第51話 『 休日のお散歩 』
登場人物紹介~
宮地颯太 (みやじそうた) 久々の休日を恋人と堪能する主人公。こんなカレシいたらホレるやん!
アリシア 我らが天使。可愛さの権化で彼女の笑顔で世界から戦争がなくなります。
【 side 颯太 】
―― 14 ――
寝起きから至福の一時を堪能して、颯太はアリシアと階段を降りていた。
「ソウタさんて、意外とこちょこちょ弱いんですね」
「それは忘れてくれアリシアよ。……昔はそうでもなかった気がするんだけどなー」
くすくすと悪戯に笑う彼女に、颯太は口をへの字に曲げた。
ずっと前。それこそ颯太がまだ十歳の頃にみつ姉に腹を弄られたことがあった気がするが、その時はくすりとも笑わなかったはずだ。「ソウちゃんは本当に愛想が悪いわねぇ」と呟かれたのが地味にショックだったから覚えている。
年齢的に笑いのツボが浅くなったのか、はたまた警戒心が皆無だったからなのか、脳内で議論を重ねていると、髪を揺らして振り返ったアリシアが「そういえば」と問うた。
「ご飯どうしましょうか。もうお昼になっちゃいましたが」
「それに関してはホントに申し訳ない」
「別に謝るほどの失態じゃありませんよ。かくいう私も一緒に寝てしまいたし」
両手を合わせて頭を低くする颯太に、アリシアは首を横に振った。
階段を降りて渡り廊下へ足を踏み鳴らしていくと、アリシアは「んー」とか細い声を出しながら差し指を唇に当てた。
「私も結局、朝ご飯抜きになってしまいたし、お家のお掃除も全然終わってません」
「掃除は俺も手伝うからすぐに終わるよ。というか、毎日掃除してるんだから今日くらいはやらなくてもよくない?」
「ダメですよ、ソウタさん。些細な怠慢が、人を堕落へと貶めるんですから」
めっと叱責するアリシアに颯太は「ごもっとも」と何も言えなくなってしまった。一日を欠かす事なく誠実に生きるアリシアを見習いつつ、颯太は提案を口にしていく。
「なら、朝ご飯……いや昼ごはんか? まぁ、どっちでもいいや。ご飯は軽めのものにして、おやつを少し良い物にしようか。そうだな……シュークリームとかどう?」
「シュークリーム! いいですね!」
今日のおやつの品目を挙げれば、アリシアは目をキラキラさせて賛同した。
「それじゃ、掃除が終わったら少し休憩して、それから散歩がてらに『レミーラ』にシュークリームを買いに行こうか」
「了解です!」
今からシュークリームが待ち遠してく仕方がないのだろう。びしっ、と敬礼ポーズを取ったアリシアの顔は、まだ食べてすらいないのに落ちそうだった。
――いつも頑張ってくれるお礼はしなきゃな、ちゃんと。
アリシアの頭を撫でながら、颯太は微笑みを浮かべた。
颯太が日中学校にいる今、アリシアが家の家事全般を担ってくれている。大変なのは百も承知なので、その分ご褒美はたくさんあげたかった。
「よし、俺も頑張って朝ご飯作りますかー」
「お米は焚いてありますし、お味噌も昨日のがまだ残っているので気合入れなくても平気ですよ」
「ならおかずに腕を掛けよう。そうだな、アリシアの好きな卵焼きと鯖の塩焼きを作ろうか。あ、味噌汁もなめこ汁にする?」
「なんと豪勢な! ひょっとして、今日は何かの記念日ですか⁉」
「ううん。でも、何でもない休日だからこそ特別にする価値はあるでしょ」
「理由が素敵過ぎます、ソウタさん!」
世間から見れば今日はただの休日。そんな日だからこそ、特別なものへと変えることができるのだ。
――アリシアと出会ったのだって、ただの平日なのだから。
キミと居る一日一日が大切なんだと、颯太は幸せを噛みしめるように歩いていく。
********
お約束の午後のおやつに合わせて、二人は遅い朝食を摂ったあとは分担して家事をこなしていた。
アリシアはお風呂場と食器の洗い物。そして二階の部屋の掃除。
颯太はトイレと渡り廊下、玄関と主に一階を担当。
先に自分の分担を終わらせたアリシアが颯太のほうを手伝ってくれたおかげで、予定より早く終わらせることができた。
二十分ほどの小休憩を挟み、待ちきれずそわそわするアリシアに颯太は苦笑。
まるで犬が散歩を催促しているように見えて、颯太は「ちょっと早いけど、まったり歩きながら行こうか」と提案するとアリシアは瞳を割れんばかりに輝かせて頷いた。
――そんなわけで現在、颯太とアリシアは洋菓子店『レミーラ』を目指しながら散歩しっていた。
「なんか、こうやって二人で散歩するの久々な気がするね」
「確かにそうですね。目的地があるとはいえ、ゆっくり散歩するのは懐かしい感じがします」
颯太が憧憬を感じれば、アリシアも金色の双眸を細めて肯定した。
休日や学校から帰宅後に一緒に食材の買い出しに行くことはあれど、こうして時間を気にせず歩くのは随分と久しぶりだった。
「アリシアと散歩してると、不思議と落ち着くんだよね。初めはそうじゃなかったけど」
「うっ。地球に来たばかりは何かもが新鮮で、ついはしゃいでしまったんです。今思えば、凄く子ども染みたものでしたよね」
顔を羞恥心で赤く染めるアリシアに、颯太は「まぁね」と笑った。
「あの時は大変だったなー。お店に興味を示したと思ったら、今度は船を見つけて飛び出しちゃって、車に引かれないか心臓バクバクだったよ」
「今はちゃんと確認してますもんっ!」
懐かしい思い出を語っていると、当の本人は涙目になって颯太の胸を叩いた。彼女のなりの羞恥を隠す行為で、威力は無いが破壊力は抜群だった。
アリシアの可愛さに悶えながら、颯太は「もう言わないから」と小さく笑う。
「むぅ、約束ですよ?」
「分かってるよ。アリシアの昔話はまた今度にする」
「凄く恥ずかしいので、できれば今後もしないでください⁉」
頬を膨らませて抗議してくるので、颯太はなくなく受け入れた。まぁ、先程みたくアリシアをからかう為ではなく思い出話として語れば許されはするだろう。それに、本気でアリシアが嫌がれば話すつもりはない。結局、アリシアの反応が可愛いが故の愛のある行為だった。
「ほら、道路は危ないから、手繋ごう」
「子ども扱いじゃないですよね、それ」
「うん。俺がアリシアと手を繋ぎたくて伸ばしてる」
「もー。ずるい人ですね。ソウタさんは」
颯太がそういって手を伸ばせば、アリシアは優しい目つきをして吐息した。そして、小さな手の平の温もりが右手に伝わった。
その温もりを大事に包み込めば、それは応えるように握り返してきた。
「アリシアの手はホントに小さいな」
「そういうソウタさんの手はすごく大きいですよ」
互いにもう何度も手を握ってはいるが、何度重ねても飽きることはなかった。それどころか、その度にこの恋情は増していく。
「俺は何があっても、アリシアの手を離さないからね」
「なら私も、ソウタさんの手を離しません」
まっすぐ思いの丈を伝えれば、アリシアも負けじと手を強く握り返した。
「じゃあ、どっちが先に手を離すか勝負しようか」
「いいですよ。私がぜーったいに勝ちますけど」
「言ったな?」
「はい。言いましたとも」
「なら、アリシアが勝ったらプリンを追加で買ってあげよう。夜のデザートには持ってこいでしょ?」
「ホントですか! ――これは絶対に勝たないと!」
プリンが勝負の景品に出されて、アリシアは涎を垂らしながら気合を入れる。まぁ、勝たなくとも買う予定なのは彼女には内緒だ。
「プリン~・シュークリーム~・ぷぷぷりん~」
「なにその歌……まぁ楽しいならいいか」
変な歌を口ずさむアリシアを、颯太は苦笑しながらも微笑みを浮かべて見守る。
結局、どちらが先に手を離すか勝負は引き分けに終わり、二人はシュークリームとプリンを二つずつ買ったのだった――。
―― Fin ――
なんとか今日もあげられたぜぇ。。。
その日暮らしきちぃZE
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