第50話 『 お布団での一幕 』
これだけイチャコラしておいてキスしてないとかふざけてんのか――――――――ッ!! ((血涙
【 side 颯太 】
―― 13 ――
「――ん」
ゆっくりと瞼を開くと、まず先に違和感が生じた。
颯太は疲労が溜まっていなければ人よりも目覚めは良い方で、さらに思考回路が元に戻るのも早かった。
だから、七時間分の睡眠に一時間半の睡眠を加えれば、それはもう目覚めすっきりで完全覚醒するのに時間も掛からなかった。
「えっ!」
ぱちり、ぱちりと瞼を瞬いたのは、目先に生じた違和感を確かめて衝撃が奔ったからだ。
――なんでアリシアがここいるんだ⁉
「くぅ……くぅ」
見れば、颯太の腕の中には気持ちよさそうに寝息を立てる天使の姿があった。幼さの残る愛らしい顔は、起きている時の可憐さや笑顔がない代わりに無防備だった。顔は弛緩しきり、淡い桜色の唇からは生暖かい吐息が漏れる。それが絹越しに肌に伝わって、颯太は朝――正確にはもう昼だが心臓が爆発しそうだった。
――駄目だ! こうなった状況が全く思い出せない!
アリシアから自分の懐に潜り込むはずがないのは確定として、ならばいつから添い寝していたのが全然思い出せなかった。
確か、数時間前に一度起きた気がした。あまりに眠かったせいで何もかもうろ覚えでしかないが、その時にアリシアが様子を窺いに来た……気がしなくもない。
「あれ夢じゃなかったのかよ!」
てっきり男心が魅せた夢だったのかと思ったが、どうやら現実だったようだ。
超小声で自分を叱責して、颯太はやってしまったと後悔する。
否、後悔と言われれば是ではない。だって、結果はどうであれこの愛らしい天使の寝顔をほぼゼロ距離で拝められているのだから。時々、リビングでうたた寝をするアリシアを観ることはあるが、颯太の気配を感じてすぐ起きてしまう。だから、こうしてじっくりアリシアの寝顔を見られるのは中々に貴重だった。
――やっぱ、まつ毛長いなー。
呼吸に合せて揺れるまつ毛はツンと立っていてるし、鼻筋はしっかり通っているのに小さい。肌も新雪のように色白く、頬は自然の赤みを帯びている。これだけ美顔なのに手入れは一切していないのだから、朋絵とみつ姉がアリシアを羨む気持ちが少し理解できた。
――まぁ、アリシアは本物の天使だったから、比較対象にはならないんだけどさ。
その美貌も端麗さも、天使という『美』を体現化した存在だったからこそ備えられた必然的なものだ。アムネトもそうだが天使は例外なく『美形』だろう。要するに、人間とは根本から隔絶している。
――でも、そうなるとアリシアはもう人間だから、そういった恩恵はなくなるんだろうな。
そうさせたのは颯太であるし責任は一生を掛けて持つつもりだ。仮に、アリシアが醜い姿になろうともそれで離れるほどこの恋情は脆くはない。颯太はアリシアの心に惹かれ、在り方に惚れたのだ。勿論、容姿も。
「俺はアリシアの全部が好きで、それがこれから先も変わることはないから」
そんな風に、胸に湧く想いを吐露すれば、「んっ」と声が聞こえた。
「…………」
その声がどうにも寝起きの吐息ではないような気がして、颯太は眉根を寄せた。
「あー……俺はこの先もずっと、アリシアを好きでいるなー」
念の為、というか胸中の疑問を解消すべく声の音量を先よりも上げて言えば、分かりやすく天使の頬が朱くなっていた。
「す、すぅ……すぅ……」
どうやら天使は、小悪魔だったようだ。
「起きてるよね、アリシア」
「――お、起きてません」
「ふむ……」
絶対に起きているからこそ返って来た言葉なのだが、本人は一貫して寝ていることを主張してくる。どうやら起きたタイミングを見失って、そのまま颯太の愛の告白でつい声が漏れてしまったのだろう。恥ずかしかったのだと思うが、颯太も聞かれていないと思ったがしっかり聞かれてしまったので、顔が熱くなってしまった。
今のは完璧に颯太に非があるが、それでも納得がいかなかったのでとりあえずアリシアの横腹に手を回した。
「こちょこちょ~」
「ふっ、ふふ! あははっ! ちょ、ちょっと待って下さい、ソウタさん! あはは!」
「嫌だ。今回は俺が納得いくまでこちょこちょし続けるからね」
布団の中で笑い声を上げながら逃げるアリシアに、颯太は意地悪く言った。
本日は休日。時刻はもうお昼だが、こうして布団の中でゆったりと一日をスタートするのも悪くないと颯太は思うのだった。
「もうっ、こうなったら私もやり返すんですからねー!」
「俺の腹筋を甘くみるなよアリシアさん――ふ、ふはは!」
―― Fin ――
前書きは彼女いない歴=人生の男の嘆きです。
止めて! 颯太とアリシアのいちゃいちゃでされたら、原稿で物語と繋がっている作者の精神まで燃え尽きちゃう! お願い、死なないで作者! あんたが今ここで倒れたら、第二部はどうなっちゃうの!? ライフはまだ残ってる。ここを乗り越えたら、二人を幸せにできるんだから!
次回! 作者死す!! ←やりたかっただけ。
まぁ、二人が仲いいなら本望です。




