天メソ短編――① 『 アリシアとアイス 』
気分で書いた短編です。
時間軸的には第一部二章 【 超絶美少女VS普通少女 】 の始め辺りです。
この二人イチャついてしかいねぇんだよなぁ。
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「あっちぃ……ッ!」
うなされるように起きて、颯太は額から流れる汗を拭って飛び起きた。
「今何時だ……うげ、一時か」
暗い部屋でスマホを手繰り寄せ、颯太は電源を点ける。眩しさに目を細めながら、時刻を見れば深夜の一時を回っていた。
「暑いせいで変な時間に目が覚めちまった」
もう一度寝ようと試みるも、中途半端に目覚めてしまった意識はもう一度眠ることを拒んだ。それから五分ほど真っ暗な部屋で眠れるかごろごろしてみたが、やはり寝れそうな気配はなかった。
「……アイス」
ぽつりと呟くと、颯太は布団からむくりと起き上がった。こうやって眠れないまま時間を浪費するのももったいない気がするし、この暑さを多少なりともマシにしてくれるならと颯太は早速台所へ向かった。
「あれ、リビングに灯りが点いてる……消し忘れたかな」
階段を降り、玄関を通り越す。廊下を歩いていると、颯太はリビングに光が灯っているのが見えた。そのまま足を進めていくと、テーブルの椅子にちょこんと誰かが座っていた。
それは幽霊などではなく、
「あれ、アリシア? こんな時間に何やってるの?」
この家のもう一人の住人――アリシアに声を掛けると、白い肩がぴくりと反応した。そして彼女は白銀の髪を揺らしながら振り向くと、
「あ、ソウタさん。すいません。少し寝付けなくて。ソウタこそ、どうしたんですか?」
「俺もアリシアと同じだよ。暑くて寝付けないから、気晴らしにアイスでも食べよかなって」
小首を傾げるアリシアの後ろを通り過ぎながら颯太は言った。アリシアの顔を見ないまま冷蔵庫に向かっていく颯太は、アリアシアの「それがですね……」と何か言いたげな声を聞き逃してしまう。
そして、颯太は冷蔵庫の前に立つと、お待ちかねのアイスを冷凍室から取り出そうとした。が、
「あれ、空だ」
「そうみたいです」
冷凍室の中には魚の切り身や氷くらいしかなく、肝心のアイスはどこにも見当たらない。
目をぱちぱちさせていると、横からひょこっと顔を覗かせたアリシアが落ち込んだ顔をしていた。
「実は私もアイスを食べようと思ったんです。でも、私たち今日の買い物ですっかり買うのを忘れていたみたいで……」
「あ。言われてみれば確かに、買い忘れてたな」
スーパーに向かう途中までは確かに覚えていたのだが、道草を食っていたおかげで二人ともまんまと忘れてしまったらしい。
別に今すぐアイスを食べなければ寝られないという訳でもないが、体はすっかり甘くて冷たい物を食べてから寝ようの気分になってしまっていた。概ね、アリシアもそんな感じだったのだろう。
「仕方ない、氷で我慢するか……あ」
と氷に手を付けようとした時、颯太の脳裏にある選択肢が降って来た。
隣でアイスが食べられず落ち込んでいるアリシアに颯太は「あのさ」と語り掛けると、
「アリシア。今から、夜の散歩しに行かない?」
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散歩の目的地はコンビニ。二人でアイスを買いに行くこととなった。往復でざっと十五分くらいだ。
「うわぁ。なんだか新鮮ですね」
「まぁ、この時間は滅多に外に出ないからね」
夜空を見上げながらにぱっと笑うアリシアに、颯太も大袈裟だなと思いながらも微笑み返した。
「それと、この時間は皆寝てるから、なるべく静かにね」
「はいっ。静かに、ですね」
「何もそこまでひそひそとしなくてもいいから」
「? 難しいですね。夜の外を歩くのは」
眉根を寄せるアリシアに颯太は苦笑してしまう。何もそこまで難しい話ではないのだが、地球で生活を初めてまだ間もないアリシアには確かに難しいのかもしれない。
とはいえ夜の景色を満足そうに歩いているアリシアを見て、颯太も誘ってよかったと内心で安堵した。
「お家ではあまり見えませんでしたが、こうやって外に出ると星が綺麗に見えます」
アリシアの金色の瞳は、夜空に瞬く星たちを映していた。無邪気に見つめるアリシアに、颯太は夜空に向かって指を指した。
「あれが白鳥座で、その隣がこと座。二つの下にあれがわし座で、三つを結んだのが夏の大三角」
「ほえぇ、人は星に名前を付けるんですね」
「うん。まぁ、遥か昔の人が暇つぶし感覚で名前を付けたのが始まりらしいんだけどね」
繋がりのない星を結んで英雄や物に例える。三千年前から、人の想像力は豊かだったらしい。
「それじゃあ、あれはゴハン座ですね」
「ぷっ。なにそれ」
「えへへ。面白そうだったので、私も探してみました」
照れくさそうに言うアリシアに、颯太は思わず吹いてしまった。
「アリシアらしくて、俺は良いと思うよ」
天使もまた、人と変わらない想像力を持っている。単に色々な事に興味や感心を惹かれやすいアリシアだからなのかもしれないが。
今も新しい正座を創り出そうとしているアリシアの傍らで、颯太も夜空を見上げた。けれど、見ているのは瞬く星たちではなく、天界と呼ばれる世界だ。アリシアと出会ってから見えるようになったそれは、天使が神の使いとして使命を果たす場所。そして、アリシアの帰るべき場所でもあった。
「アリシアはさ、この町に来て良かったと思ってる?」
「どうしたんですか、急に」
星をなぞっているアリシアにそう問いかけると、彼女は表情を変えた。颯太は、声音を変えず続けた。
「ちょっと気になってさ。やっぱり、早くあそこに帰りたいんじゃないかなって」
アリシアが潮風町で暮らし始めてから約二週間。そろそろ、彼女の今の心境を聞いても良い頃だと思った。
そんな颯太の問いかけに、アリシアは「いえ」と首を横に振ると、
「私は、堕ちた先がこの町で良かったと思ってますよ。町の皆さんは私に優しくしてくれますし、ご飯も美味しくてついつい食べ過ぎちゃいます。海には行ったことはありませんが、時々聞こえてくる波音が好きです。それから……」
くるっとアリシアが振り返って止まった。
「何もない私に、こんなに優しく接してくれる人がいますから」
「――っ!」
颯太に向けられた微笑みに、心臓はドキリと跳ね上がった。あまりに可憐な彼女の笑顔は、夜空に灯るどの星よりも輝いていた。
「そっか。アリシアがこの町を気に入ってくれたなら、良かった」
この心音がどうか彼女に伝わらないように、颯太は必死になって冷静さを装った。
けれど、
「あれ、ソウタさん。少し顔が赤い気が……」
「気のせいじゃないかな」
「いえ、いつもソウタさんの顔みているのでそんなはずは……もしかして、照れます?」
「照れないし。全然照れてないし」
「ならどうして私の顔を見てくれないんですか……ちょっと、ソウタさーん」
こんな夜道でも颯太の変化に気気付くアリシアに驚愕しながら、颯太は顔をのぞきこもうとするアリシアから懸命に顔を逸らした。
「ホント、アリシアといると調子狂うなぁ」
「あ、待ってくださーい。ソウタさーん⁉」
足早に行く颯太の背中を、天使は慌てて追いかけるのだった。
コンビニに行くまでの道のりは今まで一番騒がしくて、けれど、一番楽しかった。
それから、二人はコンビニでアイスを買って、仲良く食べながら家に帰るのだった。
「ソウタさんのアイスも美味しそうですね」
「一口食べる?」
「いいんですか⁉ それじゃあいただきまーす!」
「相変わらず、よく食べる子だなぁ」
「しゃくしゃく。うん、美味しい‼」
満開の笑みは、永遠に尽きせぬ恒星で――。
―― Fin ――
調子いいので三本上げられました。




