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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第一部  【 白銀の邂逅編 】
7/234

第6話 『 葛藤する感情 』

人物紹介

宮地颯太 (みやじそうた) 今回のお話は颯太ただ一人なので登場人物紹介も颯太のみ。

【 side颯太 】


 ―― 6 ――


 ――天界から来た少女――ではなく、天使・アリシアとの同棲生活が早くも三日が過ぎようとしていた、その就寝前。


「づっかれた~~」


 一歩も動けないといわんばかりに颯太は布団にダイブ。柔らかい感触に全身が包まれ、溜まりに貯まった疲労がどっと抜けていく。


「まだアリシアが住み始めて三日なのに、すげぇ大変だ」


 至福の一時を堪能しながら、颯太は仰向けになってこれまでの出来事を振り返った。

 端的にいえば、地球の文化に触れるアリシアの好奇心は凄絶だった。


 家の中でもほぼ全ての物に説明を求められ、そして一度外に出れば好奇心に惹かれるままに駆けだしていく。中でも、台所のガスコンロの火と自動車といいた乗り物には一段と興味が注がれていた。


 乗り物に家具家電、近代の建物と、この世の全てが未知な天使。その知識に対する飢えはまだ収まっていない。きっと、明日も質問攻めだろう。


 疑問に思うことに対し、アリシアは迷うことなく颯太に質問する。その勤勉な姿勢を好ましく思いながらも、颯太はある時アリシアに問いかけた。


『どうしてそんなに何かを知ろうとするの?』


 現代っ子の颯太は全方向に好奇心を向けるアリシアの気持ちが理解できなかった。知らないことを無理に知る必要はないと思っているからだ。それに、興味が湧けば片手で調べられる時代だ。それを知識として呼べるかは微妙だが。


 アリシアはおそらく、人から聞たこと、そして実際に体験したことを知識としているように見えた。颯太のような現代の子どもとは違う。いってしまえば、昔の、それこそ昭和の時代の子どものような在り方だ。


 そんなやり方では効率が悪いと思っている颯太だから出た純粋な疑問だった。そんな問いかけに、アリシアは照れもなくこう答えた。


『知らない事を知れるようになるのは、スゴく楽しいんです。一つ、何か知る度に新しい世界が広がっていく。世界が広がれば、新しい道が開ける。沢山の道が開けば、たくさんの希望と巡り合えますから』


 それを聞いた時は、颯太は「そっか」と答えるしかできなかった。


「一つ、何か知るたびに世界が広がる。か」 


 アリシアのその言葉が、颯太の胸裏に残り続ける。


「いまさら、俺が何かを始めることなんてないか」


 ふ、と自嘲して、颯太は思考を放棄した。吐いた言葉通り、自分が何かを始めることは二度とないと決めつけたからだ。


「はぁ……とにかく疲れた。今日も頑張ったし、明日に備えて寝よ」


 きっと、明日も質問攻めだ。だから、それに応えるために英気を養わなければ。


 まだ頭の片隅に泥のようなものがへばりついている。だけど電気を消して、目を閉じた。そしてすぐに襲ってきた睡魔に意識を預ける。そうすれば、楽になるから。


 考えることに。答えを出そうとすることに。


 意識が途切れる寸前、颯太はふと思った。


 もし、この世界の残酷さに気付いた時、果たしてあの子はどうするのだろうか。


 受け入れるのか。それとも希望を求めて抗うのか。――それとも、受け入れて尚、抗わんとするのか。

 颯太はとっくに諦めてしまったけれど、あの子はどんな選択を取るのだろう。少しだけ、興味があった。

 けれど、そんな思考は深い微睡に呑まれて消えてしまった。


 アリシアとの同棲生活はまだ始まったばかりだ。

   

―― Fin ――


今話がよければ広告下↓【☆☆☆☆☆】いいねを【★★★★★】にしていただけると作者の励みになります! 皆様の応援、心よりお待ちしております! 

最近、絵より小説のほうが書いてる気がする、な結乃拓也です。

第一章はこの六話で一区切りとなります。第一章はアリシアと颯太の出会い、そして次なる章への布石に当たります。まだまだ謎だらけですが、どうか温かい目で見守っていただけると幸いです。

それでは次回は第二章で!

【コメント、ブックマーク、いいね】など頂けたら作者の励みになります。


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