願って――。
「――――」
「――ッ!」
色白の額。そこに意識が吸い込まれて、颯太は願いを込めたようにアリシアの額に口づけをした。
唐突にこんなことをされてさぞ驚いているのであろう。顔を元の位置に戻せば、アリシアは口を金魚のようにパクパクさせていた。
「そ、ソウタさん、いま、なにを……っ」
「ごめん。我慢できなかった」
正面の天使があまりに愛おし過ぎて、颯太は込み上がる欲求に抗えなかった。
不意打ちならば拒否する暇はあるまいと、そんな一抹の悪戯心も含めて。
まだ驚愕するアリシアに、颯太は微笑みをみせて言った。
「これは、俺なりの誓い、かな。天使の隣に寄り添う人として、キミの恋人として、これから先、アリシアが抱えていく苦難を、一緒に乗り越えていくっていう――そんな誓い」
言葉にしてしまえば、なんと歯が浮かぶような台詞なんだと羞恥に燃えそうになった。
けれど、ここで羞恥に塗れていまの言葉をなかったことにしてしまえば、それこそ漢として下衆だ。祖父に――勝也にぶん殴られてしまう。
惚れた女を生涯愛すること。そうやって、颯太は勝也に教えられた。
だから、アリシアに惚れた一人の男として、颯太はこの誓いを己の胸に刻んだ。
「――ですか」
「え?」
心臓の鼓動が五月蠅くて、アリシアの声がうまく聞き取れなかった。
「ごめん、アリシア。もう一回言ってくれる?」
「~~~~~っ!」
今度はしっかりと聞こうと心臓の音を鎮めると、何故かアリシアは耳まで真っ赤にして悶えていた。
じたばたとその場で足を揺らすアリシアは、暫くしてから息を深く吸った。
そして――濡れる金色の瞳が、いつかできなかった約束を果たそうとした。
「だから、今の誓いを、ここには、してくれないんですか?」
「ッ! ――うん、する」
細く、触れてしまえば枝のように簡単に折れてしまいそうな指。それが指しているのは、淡い桜色の唇だった。
問いかけに、颯太は厳然と、しかし微笑みを浮かべて頷く。
「もう、何も怖くありませんよ。過去の後悔は、私の中の『罪科』は――あなたが受け入れて、そして救ってくれた」
「俺はどんなアリシアでも好きだから」
「はい、もう、溺れるくらい知ってます。あなたの愛を」
「じゃあ、もう何も怖くないね」
「はい。今はもう、心臓がどきどきで一杯です」
「俺も」
「じゃあ、私たち一緒ですね」
「うん。一緒だ」
――この熱が、キミに伝わればいいと思った。
――この熱が、あなたに伝わって欲しいと思った。
「ソウタさん。私を救ってくれて、ありがとう――んっ」
――キミを絶対、幸せにするよ。アリシア。
そして、純情の熱と誓いの熱は交わりあった――。
―― Fin ――
二部二章 『 私欲の転校生 』無事終了! お次からは三章突入です! タイトルはまだ悩んでます。
この回はただただ、この天メソをずっと見てくれていた読者、追いかけてくれた読者は感慨深くなってくれたらと思って書きました。たぶん、作者と同じ気持ちになってくれてるはずですww
今日は焼肉か、、、
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