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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
48/234

第44話 『 悪戯な選択肢 』

登場人物紹介~


宮地颯太 (みやじそうた) 本作主人公。おにぎりの具は、ツナマヨ派。←ツナツナ~

アリシア 本作メインヒロイン。おにぎりの具は、梅干し派。

優良三津奈 (ゆらみつな) 颯太のお姉ちゃん。おにぎりの具は、ツナマヨ派

三崎朋絵 (みさきともえ) 颯太の親友。おにぎりの具は、しゃけ派。 ←シャケヤケ~

倉科陸人 (くらしなりくと) 颯太の親友。おにぎりの具はしゃけ派。

神払聖羅 (かんばらせいら) 美人転校生。未だ謎多き美少女。あにぎりの具は何が好きなのかな?

           ……ツナマヨ派としゃけ派が2つに分かれとる。

【 side颯太 】


 ―― 7 ――


「これは一体どういうことだ」


 放課後。制服姿で陸上部が使用しているグランドに来た颯太は途方に暮れていた。


「宮地くんも呼ばれたんですね」

「あぁ」


 隣に淑やかに佇む聖羅に素っ気なく返すと、彼女は何が嬉しいのか口角を上げていた。

 この反応からするに、聖羅は颯太と一緒に呼ばれたことは知らないようだ。颯太のほうは事前に朋絵から伝えれていたものの、やはりこの組み合わせは未だ不思議だった。

 一応、颯太は隣の美女に問いかけてみた。


「あのさ、神払さんはなんで呼ばれたのか知ってる?」

「いいえ。私はただ伊藤先生から「竹部先生が放課後来てほしい」と言われただけです」

「そっか」


 友達経由の颯太とは違い、聖羅は担任経由で竹部先生から呼ばれたらしい。

 そうなるとますます呼び出された経緯が不明だ。

 颯太には聖羅との共通点なんかないし、そもそも友達というのも怪しい。現状、二人の関係図は『興味の対象』といったところだ。 


「私も気になっているのですが、宮地くんはどうして陸上部に足を運んでいるんです?」


 と脳内であれこれと思考していると、隣から至極真っ当な疑問が問いかけられた。

 颯太は説明するのに躊躇いながら答えた。


「一応、俺は元部員なんだよ。今は辞めて、帰宅部」

「そうだったんですね」

「……理由、聞かないのか?」


 意外にも淡泊とした返事に、戸惑ったのは颯太の方だった。そんな颯太に、聖羅は正面を向いたまま「えぇ」と頷いた。


「その理由を聞くと、宮地くんは困るでしょうから。人の過去に興味はあっても、土足で入り込むのは無礼じゃないですか」

「ごもっともで」


 聖羅の指摘に、颯太は気圧されながら肯定した。

 どうやら彼女には彼女なりの矜持があるようだ。颯太の事情に興味はあるものの、安易に聞こうとするのは自分のポリシーに反するようだ。どうやら、美人は心も立派らしい。

 内心で勝手に聖羅のことを見直していると、ようやく自分たちを呼び出した先生がやってきた。


「おーい。二人とも、待たせて悪かったな!」


 校舎の方から大きな声が近づいてきて、颯太と聖羅はそこで雑談を一度止めた。


「全然待ってませんよ、竹部先生」


 小走りを終えた竹部先生に、聖羅は労うような微笑みを浮かべた。天使を彷彿とさせる慈愛に満ちた微笑みに竹部先生はわずかに頬の肉をたるませるも、そこは体育教師、すかさず精悍な顔つきに戻した。


「ホント、今日は突然呼び出してすまなかったな。特に颯太は」

「いえ、俺のことも気にしなくていいです」


 確かに颯太が着た事で若干部内は喧騒に包まれているが、今気にするのはそれではない。

 颯太は急かすようで申し訳なく思いながらも、早速本題をぶつけた。


「それで、俺たちを呼び出した理由ってなんですか、竹部先生

「あぁ、そうだったな。実は……」


促された竹部先生は一拍間を開けた。そして、腕を組みながらカッと目を見開くと、


「お前たち二人に、陸上部に入ってもらいたいんだ!」

「…………」


 一瞬、何を言われたのか理解できず、二人は揃って疑問符を浮かべた。


「陸上部に入部、ですか?」

「そうだ!」


 先に思考を再開させた聖羅が竹部先生に問い返せば、先生は白い歯を見せて肯定した。

 遅れて、颯太は慌てふためいた声を上げた。


「ちょ、ちょっと待って下さい先生! 俺は、前に言った通り部活には戻る気はないんです!」

「それは分かってる」

「なら、なんで……」


 理解して尚、再び勧誘してきた竹部先生に颯太は難色を示した。途方に暮れる颯太に、竹部先生は「ちょっと待ってくれ、颯太」と声の調子を落として発言を制止させた。


「お前に頼みたいのは選手としてじゃないんだ」

「は?」

「とりあえず、二人とも。先生の話を全部聞いてくれ」

「はい」

「……分かりました」


 竹部先生の指示に、状況をよく呑み込めていない二人はそれが最善だと理解し頷いた。もっとも、取り乱したのは颯太だけであり、聖羅は終始冷静だった。

 大人しくなった生徒二人を見て、竹部先生は「よし」と相槌を打つと、


「まず、俺が神払聖羅さんを勧誘した理由だが、それは簡単だよ。キミはまだ、どこの部活に入るかは決まっていないんだろ?」

「はい」


 おそらく伊藤先生から聞き出した情報だろう。未入部。それに、聖羅は短く肯定した。


「聞くところによると、神払さんは運動神経抜群なんだってな」

「そんなことは……」

「はは。謙遜するな。先生、この間二年二組の体育チラッと見たけど、キミは噂通りの運動神経だったよ」

「ありがとうございます」


 体育教師が感嘆するのだから、聖羅の運動神経は相当なものだろう。当然、同じクラスの颯太もその才能は認知済みだが。

 お辞儀が終わった聖羅に竹部先生は咳払いすると、話を続けた。


「そこでだ。キミのように運動神経が良い生徒が未入部だと、他の部活動の先生が俺と同じように勧誘するんじゃないかと思ってな。キミには申し訳ないが、一足先に勧誘させてもらった訳なんだ」

「なるほど。趣旨は概ね、把握できました」

「分かってくれてなによりだ」


 竹部先生の意図を理解した聖羅は神妙に頷いた。そして、颯太もまた理解する。

 要するに、竹部先生は他の部活動の顧問より早く陸上部を紹介したかったということだ。これから聖羅は友達に部活に誘われることも見越して、言い方に悪意があるが『先生』という立場を利用して彼女を誘ったわけだ。

 しかしそこまで聖羅に拘るのかと疑問に抱いたところで、彼女は挙手した。


「竹部先生のお気持ちは分かりました。けれど、どうして私にそこまで拘るのかが分かりません」


 颯太が抱く疑問を聖羅も抱いていないはずもなかった。

 その疑問に、竹部先生は「簡単さ」と笑って答えた。


「キミには才能がある。陸上の才能が」

「陸上の才能、ですか?」

「…………」


 何を言っているのか理解できない聖羅は首を傾げた。けれど、颯太は先生の言葉の意味を瞬時に理解した。


「颯太も分かるだろ?」

「何が分かるの? 宮地くん」


 それに気づいたらしく、先生は颯太に視線を映した。

 颯太は二人から熱い視線を向けられながら、聖羅に言った。


「神払さんは、女子の中では高身長で長脚なんだ。競技の世界だと、それだけで才能って呼ばれることもある」

「大袈裟では?」

「いいや」


 怪訝そうな顔をする聖羅に、颯太は首を横に振った。


「身長が高ければ走高跳は棒を越えやすくなるし、走り幅飛びは距離を伸ばしやすくなる。神払さんは足が長いから、特に走りには向いてそうだな」

「あら、褒めてくれてありがとうございます」

「今はそういうんじゃない」


 油断すれば揶揄ってくる聖羅をあしらっていると、竹部先生は「その通り!」だと拳を強く握っていた。


「今日の体育で持久走を覗いた時にビビッと来たんだ! その足なら陸上選手として活躍できると!」

「先生、女子の足ばかり見てると捕まりますよ」

「た、たまたまだよ! 毎日見てる訳じゃないから!」


 熱烈にJKの足を見ている変態教師にぴしゃりと一喝を入れると、先生は目を白黒させて弁明した。聖羅は笑っているが、その笑みもぎこちないのとさりげなく一歩引いているので要注意人物リストに入れられたようだ。


「神払せんの勧誘の理由は大体分かりました。……でも、どうして俺までまた勧誘するんですか?」

「お? おぉ、そうだったな」


 とりあえず聖羅の勧誘理由は理解したとしても、やはり颯太まで勧誘したのかが分からなかった。この限りだと、先生が用があるのはあくまで聖羅のはずだが。

 そんな颯太の思惑に、竹部先生は「颯太にはな」と指を鳴らして、


「お前には、マネージャーをやって欲しいんだ」

「マネージャー……ですか」


 なんとも予想外な返答を受けて、颯太は戸惑いながら復唱した。

 何故、自分がマネージャーなのか。そう疑問を抱く颯太に、竹部先生は説明を始めた。


「言っておくが、俺はまだお前には選手として戻ってきて欲しいと思ってる。だが、先生という立場上、生徒に無理強いはできない。けど、このままお前を放っておけば、本当に陸上に興味がなくなってしまうかもしれないのが先生は嫌なんだ。お前には少しでもいい、この世界に関わって欲しいんだ」

「……先生」


 真剣な顔つきで語る竹部先生に、颯太はどうすればいいか分からなかった。

 颯太は一度、先生に頭を下げさせた上で部活の復帰を拒否している。それでもこうして、先生は再び頭を下げている。ただ、颯太に陸上に関わって欲しい一心で。

 そんなに先生の懇願を、また身勝手な理由で拒否することは……颯太も苦しかった。

 アリシアと一緒に時間を優先するか、陸上部に戻るか。

 胸裏の天秤が一方に傾くことはなく、ゆえに、颯太は懊悩した。


「神払さんは、どうする?」


 もし、彼女がここで陸上部に入部することを断れば、颯太も流れに便乗して断ることができる。その場合、竹部先生は確実に落ち込むだろうが。

 縋るように聖羅を見れば、彼女は「私ですか?」と指を一つ立てて唇に当てて悩みだした。

 その数秒後、聖羅は何か妙案でも思いついたかのようにクスリと笑って、答えた。


「そうですね。宮地くんが入部するというのなら、私も入部します♡」


「んなっ⁉」


 まさかの提案に颯太は度肝を抜かれた。


「おまっ……こんな時にふざけてんのか⁉」

「ふざけてませんよ。本気です」


 その悪戯顔は本気で言ってないだろうが! と颯太は内心で強くツッコミを入れた。

 歯切りする颯太に、聖羅は心底楽しそうに言った。


「一人で入部するのは不安だから、宮地くんも一緒だと心強いな♪」

「心強いな♪ じゃねえんだよ! 俺にはやることがあんの!」

「やること? それって何ですか?」

「くっ……!」


 唇に当てた指を今度は頬に押し付けておどけ風な態度をとる聖羅に、颯太は口ごもってしまった。

 そんな颯太に聖羅は「あれれ?」とより邪悪な笑みを浮かべて、


「それは人に言えないようなことなんですか、宮地くん?」

「そ、そうなのか、颯太」

「違います! 断じて違うんですけど……っ!」


 聖羅の誘導尋問を逃れようとして、意識をそちらに返せば、うまく言葉に乗せられた竹部先生が悲しい目を向けてきた。慌てて弁明しようとしても、理由が理由なだけにどう弁明すればいいか分からなくなってしまった。


「どうするんですか、宮地くん」


 聖羅はあの日のように、颯太ににじり寄ってきて、


「一緒に入部するか、しないのか――どーっち?」

「どっちないだいっ、颯太!」


 好奇心に満ちた蛇の眼と、羨望する漢の眼。


「~~~~~っ」


 声にもならない苦鳴を溢しながら、颯太は天を仰いだ。

 そして、懊悩の末、出した答えは――。


「少しっ……考えさせてください」


 一人では勝手に判断してはいけないことだけは理解して、颯太は答えを先延ばしにした。

 かくして、アリシアとの緊急会議が開かれることとなったのだ。

  

 ―― Fin ――




作者が好きなおにぎりはツナマヨです。あにぎりじゃなきゃ納豆巻きが好きです。

最期の「どっちなんだい」のシーン。あれは完全になか○まきんに君を意識してますw 

本当は聖羅に「どっちなんだ~い♡」にするつもりだったんですけどあまりにも彼女とかけ離れているので代わりに竹部先生にお願いしました。


↓↓↓

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