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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第一部  【 白銀の邂逅編 】
33/234

第31話 『 キミと描く未来 』 

登場人物紹介


宮地颯太 (みやじそうた) 本作の主人公。アリシアと出会い、独りぼっちの時間を抜け出した。

              アリシアに想いを伝える為、ウミワタリに臨む。


アリシア 本作のメインヒロイン。天界で罪を犯し、処刑された天使。その魂が彷徨った先は地球だ  

      った。そして颯太と出会い、新しい日々を送っていく。颯太の事が好きだがその想いを

      告げられぬまま、聖天使・アムネトに連れ去れてしまった。


優良三津奈 (ゆらみつな) 颯太の幼馴染にしてお姉ちゃん。自他ともに認める美女。颯太の成長

              を見守るのが楽しみだったが、最近は颯太とアリシアの関係性を楽し

              んでいる。


三崎朋絵 (みさきともえ) 颯太の同級生。陸上部マネージャーと。初めは颯太とアリシアの関係

              を認めていなかったが、今は二人のことを応援している。しばらくは

              恋愛はしないご予定。


陸人 (りくと) 颯太の同級生。陸上部所属で顔も良いとのことで女子にはモテる。ただ肝心の朋

         絵には眼中にされてない様子。


宮地勝也 (みやじかつや) 颯太の祖父。既に他界している。強気な性格だが思慮深い良いお爺ち

              ゃん。お気に入りはアロハシャツ。


八峰玄朗 (はっぽうげんろう) 八百屋の店主。町の皆からはゲンさんと呼び親しまれている。


吉江お婆さん 駄菓子屋を営むお婆ちゃん。


宮地悟 (みやじさとる) 颯太の父親。バレーボール選手で海外で活躍していた有名選手だった。


宮地由依 (みやじゆい) 颯太の母親。主演ドラマを何本も持つほどの大女優。存在意義は

             『女優』のみ


アムネト 聖天使の階級に位置する上位天使。地球にいるアリシアを発見し、連れ去った張本人。








 ―― 4 ――


 ――暗闇の世界。体に重力を感じず、ただ、漂っている感覚だけあった。

 何も、聞こえない。

 何も、感じない。


 ――あぁ。俺、死んだのかな。


 人って、こんなに呆気なく死ぬのか。そう思った。

 死んだら、自分はどうなるのだろう。天国に行くのか。地獄に行くのか。それとも、今のように漂っているだけなのか。

 天国に行けるならせめて、彼女を一目だけでも……。

 そんな思考に、ぽつりと、何かが落ちた感覚が広がった。


 ――ん。


 声が、した。


 ――さん。


 それは少しずつ、意識を覚醒させていく。


 ――ソウタさん。


 ――分かってるよ。今、起きるから。


 誰かが呼んでいた。その声が、ずっと颯太が求めていた声で。

 聞くだけで愛しさが込み上がって、大切だと思う感情が溢れ出していく。

 そう思うのは、世界でたった一人だけだった。


「ソウタさん! ……ソウタさん‼」


 混濁した意識が覚醒を迎え、その視界は朧げに涙を流す少女を捉えた。

 切羽詰まった顔の天使――アリシアに、颯太はゆっくりと手を伸ばし、その頬に触れた。


「――そんなに何度も呼ばなくても、アリシアの声なら、ちゃんと聞こえてるよ」

「よかった……目を覚ましてくれて」


 いつかの日と真逆だな、と内心で呟きながら、颯太は小さく笑った。


「一か八かの賭けだったけど、成功してよかった」

「バカ! なんでこんな所まで来ちゃうんですか⁉」


 叱責するアリシアは本気で怒っていた。そんな彼女に、颯太は「そりゃ」と置いて、


「あんな顔見せられて、素直に引き下がる男はいないでしょ」

「だからって……こんな無茶しなくてもいいじゃないですか!」

「他に方法が無かったんだよ……」


 時間的に残された猶予を鑑みた、たった一度きりの挑戦。これを逃せば、アリシアと再会を果たすことは絶たれていたに違いない。

 その賭けとは――


「それで、今更だけど、此処どこ?」


 アリシアの後ろに見える世界が言及するのを忘れさせ、颯太は体を起こしながらアリシアに訊ねる。


「ここはですね……」

「天界と地球の狭間だ」


 アリシアが答えようとした瞬間、そこに低い声が割って入った。

 アリシアの代わりに答えたのは、颯太も因縁深い天使――


「お前、あの時の……アホエト」

「アムネトだ⁉ ……まったく、これだから人間は苦手なのだ」 


 深々と吐息するアムネト。その顔には厄介な乱入者が来たと書かれているのが分った。


「えーと、天界と地球の狭間ってことはつまり?」

「説明すれば長くなりますが、要約すれば、二つの世界を繋ぐ廊下のようなものです」

「おぉ。凄い分かりやすい。成長したね、アリシア」

「えへんっ」


 あのアリシアがこれまでになく分かりやすく説明してくれたことに感慨深さが滲み出したが、颯太はその説明を受けて周囲を見渡した。

 鏡のような水面に、目を覆う程の星々がくるくると回っていた。


「なるほど。だから、こんな幻想的なのか」

「ね、素敵ですよね」


 アリシアがにこりと頷いて同調する。


「ええい⁉ 二人だけの空間に浸るな!」

「なんだ、嫉妬か?」

「ふ、ふざけるな⁉」


 どうやら図星だったらしい。にやつく颯太にアムネトはますます機嫌を悪くしてしまう。


「だいたい! 人間が神聖な我ら天使と関わりを持つこと自体が硬く法で禁じられているのだ! アリシア様は広く心お優しい性格であるから貴様なんぞと懇意にしていただけだ! そもそも! ただの人間で特別な力を持たない貴様が、なぜ、この次元に渡ることが出来たのだ⁉」


 ぜぇぜぇ、と息を荒くしながらアムネトは颯太を指さした。おそらく、彼の疑問はアリシアも抱いているのだろう。この世界に渡れた原理。それは奇跡でしかないが。

 それを説明するのに考えていると、アリシアが珍しく険しい表情を見せていた。


「アムネト」


 たった一言。彼の名前を呼んだけにもかかわらず、直後、アムネトと颯太の顔が強張った。


「貴方の疑問も分かりますが、まずはソウタさんの安全が最優先のはずでしょう。貴方の言葉通り、ソウタさんはただの人間です。その人間が、この空間に居続ければ、その体に何の影響が出るかは分かりません。ならば、知的好奇心よりも天使としての使命を果たすべきではないのですか?」

「も、申し訳ありません⁉」


 威厳。それに近しい圧を醸すアリシアに、アムネトはたちまち委縮した。確か立場はアムネトの方が高いそうだが、これを見ればアリシアが如何に天使として高位ある存在だったかが分かる。

 そんな彼女がどうして罪を犯したのか、気になって仕方がないが、今は胸にしまい込んだ。

 いつか、アリシアから話してくれるまで待つと決めているから。

 数秒の回想から戻り、颯太はアリシアが懸念していることに触れた。


「アリシア。この空間が俺に影響を与えてるかもしれないって言ってたけど……もしかして、実はもう死んでるの?」

「いいえ。ちゃんと生きてますよ。まだ……」

「まだ⁉ え、俺死ぬの?」

「それも含めて、これからある方が全てを決定しに来ます」


 先程から、アリシアはどうも表情が硬かった。見れば、アムネトも落ち着きがなかった。

 颯太だけ状況に付いて行けてない颯太に、アリシアは体をしゃがませると、


「立てますか? ソウタさん」

「あぁ。ちょっとふらつくけど、立てるよ」

「では、立ってください。あ、体が苦しかったら、手を引きましょうか?」

「いや、そこまで心配しなくても平気だよ」


 心配そうに見つめるアリシアに、空元気で答えた。

 立ち上がってから一、二分ほどか。突然、空間が大きく歪み出した。


『――よもや、一度ならず二度も禁忌を犯すとはな、アリシアよ』


 何処からともなく聞こえてくる声がアリシアを糾弾した。それに顔を歪めながらもジッと耐えたアリシアに代わって、颯太が反論しようとした瞬間だった。口が動かなかった。

 体が勝手に反応したのだ。この相手に下手な真似をすれば、命が容易く消えると。

 それにとって人間は疎か、アリシアやアムネトの天使たちですら、己の足元に足る者ではないだろう。全ての生命が、それの手平の上。

 そこに現れたのは、まさしく威厳を体現化した存在だった。


「――神様」

「に最も近しい存在――〝天帝様〟です」


 無意識下に漏れた単語を拾ったのは、隣に立つアリシアだった。


「もう分かっていると思いますが、ソウタさん。くれぐれも、慎重に言葉を選んでください」

「だろうね」


 小声で忠告するアリシアに、颯太は生唾を呑み込んだ。あれに冗談を言う気にはなれないし、そもそも動いていいのかすら分からなかった。

 そうやって身構えている二人とは対極に、アムネトはその雄々しい翼を畳んで凛然とした声音を上げた。


「天帝様。お忙しい最中に申し訳ありません。そして、来ていただいた事へ感謝申し上げます。この度は、私ではとても手に負えぬ事態故、天帝様に助力して頂きたくお呼びしました」


 先程とは打って変わって静粛なアムネト。おそらく、これが本来のアムネトの姿なのだろう。


『それは一向に構わん。が、何故、この場に人間がいる?』

「それは……私にとっても不測の事態でして……」


 言及されて言葉に詰まるアムネト。そんな彼に代わって、颯太は生唾を呑み込んで一歩前に出た。


「アリシアに、もう一度会って話がしたくて来たんです。だから、アリシアとアムネトは何も悪くありません。責任を問うなら俺にあります」

『……ほう。罪科を持つ天使に、もう一度会うために命を投げ捨てるとはな』

「それが俺の覚悟です」


 躊躇いなく言うと、天帝が厳かに顎を引いた。


『なるほど興味深い。が、未だ、理解できぬな。貴様、どうやってこの場へ来れた? アムネト、貴様まさか、天門を開いたまま戻ったわけではあるまいな?』

「そ、そんな失敗は犯しません! 確かに、天門は閉じました!」

『ならば何故だ?』


 神に最も近しい存在といえど、全知全能ではないらしい。そして、それは初めにアリシアとアムネトが疑問を抱いていたものでもあった。


『答えよ、人間』


 天帝から投げかけられた問に、颯太は呼吸を整えて答えていく。


「俺の住んでる町に、伝承があるんです。三百年前から続く伝承で、それにはアリシアと似た女性のことが語られていました。彼女は空から降ってきて、そして、死の間際に海が光を放った。それ以来、その海では毎年その日に海が光るようになったんです」


 それまでは、海が光るのは自然現象だと決めつけていた。けれど今、こうしてあのウミワタリの海に飛び込んだから分かった。


「俺はこれまでずっと、海が光るのは奇跡でも特別な力でもない。自然の現象だって決めつけてた。でも、今日ようやく分かったんだ」

『ほう、何を?』

「この海は……女性はずっと待ってたんだ。何も見えない真っ暗な世界で、誰かが自分たちを見つけてくれるのをずっと待ってたんだ」


 そして見つけたのだ。アリシアを。

 三百年前の伝説となった二人、女性と漁師の残滓を。


『それだけの可能性で、貴様はこの空間に来れたと』

「いいえ。俺だけの力じゃありません」


 天帝が結論を出すも、颯太はすぐに否定した。

 一人だけで辿り着ける道のりではなかった。決して。


「俺を信じてくれて、アリシアを助ける為に沢山の人たちが俺に力を貸してくれました。俺の背中を押してくれる友達がいました。信じて送り出してくれた姉がいました。何よりも、海が、俺の味方をしてくれたから、この場所に辿り着けたんです」

 多くの想いが一つに結ばれたからこそ、颯太はアリシアの隣に立っているのだと、そう思っている。


「だから此処に辿り着けたのは、皆の願いが生んだ――奇跡です」


 颯太自身の想い。町の皆の想い。三百年前の二人の願い。海が味方してくれた奇跡。何か一つでもここから欠けていたのなら、此処には立てていなかった。

 奇跡を語る人間に、天帝の声音はどこか愉快そうに言った。


『天帝を前に奇跡を語るか』

「はい」


 颯太は躊躇なく肯定する。

 天帝は一拍間を空けたあと、


『貴様が奇跡を手繰り寄せて辿り着いたことは称賛に値しよう。だが、貴様が救いたいと願う天使の処遇が何一つ覆されることはない。その紋章が刻み込まれている限り、アリシアは咎者だ。それ故に消滅は免れない』

「――っ」


 酷薄に告げた天帝に、颯太は顔を歪ませた。

 天帝の言葉。それは天界の法であり、この場の権力者ゆえの決定権だ。天帝は自らの世界の法を以てこの場の全員を抑圧させる。


「なら……」


 そんな絶対な権力者を前に、颯太は声を振り絞った。


「アリシアがどう足掻いても死ぬ運命だっていうなら、彼女に選択権下さい」

『なに?』

「貴様⁉ 天帝様の前で何を不躾なことを……ッ」


 ソウタ以外の全員が驚愕した。アリシアとアムネトからすれば顔面蒼白な要求だろうが、荒れる海にダイブすると既に腹を括ってあった颯太からすればこんなお願いごと今更だった。

 そして三者の中で最も早く冷静に返したのは、やはり天帝だった。


『どういうことだ、人間?』


 聞くだけ聞くつもりか、ならばと颯太は言い分を始めた。


「アリシアの魂は、元々天界で消滅するはずだったんですよね。でも、その魂は消滅を免れて、地球に着いてしまった。それはただの偶然かもしれない……それでも、アリシアが地球で生きていたっていう事実は変わらないはずだ」

『なるほど』


 どうやら天帝は、颯太の言いたい事を理解したらしい。さすがは神に最も近しい存在。その慧眼には脱帽する。

 心が見透かされているのならもう、躊躇うことはなかった。


「なら、アリシアはもう、天使じゃなくて人間だ」


 颯太はアリシアをどんな手段でも助けると決めた。例えそれが、彼女を穢すことになっても。覚悟は出来ている。


「人間の権利を奪うことは、誰にもできない。それが例え、神様であってもだ」

『つまり貴様は、天使という存在からアリシアを堕天させようという事か』

「はい」

「貴様ッ、いい加減にしろ‼」


 颯太の暴論に、アムネトが堪え切れず怒号を上げた。天使である彼ならば当然の怒りだ。颯太がすることは、天使からその誇りを奪うことなのだから。


『控えろ、アムネト』

「ですがッ」

『お前の出る幕ではない。貴様ではもはや、この事態は対処不能だ』

「ッ」


 天帝の慈悲のない戦力外通告を告げられ、アムネトはその顔を屈辱に歪めた。その気持ちだけは痛いほど分かりながらも、颯太はアムネトに視線を向けることはしなかった。

 そうして、天帝と颯太は一対一になった。

 真正面から向かい合う天帝の圧は、かつてないほど膨れ上がっていた。気を引き締めていなければ一瞬で意識が駆られそうになる。


『分かっているのか、人間。それが如何に罪科であるかのか』

「そうじゃなきゃ、こんな馬鹿げたこと言いません」


 覚悟はとっくにできていた。アリシアから天使という冠を剥奪しようとしているのだ。それに罪がないほうがおかしい。

 望むのはアリシアの命。対価は自分。


「そんなの嫌です!」

「……アリシア」


 それまで、ずっと我慢していたアリシアが、激情を露にするように叫んだ。

 振り向けば、アリシアの目が雫で潤んでいて。


「私が生きて、ソウタさんが居ない世界なんて嫌です! アナタがいない世界で、私はどうやって生きればいいんですか?」

「みつ姉たちがいるよ」

「嫌です。私は、ソウタさんと一緒に居たい。アナタの傍に居たいんです!」

「ごめん。でも、なにが何でも、アリシアを助けるって決めたから」


 アリシアが手を掴んだ。握られる手の温もりはまるで彼女の感情を伝えるようだった。その熱に、胸が締め付けられる。


『貴様ら、何を勘違いしている』

「「え?」」


 二人の会話に、痺れを切らしたように天帝が声を出した。


「何って……アリシアを助ける為に俺の命が必要なんじゃ……」

『人間一人の命で、天使の罪科が無罪になるはずがないだろう。己惚れるな』

「それじゃあ……」

『人間よ。貴様の願い通り、アリシアに選択肢をやろう』


 天帝の手から、二つの光が伸びた。それはアリシアの左右に止まり、球体となって浮遊した。


『一つは、背負った罪科とともに天使として消滅するか』


 そして、


『もう一つは、天使としてではなく、罪科を背負ったまま人間として生き、生涯を真っ当するか』

「――――」


 それは、アリシアにとって究極の選択だろう。

 天使としての矜持と誇りを抱いたまま死ぬか、堕天し人間として死ぬかの二択。

 けれど、アリシアは迷わなかった。


「私の答えはもう決まっています」


 アリシアが手を伸ばしたのは――


「私が天使でなくなろうと、きっと、私の大切な人はそれを受け入れてくれる」


 伸ばした手が、燐光に触れた。天帝は、沈黙のままその決断を見守っていた。


「私は、もうずっと前から、この人と一緒に生きたかった」


 そして、アリシアが振り向いた。


「こんな私でも、好きなってくれますか? ソウタさん」


 振り向き、満開の笑顔を見せるアリシア。

 そして、颯太の答えも決まっていた。だから、一歩大きく踏み出して――アリシアを抱きしめた。


「当たり前だ。俺も、キミが好きだ。天使じゃなく、アリシアが好きだ」


 あの日、できなかった告白を、ようやく言えた。


「私も、アナタが大好きです」


 強く、愛しい少女を抱きしめた。そして、少女もまた涙を流しながら抱きしめ返した。 


『決まったな』


 二人の行く末を見届けた天帝が、小さく吐息した。


『貴様は、アリシアから天使の冠を奪った罪を、

 アリシアは、天界での罪科を背負ったまま、

 共に地球で生きていくがよい』


 二人はそっと離れていき、そして手を繋ぎながら天帝と向かい合った。


「ありがとうございます。天帝様」

『感謝されるいわれはない』


 頭を深く下げるアリシア。ソウタもまた深く頭を下げた。


「それでも言わせてください。それから、俺は必ず、アリシアを幸せにします」

『――うむ』


 これからどんな困難が待ち受けようとも、アリシアと乗り越えられる。そう思えた。


『貴様……名は?』

「宮地颯太です」

『ソウタ、か。……ふむ、覚えておこう』


 アリシアたちが崇める存在に名を覚えられるのは流石に驚愕だ。思わず、頬が引きずった。


『そろそろ時間だ。いつまでもこの空間にいては、ソウタの肉体が維持できなくなる』


 天帝の姿が霞出した。どうやら、天帝も天界に帰るようだ。


『ソウタよ。これからお前がどんな未来を紡いでいくのか、楽しみに見守っているぞ』

「ッ! はい!」


 最後にそんなメッセージをくれて、天帝の姿は完全に消えた。


「言っておくが、私はお前を認めないからな、人間――いや、ミヤジ・ソウタ」

「あぁ。だったらお前も地球に遊びに来いよ。俺とアリシアはいつでも歓迎して迎えるから」

「ふんっ」


 不貞腐った顔をしながら、アムネトは天帝の後を追うように消えた。

 そして、最後に残ったのは颯太とアリシアだけだ。


「それじゃあ、俺たちも帰ろうか。皆の所に」

「はいっ。帰りましょう」


 手を繋いで、その温もりを感じ合う。生涯、忘れることないこの思い出と共に。

 歩く先は真っ暗な闇の中。それなのに、二人は微笑んだままだった。

 怖くはない。二人だから。

 躊躇いもない。皆が待ってるから。

 この暗闇の先に、未来があると信じて、二人は歩き続けた。

 この物語の結末は――。


『8月16日』


「おい。もう十分だぞ。これ、救出しに行った方がよくねぇか」

「そうですね。海に飛び込んでから、一回も息継ぎの浮上がない。もしかして、中で何かあったのかも……」


 ゲンと晴彦は翠色に輝く海を見つめながら、険しい表情をしていた。船内にも、緊迫が走り続けていた。

 流石に二人は我慢しきれず、救出の準備に取り掛かろうと――した瞬間、怒号が轟いた。


「馬鹿野郎! 大人の俺らが、子ども信用しないでどうすんだ!」

「おまぇ、さっきと言ってることがちげぇじゃねぇか⁉」


 危険だと判断したらすぐに中止する。その約束を自ら反故したことにゲンが反論した。

 胸倉を掴むゲンに、船員――ショウヘイは鷹の目のような鋭い視線を向けた。


「おめぇ。何も分かっちゃいねぇな」

「何だと⁉」


 今にも殴ろうとするゲンに、カツキは言った。


「颯太の目、ちゃんと見てなかったのか」

「どういうことだよ?」


 訳が分からないと困惑するゲンに、ショウヘイはフッと笑った。


「あいつの目。ウミワタリをやった時の勝也さんと同じだった」

「何が言いてぇんだよ?」


 ショウヘイは何かを核心したように、船内の全員に向けて言ってやったのだ。


「つまり、あいつは必ず帰ってくる。必ずな。――ほら、」


 顎をくいっと引いて、ゲンは視線を海に落とした。


「まさか……っ!」


 ゲンは船から落ちそうなほど身を乗り出して、それを見た。

 翠色に輝く海。そこに、黒い何かが蠢いた。しかも二つ。


「本当に、やりやがったッ……颯太の野郎ッ」


 ゲンの瞳から熱い雫が零れた。大粒でボロボロと零れていく。その肩を、晴彦とショウヘイが叩いた。


「「ぷっはぁ―――――ッ‼」」


 海面から顔を出したのは、颯太ともう一人。白銀の天使――少女だ。


「ただいま、皆! 約束通り、アリシア連れて帰って来たよ!」

「皆さん! お騒がしました! ただいま帰りました!」


 約束を果たして帰って来た少年と、その横で満面の笑みを魅せる少女。

 こうして、今年のウミワタリは幕を閉じた。そして、その長い歴史に新たな一ページが刻まれたのだった。

 

                 ―― Fin ――

手がかじかんで上手くタイピングできない⁉

作者の寒さ耐性ゼロの話は置いておいて、いかがだったでしょうか、最終話!

まぁ、厳密には最終話であって最終話ではないんですけどね。ㇸッ

実を言えば、エピローグがまだ残っております! だからここで感想書いてるけど終わった感ない!

なんでしょうね。こう、書き切ったぞー! っていう燃え尽きはあるんですが、改稿作業してるとやっぱ終わった感覚が乏しいんですよね。

あと、しれっとここで明かしますけど、天罰のメソッド、まだまだ続きます!

要するに、ここまでは第一部みたいなものですね! 第二部早く書かなきゃね! 

一応、作者の予定では第四部の構成で考えておりまして、すでに第二部の方は大まかな設定や構成が決まってます。あとは第二部用のキャラ絵とかメインビジュアルとか、その他もろもろ始めなきゃ―って感じです。

なので、天罰のメソッド第一部から第二部までは少し投稿する間が空いてしまいます。なるべく短編とか挟みながら二部の方は書いていくので、しばらく間お待ちください。

そして、ここまで天罰のメソッドを興味、楽しみに読んでいただいた読者の方々。改めて感謝申し上げます。

アリシアと颯太。そして潮風町の皆の幸せをどうぞこれからも見守り続けていただけると幸いです。

ちなみに、第一部完結するまで約一カ月で、アリシアが作中で地球で過ごした時間も一カ月なんですよねー。すげぇや⁉

そんなわけで天罰のメソッド、これから引き続きお楽しみにください! 

                   →次回作にご期待くださいは死亡フラグだからしません。


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