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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
66/234

第62 『 デートをしよう 』 その2

61話からの続きなので【side】と番号なしです。




 ――町の景色を楽しんで、電車に揺られて、バスに乗って――辿り着いた場所は、二人が以前買い物に来た隣町のデパートだった。


「ここって」

「そ。俺とアリシアが、初めて遠出した場所」


 見覚えのある道のりだったから、アリシアも途中で気付いた節があったが、それでも驚きはあったようだ。目を瞬かせるアリシアに、颯太は華奢な手を握った。


「前はちょっとしか遊べなかったけど、今日は日が暮れるまで遊んでこうか」

「! ――はいっ」


 にやりと笑えば、アリシアは破顔して頷いた。


「迷子にはならないように、しっかり手は繋いでおかないとな」

「酷い⁉ もう子どもじゃないんですからね。迷子になったら迷子センターにちゃんと行けますっ」

「そこは自慢げに言わないで欲しいかな……」


 歩き始める颯太の隣で、アリシアは謎の自信を披露する。

 駐車されている車の間を縫うように進みながら、二人はいざ店内へ。


「久しぶりに来ましたけど、やっぱり大きいですねぇ」

「アリシアはあんまり遠出しないからね」

「だって一人で行くのは確かにドキドキしそうですが、でもやっぱり怖いです」

「まぁ、こういう場所は一人で行くのもいいけど、大勢で行った方が楽しいしね。今日は二人きりだけど、今度は朋絵とか誘って皆で行こうか」

「本当ですか! やった!」


 何気ない提案だったが、その場で跳ねるアリシアの笑顔を見れば実現しなければならないと思ってしまった。

 次回の約束も取り付けたことで、颯太はアリシアに「さて」と提案を始めた。


「どうしようか。アリシアはここで、何かやりたいことある?」


 本来、デートとは計画を練って男がエスコートするものだが、今日はアリシアのやりたいことを叶える日だ。アリシアが楽しければ颯太も楽しい。その逆も然りなので、結果オーライだ。

 颯太の問いかけに、アリシアは真剣な顔で思案しながら「難しいですね」と呟いた。


「この前やった〝くれーんげーむ〟もまたやりたいですし、お洋服も見たいです」

「おぉ、アリシアが洋服に興味を持つようになった!」

「なんで驚くんですかぁ?」


 頬を膨らませるアリシアに、颯太は笑みを引き攣らせながら言った。


「いや、だってアリシアはいつもみつ姉のお下がり着てたじゃん。だから、洋服に無頓着なのかと思って……」

「言われれば否定しづらいですけど、でも、このお洋服を選んでから、少しだけ自分で探すのが楽しくなったんです」


 そう言って、アリシアは胸の辺りを指でつまむ。皺が生まれるかくらいに丁寧に持っているから、余程、お気に入りの洋服なのだろう。

 白基調のブラウス。それは、アリシアがみつ姉と買い物に出かけた日、初めて『自分で選んで買った』ものだった。

 照れ臭そうに頬を朱く染めながら魅せてくれたことは、今でも鮮明に覚えている。


「よく着てるなーと思ってたけど、本当にお気に入りなんだ、それ」

「はい。だって、これはソウタさんが「可愛い」って褒めてくれたものですから」

「……天使か」


 天使が天使のような甘い言葉を告げて、颯太はアリシアの顔を直視できなかった。

 颯太が褒めてくれたから着ている。その事実がいかに男心を燻るか本人は知らないのだろう。実際、アリシアは悶絶する颯太をみてきょとんとしている。


 ――天然の天使の破壊力、エグい!


 アリシアは自然に称賛や男心を燻る発言をする。慣れたとしても、不意に放たれるそれの破壊力は凄まじいものだった。


「うちのカノジョマジ天使。優勝です」

「? 何を言っているのかがよく分かりませんが、褒めてくれているなら嬉しいです」

「ガハッ……本当に、調子狂うなぁ」

「あ、久々に聞きました、それ」


 顔が赤くなるのを必死に堪えていると、アリシアはくすくすと笑う。


 ――俺、このデート耐えきれるかなぁ。


 今日の名目はアリシアを元気付けること。けれど、今のところ颯太の方が元気や幸せを貰っている。それが妙に悔しくて。


「今日は家に帰ってすぐ寝るくらい、アリシアを楽しませるからね」

「はいっ。とことん楽しみましょう!」


 破顔する彼女に見惚れながら、颯太は内心で呟く。

 やっぱり、アリシアはどんな顔も可愛いな、と。


  *******


 ぶらぶらと店内を歩き回りながら、二人は最奥に設営されている映画館に足が止まった。


「……アリシアって、映画館で映画を見たことないよね」

「はい。なんなら、今日初めて見ました」


 こういう場所なんですねー、と感嘆しながら施設内を覗くアリシアを横目に、颯太は上映中のポスターを眺めた。


 ――あ、これ、たぶんアリシア好きなんじゃないかな。


 ふと目に着いたポスターは、アリシアが金曜日の夜に楽しそうに見るアニメーション会社が手掛けている映画だった。

 ふむ、と颯太は思案すると、はしゃぐアリシアに声を掛けた。


「せっかくだから、映画でも見ようか?」

「いいんですか⁉ でも、私でも見れるようなものありますかね?」


 不安そうなアリシアに、颯太は件のポスターを指さした。


「これなんて丁度いいんじゃないかな。ディスティニーの映画なんだけど」

「ディスティニー……あ、金曜映画ショーでいつも見ている映画ですね!」

「そうそう。最新作が上映されるのは知ってたけど、まさかとっくに上映されてるとは知らなかったから、見る分にはうってつけじゃない?」


 歩スターを見れば、クラシック帽を被った少年と動物たちが主役の映画なようだ。これは少し面白そうだな、と颯太も興味が湧いてきた。

 顎に手を置いてポスターを見つめていると、アリシアが腰に手を当てて自慢げに説明してきた。


「私はニュースで少しだけ見ましたよ。今回のお話は潰れかけのサーカス団を、主人公のピックと動物さんたちが復活させるお話だそうです。ちなみに、私が好きなキャラクターはハリネズミのグラトニーです」

「なんだその凶悪な名前」

「ちなみに女の子ですよ」

「それ男の名前だろ⁉」


 アリシアがそのハリネズミを指さしてくれたが、名前に似合わず愛嬌のあるフォルムだった。製作者の意図が使えず悶々としていると、アリシアが服を引っ張った。


「ソウタさん。その、私としては、この映画は凄く見たい、です。でも、ソウタさんが他の映画が見たい、と言えば、私は何でもいいですからね」 


 見たいことを必死に隠そうとして、でも誤魔化しきれずに上目遣いで言ってきた。


 ――その顔はズルいよ、アリシア。


 今日のアリシアは颯太の心臓を確実に止めにきている。可愛いカノジョのおねだりに、むしろ答えない方が鬼畜野郎だ。


「俺もこの映画凄くみたいから、一緒に見よう。すぐチケット取ろう! ポップコーンと飲み物とグッズ買おう!」

「っ! ソウタさんも見たかったんですね! 良かった、これで、一緒に楽しめますね!」


 勢い任せに同意する颯太に、アリシアは屈託なく笑った。

 颯太と一緒だから嬉しいのか、気になっていた映画を観れるから嬉しいのか、どちらかは分からないけれど、アリシアの笑顔を見ればそんなことはどうでもよくなった。


「さ、今日はアリシアの映画館デビューだ。豪華にしないとね」

「私はソウタさんと一緒に観られてもう満足ですけどね」

「調子狂う!」


 ただご機嫌なアリシアの手を引いて、颯太は堪らず叫んだ。

 仲睦まじいカップルの入場に、受付員さんはそれはもう微笑ましそうに見守っているのだった。


  *********


「楽しかったー!」


 上映後。出口にてアリシアは大きく腕を上げて歓喜を上げていた。


「いやぁ。俺も魅入っちゃったなー」


 アリシアの興味に付いて行く形で観ていたが、予想より遥かに面白くて、気がつけば颯太もスクリーンにくぎ付けになっていた。あっという間に過ぎた二時間に、思わず感嘆の息が漏れた。

 映画の余韻に浸る颯太に、アリシアはまだ目を爛々に輝かせながら腕をブンブン振りました。


「そうですよね、面白かったですよね! 特に終盤のピックが動物さんたちと力を合わせて悪党を倒して、サーカスをさせるシーン! あれは感動で泣いてしまいました」

「アリシアのお気に入りのグラトニーもそこで大活躍してたしね」


 ハリネズミのグラトニーが針で悪党のお尻を刺したり、小さい体を活かして敵の情報を仲間に報せたりと、思いのほか役割が多くて颯太も驚いた。


「ピックの何度挫けそうになっても諦めない姿もカッコ良かったですし、ライオンさんの火の輪を潜るところも迫力満点でした! あと――」


 よほど映画が楽しかったのか、アリシアは饒舌に感想を語っていた。颯太はそれを微笑ましく聞き届けながら、胸中で呟く。


 ――まぁ、俺が一番面白かったのは、映画観るアリシアだったんだけどね。


 喜怒哀楽が豊富で、ありのまま顔に出すアリシア。映画を観る最中もそれは変わらず、時々スクリーンから視線を外せば、表情豊かなアリシアを拝めた。

 盛り上がるシーンでは大きく口を開けるアリシアを。面白いシーンは笑うアリシアを。感動や悲しみのシーンでは涙を流すアリシアが見れた。

 純粋に映画を楽しみ人が隣にいたからこそ、颯太も楽しく観れたのかもしれない。


「――ソウタさん! ちゃんと私の話聞いてますか⁉」


 にやにやしていると、アリシアが頬を膨らませた。


「ちゃんと聞いてるよ。ピックが敵ボスに泣き寝入りした所面白かったね」

「そんなシーンありませんでしたが⁉ ちゃんと映画見てましたか⁉」


 冗談をいえば、アリシアはぷりぷりと怒った顔になった。そんなカノジョの反応にケラケラ笑いながら、颯太は差し伸べた。


「感想の続きは歩きながらしようか。アリシアの満足するまで、ずっと聞くからさ」

「んー、なんだか軽くあしらわれてる気がします。ちゃんと聞く気あるんですか?」

「あります。めちゃくちゃ聞きます。だから、ほら」

「――はい」


 差し伸べた手を、アリシアは握る。小さな手の平の温もりを堪能しながら握り返せば、愛らしい顔に嵌められた金色の双眸が細くなる。


「そうだ。アリシア、クレーンゲームに『ピック』のぬいぐるみがあるみたいだよ。せっかくだし取りに行こうか」

「本当ですか⁉ グラさんありますかね?」

「どうだろ。あったらいいね」

「ありますよ、人気キャラクターですから!」

「それはアリシアの中でだと思うけど……まぁ、なんでもいいか」


 歩き始める二人は、笑顔を交わしながら進んでいく。


「それで、さっきの続きですけど、中盤でブタのケシーがグラさんを踏んじゃうシーン、凄く面白かったですよね! それから……」

「あ、アリシアもあそこ好きなんだ。俺も好きだよ。それならあのシーンだけど……」

「私も好きです! えへへ、ソウタさんと一緒だ」


 会話は終わらない。

 いつもまでも、アリシアから笑顔が消えることはなかった――。


  ―― Fin ――



 


映画のタイトルは『ピック』

簡単にあらすじ紹介をすると、

大都市にあるさびれたサーカス団【ロロア】。その団長を務めるピックは、祖父の想いを叶える為、ロロアを都市一番の大サーカス団にさせる為奔走する。しかし、団員や動物たちはやる気がなく、このままではロロアは潰れてしまう。果たしてピックは迫る魔の手を掻い潜り、仲間たちとともに一世一代のサーカスを成功させられるか⁉

こんな感じです。

今考えましたw

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