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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
59/234

第55話 『 いつもの倍返し 』

登場人物紹介 


宮地颯太 (みやじそうた) アリシア以外には基本褒めることはない性格捻じ曲がり主人公。

アリシア  白銀美少女ことメインヒロイン。ソウタに褒められたい三銃士の一人。

      今話アリシアが見たら発狂しそうで怖い。

三崎朋絵 (みさきともえ) 颯太に褒められたい三銃士の一人。褒められると頬を赤らめるタイプ。

倉科陸人 (くらしなりくと) 颯太に褒められたい三銃士の一人。陸人が一番颯太に褒められてねぇ。

優良三津奈 (ゆらみつな) 颯太にベタ甘なお姉ちゃんの鏡。

              反抗期は、起こさない・起こさせない・起こさせはしない

神払聖羅 (かんばらせいら) 颯太をからかいたい女の子。

               陸上部に颯太を半ば強引に入部させた張本人。

【 side 颯太 】


 ―― 18 ――


 真心弁当のおかげで活力に満ち、放課後の部活も気合い充分に望めていた。


「神払、顎が出てる。もっと引くことを意識して、姿勢も真っ直ぐだ」


 五十メートルを走り終えた聖羅に颯太は修正すべき点を告げていく。

 聖羅が入部してからそろそろ三週間が経つ。聖羅の現在取り組んでいる練習は、走りの姿勢と体力作りだった。

 息を整えながら戻ってくる聖羅は、颯太の眼前で止まると理解したと頷いた。


「意識したつもりでしたけど、やっぱり走行中は無意識に逸れてしまいますね」

「こればかりは練習あるのみだな」

「ですね」


 苦笑する颯太に、聖羅は脇を締めて強く吐息した。

 彼女も何やらやる気らしく、颯太はそれを嬉しく思いながらも眉尻を下げた。


「焦らなくていいからな。無理にペース上げても、体が悲鳴上げるだけだから」

「全然焦ってませんよ。宮地くんは意外と心配症ですね」


 ふふ、とからかうように笑う聖羅に、颯太はバツの悪い顔をした。


「神払は運動選手としての体がちゃんと作られてないんだから心配するに決まってる。この時期に陸上部に入部したんだから尚更だ」


 聖羅はこの秋に運動部に入部した、いわば初心者だ。聖羅が運動にも秀でた才能を有しているのは体感済みだが、体の造りはまだまだ未完成だ。

 丁寧に練習を積み重ねていくことが大事、そう言おうとしたところで、聖羅は「でも」と颯太の声を遮った。


「私は、宮地君の練習メニューをしっかりこなしていますよ。これ、他の部員さんが言ってましたけど、中々にハードなそうじゃないですか」


 聖羅の指摘に颯太は顔色一つ変えず「そうだな」と頷いた。


「というか、俺からすればあいつらの練習メニューは少ないほうだぞ」

「でも、宮地くんは以前、一緒に練習してたんですよね?」

「あぁ。でも、先生から特別に許可もらってほぼ自分で作った練習メニューで動いてたから」

「なるほど、ボッチだったんですね」

「言い方……」


 ドストレートに罵倒されて、颯太も思わず頬が引きずった。心に突き刺さった槍を抜いていると、聖羅は「冗談ですよ」とけらけらと笑う。


「いやホント、気を付けろよ。怒りよりも先に胸の痛みが勝ったわ」

「ごめんなさい。つい、宮地くんをイジメるのが楽しくて」

「される側は楽しくないってそろそろ気付こうな?」


 悪魔が実に悪魔らしいことを言っていて、颯太はため息を吐いた。聖羅は返事したものの、まったく反省の色は見て取れなかった。


「もういい。話戻すけど、俺がいま神払に熟してもらってる練習メニューは『選手として活躍できる、最低限のボーダーラインを超える為のもの』だ。来年の大会……神払には最初で最後のシーズンになるけど、そこで結果を残して、悔いを残させない為のやらなきゃならない必要最低限のメニューだよ」

「そうですね」


 先程の空気とは一変して、真面目な口調で諭せば聖羅も表情が引き締まった。


「竹部先生にも入る前に忠告されたけど、今から始めたら初心者の神払は残りの大会には出られない。記録会に出ようと思えば出られるけど、散々な結果が公に晒されるのは嫌だろ?」

「えぇ」


 そこは強く言い切るんだな、と内心で苦笑した。

 陸上にはシズーンがあって、主に二つに分かれる。夏は、短距離走や走り幅跳びなどのフィールド種目。冬は、長距離の駅伝だ。

 シーズンの変わりは秋。夏のインターハイが終われば、短距離選手たちは大会に出る機会が一気に減って、長距離走組と駅伝のチームたちが本格的に始動する。

 聖羅は現状、短距離の選手なのでこのシーズンオフにど真ん中の入部になってしまったのだ。大会に出ようにも精々記録会程度。そして、先に告げた通り、結果は火を見るよりも明らかだろう。

 その悔しさをバネに精進してもらう、というのも一理あるが、一方でそれが原因で辞めてしまっては竹部先生がいたたまれない。

 本人も勝気な性格だ。負ける、なんてこと万が一でもプライドが許さないはずだ。


「だったら、このシーズンオフでさっき言った事を実現してもらわなきゃならない。みっちり鍛えて――三年の春に大活躍する。たぶん、そういうの好きだろ、神払は」

「はい。よく分かりますね」


 不敵な笑みを浮かべる颯太に、聖羅も同じ顔をして答えた。

 聖羅は勝気な性格だ。自分の立場をよく理解しているし、それを好意的とまで受け止めている印象がある。無名の選手と大進撃。彼女としてもこれ以上ないほどの快感だろう。


「二週間ほぼ付きっ切りで練習見てたからな。少しくらいなら性格分かってくる」


 彼女と、ほんのわずかでも息が統合したばっかりに、失態に気付いたのはもうその言葉が口から出た後だった。

 案の定、前に立つ聖羅の顔はみるみる口角が上がっていく。


「宮地くんの中の私って、どういう女の子なんですか?」

「――――」


 目を細める聖羅の表情は嫣然としたものだった。普通の男子ならその表情に心臓に矢を貫かれてベタ褒めするだろうが、颯太は違った。二週間、身近に彼女に接していれば耐性も付く上に、これが好意から来る興味ではなく、颯太の反応を楽しむ揶揄いなのが分かっている為全く心が動揺しなかった。


「言わなきゃ駄目?」

「それは宮地くんの判断にお任せしますよ。ただ、今日のこれからの練習に影響が出るかもしれませんが」


 それは露骨に行ってくれなきゃ練習サボるからな、と脅しているようなものだ。前に一度、試しに彼女の質問から逃げた事があるが、その時は機嫌を直すのに大変時間が掛かった。

 その二の舞だけは勘弁なので、颯太は深い溜息を吐いた。


 ――アリシア以外褒める気なんて毛頭ないんだが、仕方がない。


 コホン、と咳払いして、颯太は告げていく。


「あー。俺としては、神払は普通に美人で可愛い女の子だと思うよ。人をイジめ……からかうことが好きな割に根は真面目だし、相手を慮った行動もしてる。転校してきたばかりなのにクラスの全員とすぐ打ち解けたのは凄いし、部活の時も自分の立場をよく理解して動いてる」

「あ、ちょ……待って」

「色々と物申したいことはあるが、まぁ、俺としては神払と一緒に練習できてよかった、って思ってる」


 途中、聖羅から蚊の鳴くような声が聞こえた気がしたが、とりあえず颯太は自分が思う聖羅の評価を伝えた。

 それが終わってから見た聖羅の顔は、まるで林檎のように赤く熟れていていた。


「……ち、違います! こ、これはその……本当に違くて……っ」


 視線を泳がし、赤い頬を両手で隠す聖羅。狼狽する彼女の姿に、颯太は眉根を寄せた。


「自分から聞いておいたくせに、なんで顔真っ赤にしてんだ」


 すると聖羅は両手をブンブンと振り回した。


「だって! 宮地くんがあんなに褒めるなんて予想してなかったんですよ⁉ いつも仏頂面だから今回も狼狽えさせてやろうと思ったのに、それは卑怯です!」

「仏頂面は失礼だし、やっぱり俺をからかうつもりだったんじゃねえか」


 そろそろ耐性が付与され始めた颯太はそう簡単に聖羅の魂胆に嵌るようなことはなかった。それどころか、今回は日頃の倍返しまで出来て心なしかご満悦だ。

 これ好機とばかりに、颯太は悪戯な笑みを浮かべた。


「なんならもっと褒めるか? いつも俺の練習に文句言わず熟してくれる日頃のお礼に」

「宮地くんの悪魔! 鬼! ほめ殺し魔!」

「はっ。好きなだけ罵るがいい。その分たっぷり練習メニュー追加してやるからな」

「本当に悪魔じゃないですか!」


 珍しく悲鳴を上げる聖羅が実に揶揄い甲斐があって、颯太は聖羅が白旗を挙げるまで褒め殺し続けた。そこには確かに、マネージャーとして未熟な自分の練習メニューを快く受け入れてくれるお礼も含まれていて――。


「本当にありがとうな、神払」


  ―― Fin ――

 


聖羅は俗にいうカウンターに弱いタイプで、颯太は颯太でアリシアを褒める時の癖が出てしまった回でした。

本当に更新遅れてしまってすいませんでした(土下座

今日更新分する作ってないのに学校のほうは卒業制作のイラストの提出でてんやわんやでしたが、なんとか今日も無事、更新することができました! 激辛焼きそば回避です! (詳細はTwitterを見てね☆

明日はお昼に更新予定ですが、たぶん、寝て起きるのがお昼パターンだから無理。


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