第48話 『 初心者同士 』
登場人物紹介~
宮地颯太 (みやじそうた) 本作主人公。中学、高校ともにインターハイに出場するほど実力者。
アリシア 本作メインヒロイン。颯太の大切な恋人。メインヒロインなのに出番が少なくてごめんね。
三崎朋絵 (みさきともえ) 颯太の親友で陸上部マネージャー。自然と出番が増えてます。
倉科陸人 (くらしなりくと) 颯太の親友で陸上部所属。競技は二百メートルを専攻している。
神払聖羅 (かんばらせいら) からかい上手の神払さん。←やりたかっただけ
【 side 颯太 】
―― 11 ――
ウォーミングアップを済ませ、屈伸や腕曲げ、アキレス腱伸ばしなど一通りの関節の運動も終わればついに練習の始まりだ。
「宮地くん、それは何ですか?」
「ん? あぁ、これか」
はて、と疑問符を浮かべながら聖羅は颯太の左手に握られた物を指さした。
聖羅の指摘に促されるまま。颯太はひらひらとそれを見せて答えた。
「練習メニューだよ。神払さんは運動部自体が初めてだって聞いたから、俺なりに色々調べて考えてきた」
「そういうのって、監督などがすることでは?」
聖羅の言い分に颯太は「確かにそうだな」と苦笑した。
「まぁ、先生一人じゃ色々面倒見切れないから俺に頼んなんだと思う。陸上部……というか部活全般にいえることだけど、一人の先生で把握するのって大変だから」
「でも、副顧問がいますよね」
「あぁ。ただ、副顧問はあくまで試合とか遠征とか、顧問がいない時の代理人だから。やっぱり専門的な知識は少ない……最悪ない」
「なるほど」
納得、と頷く聖羅を見て颯太は安堵の息を吐く。やはり彼女は地頭が良いだけあって、物事の理解力が非常に高い。おかげで、スムーズに説明が続けられる。
「この学校だと、顧問と副顧問がいるのは大抵運動部だな。文系部の方はやっぱり部員が少ないから一人でも十分みたい。ただ、吹奏楽には副顧問がいたはずだな」
「へぇ。ということは、それだけ成績を残しているんですね」
「あぁ。何回か垂れ幕が学校に張りだされてるの見た事があるな」
少なくとも県のコンクールには何度も入賞しているはずだ。そうでなくとも、吹奏楽部は運動部の大会に応援に出ている。多忙さは運動部並みと思っていいだろう。クラスメイトの吹奏楽部曰く、「夏は地獄w」とのこと。
颯太は僅かに脱線しかけた説明を戻しつつ、
「結局のところ、人手が足りないんだ。サッカー部とバスケ部には専属のコーチがいるけど」
専属のコーチがいる部活は、当然ながら大会で結果を残している。県内で強豪はどこか、と言われれば、五本の指には入るほどの実力がある部だ。
「そんな訳だから、竹部先生はほとんど一人でこの部を指揮しなきゃならない。だから、神払さんの面倒をみたくても視れないんだよ」
竹部先生としてもさぞジレンマを抱えたことだろう。シーズンの変わり目でなければもう少し聖羅に構う余裕があったかもしれないが、夏は夏で大規模な大会があるから多忙になる。
部活事情を概ね説明し終わると、聖羅は顎に手を置いて「なるほど」と理解してくれた。
「つまり、宮地くんは竹部先生にとっては貴重な部員の一人、ということですね」
「どうしてそんな結論に至ったのか教えてくれる?」
聖羅がにこりと笑いながら言って、颯太はその思考回路に首を捻った。
今の話のどこに颯太が先生に重宝される箇所があったのか、本気で難色を示していると、聖羅は「だって」と継ぎ、
「宮地くんは、初心者一人を指導できるほど有能な人材、ということですよね」
「――――」
「違いますか?」
「いや……」
聖羅の指摘に颯太はしばらく硬直した。
確かに、聖羅から見れば颯太は『先生が頼りにする部員の一人』なのだろう。実際、先生から直々に聖羅の当面のメニューは颯太が見て欲しいと頼まれたのだから。
しかし、颯太はそれほど優れたマネージャーではない。卑屈ではなく、俯瞰的に鑑みてそう自己判断したのだ。選手としては有能であっても、マネージャーとしては初心者だ。
「俺は、神払さんの思うような優秀なマネージャーじゃないよ」
きっぱりと否定した颯太に、聖羅は目を丸くする。端麗な顔立ちには、どうして、と顔に書いてあった。
「俺は選手としてはそれなりに活躍した方だったけど、じゃあそれがマネージャーとしても上手くいくとは思ってないんだ。こんな風にノートを持ってるけど、中身はまだ空白でいっぱいだし」
なんなら数ページしか書いてないノートを見せてつけて、残りの空白のページをパラパラと捲った。
「期待はされてるみたいだけど、俺も神払さんと同じ『初心者』だよ。だから、失敗する。断言しとく」
「そこは男らしく見栄を張って欲しいのですが」
「見栄を張って、それで失敗したら元の子もないだろ。神払さんの選手としての将来が関わってるんだ。下手なプライドより、俺はキミの成長を最優先にするよ」
「…………」
そう強く言い切った瞬間、聖羅が体を硬直させて目を見開いていた。普段は怜悧な瞼が今は真ん丸な真紅の瞳が全部見れるほど大きく開かれていて、色白の頬も夕日のように朱く染まっていた。
何かおかしなことでも言ったか、と慌てる颯太に、聖羅は朱に昇る頬を両手で押さえながら言った。
「宮地くんて、意外と男らしいんですね」
「逆に今までなんだと思われたのかが気になるな」
「大人しくてからかい甲斐のある男の子」
「完全に玩具じゃねぇか」
気に入った発言からなんとなくそんな印象は抱いていたが、本人からこうして直接言われるとなんだか不服というか腹が立ってきた。
くすくすと笑っている聖羅に、颯太は辟易とした風に吐息すると、
「とにかく、俺もマネージャーとして至らないことがあると思うから、その時は遠慮なく意見してくれ。俺もそっちの方が助かる」
「分かりました。トレーナーさん」
「トレーナーじゃない。マネージャーだ」
「ふふ。私からすれば十分トレーナーですよ」
また訳の分からないことを、と颯太は肩を落とした。
しばらくは聖羅にからかわれながら練習に励んでいくのだと思うと、胃が少し痛くなった。からかわれた時は練習メニューを増やしてやろうと決めたのは聖羅には内緒だ。
「これから先が思いやられるなぁ……」
「何か言いました?」
「何も、ほら、練習始めるぞ」
「はーい。あ、練習は真面目にやりますからね?」
「聞こえてるじゃねえか」
息を吐くようにからかってきた聖羅に颯太は何秒後かのため息を吐く。
重い足取りで進んでいく颯太の隣を、聖羅は軽快な足取りでついて来る。
トレーナー……ではなく初心者マネージャーと陸上初心者のコンビの足跡は、夕日に赤く染まる大地にしっかり刻み込まれていて――。
―― Fin ――
常日頃から天メソを楽しんだり興味を持って読んでくださる読者様のおかげで総合pv1000を越えました! イエーイ!!
本当にありがとうございます!
Twitterみたくリツイートの分だけアリシアの胸が大きくなる、なんてことをやりたい気持ちもありますが、それをすると後でアリシアに何されるか分からないのでやめときます。
これからも天メソを面白くできるよう邁進してまいりますので、読者の皆様にはどうか温かい目で応援してくださると幸いです。
第二部が作者の予想よりだいぶ長くなりそうなので、ゆったり更新できればいいなぁ~、と思います。
いや、なんか自分でもびっくりしてるんですよね、あれ、まだ半分いってねえな⁉ と。初めの予想としては、話数てきにもう半分くらいきてるはずだったんですが、全然序盤の方でしたw 今は丁度、最初と中間地点の半分くらいですかね。
そんなわけで天罰のメソッド第二部【紫惑の懺悔編】を今後もお楽しみください!
それではまた次回!
追記:なんとか今日も更新できたぜぇ。
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