第24話 『 アリシアとハッピ 』
終章前編 【 天使の翼 】
登場人物紹介~
宮地颯太 (みやじそうた) 十六歳の不登高校生。アリシアとウミワタリに行く模様。これで付き
会ってないとか作者骸骨になるんですけど?
アリシア 潮風町でアイドル並みの人気を誇るモノホン天使。颯太とウミワタリに行く模様。良かったねアーちゃん。
優良三津奈 (ゆらみつな) 颯太のお姉ちゃん。プリコネのやべぇ姉ちゃんといい勝負か?
皆忘れてるだろうけど、三津奈には婚約者がいます。は?
三崎朋絵 (みさきともえ) ウミワタリは友達と一緒に行く模様。陸人もちゃんと同伴です。
【 side颯太 】
―― 3 ――
八月中旬。
晴天に恵まれながら、今日から三日間に渡り開催される潮風町伝統の祭り――ウミワタリが始まった。
その活気は、家の中にいても伝わって来た。
「おマツリですよ、ソウタさん!」
早朝から町の騒音が聞こえて、アラームが鳴る前に目覚めた颯太の前に飛び出したのは、すでに身支度を整え終えて祭りにはしゃぐアリシアだった。
目を爛々と輝かせるアリシアに、颯太は欠伸を噛み殺すと、
「おはよう。アリシア。やっぱり、今日は朝から一段と元気だね」
「当然じゃないですか! だって、今日という日をずぅっと楽しみに待っていたんですから!」
颯太の言葉にアリシアは興奮気味に肯定する。
「そんなに待ちきれないなら、ちょっとだけ外にいってくれば? みつ姉とかゲンさん辺りなら、町の準備手伝ってるからわりとすぐ見つかると思うよ」
と何気ない提案をすると、アリシアは右手を颯太の顔の前に突き出した。
「何を言ってるんですか、ソウタさん。私はソウタさんと一緒に行きたいんです。それに、約束したじゃないですか。一緒にヤタイ、回るって」
心外、と言わんばかりに頬を膨らませるアリシアに、颯太は目を瞬かせた。それからすぐ吹き出してしまった。
「ごめん、ごめん。そうだった。一緒に、祭りを楽しむんだもんな」
「はい。なので、早く顔を洗って、歯を磨いて、朝ご飯を食べましょう」
「はいはい」
「はい、は一回でいいんですよ」
「はい。分かったから、押さないで」
「いーやです。ふふ」
小さな両手に背中を押されながら、颯太は身支度に取り掛かるのだった。
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「ソウタさん。ずっと聞きたいことがあったんですけど……聞いてもいいですか?」
「ん? 別に構わないけど、それって祭り関係?」
「はい」
今更祭りに関して何を聞かれるかと眉根を寄せながら、颯太は白米を口に運びながら聞く姿勢を作った。
「今日の『ミコシカツギ』のことで少しだけ……」
「あぁ。神輿担ぎね。あれ? 前にも言わなかったっけか」
「それはちゃんと覚えてます。子どもの部と大人部の二回に分けてやるんですよね」
指を二本立てながらしっかり答えたアリシアに、颯太はさらに眉根を寄せた。
「んじゃ、今更何を聞きたいの?」
「大したことではないんですよ。……ただ、そのミコシカツギに参加できないかなー……と思いまして」
「あー。なるほど」
もじもじしながら答えるアリシアに、颯太は麦茶を飲みながら呻った。
「アリシアが参加することはできなくはないよ。ただ……」
「ただ?」
両腕を組み、颯太は難しい顔でアリシアに教えた。
「昔からの変な風習でさ。神輿担ぎは法被を着てないと参加ができないんだよ。まぁ、祭礼だから当然ちゃあ当然なんだけどね。問題は、アリシアの着れる法被がないんだよなぁ」
「ソウタさんも参加したことはあるんですよね?」
「まぁ、この町の住人だからね。ここの住人は必ず一回、ウミワタリの神輿担ぎに参加することになってる。そして、一回だけで良いんだと思い知らされる。俺は爺ちゃんが生きてる時は毎年参加させられたよ。ハハ」
死んだ目をする颯太に、アリシアはぎこちない笑みを作って続けた。
「そ、それじゃあ、ソウタさんの昔着ていた法被を借りて参加すればいいのでは?」
颯太は「うーん」と天井を見上げた。
「止めたほうがいいかな。俺も最後に着たのは結構前だから。それからはずっと押し入れの中にしまいっぱなしだから、たぶん、埃臭い」
「そうですか……」
残念そうな顔するアリシアに、颯太は申し訳なくなる。アリシアが神輿担ぎに参加したいと前から知っていれば、押し入れから引っ張りだして仕立て直す時間は十分にあったはずだ。
まぁ、法被くらいなら商店街に売っているだろう。店が開いてすぐ買いに行けば、仕立ては無理でも神輿担ぎには間に合うはずだ。
颯太はよし、と机に箸を置いて、
「なら法被、買いに行こうか。店が開いて買えば、神輿には間に合うだろうから」
早速、そんな提案をアリシアにする。しかし、
「いえ! いいんです。そんな無理に用意してくれなくても。これはただの私のわがままなので……」
「わがままって……でも、参加はしてみたいんだろ?」
「それはそうですけど……」
意外なことにアリシアは首を横に振り、颯太は予想外の反応に目を瞬かせた。
戸惑うソウタに、アリシアはぎこちない表情で言った。
「いいんです。今回はやめておきます。また、来年……参加してみようと思います」
「でも……」
いつものアリシアと違って消極的な反応に、颯太は追及するのを躊躇った。
アリシアがやらないのならば本人の意思に従順するまで、颯太は時々こんな風に尻込みするアリシアの背中を押したことがあったが、今日はそれすらもアリシアは拒んだ。
理由を知りたい一方で、アリシアの複雑そうな顔をみて踏み込めない自分がいた。
「あり……」
どうなる訳でもなく、彼女の名前を呼ぼうとした、その時だった。
「お困りみたいね」
「どわぁッ⁉」
声の主は颯太とアリシアの間から。机から頭半分だけ出していたのは不法侵入者――ではなく、みつ姉だった。
そんな突然の来訪者(不法侵入であることは違いないが)に、颯太は驚愕のあまり椅子から転げ落ちた。
「い、いつから居たんだよ⁉」
「二人が法被の件で揉めてるところからかしら」
「は? じゃぁなに、ひょっとして、ご飯食べてる時からずっと居た、ってこと」
「そーね。そういうことになるかしら」
あっけらかんと言ったみつ姉に、尻もちを着いたままの颯太は肩を落とす。
確かにアリシアと法被の件で意識をそちらに集中していた。が、だからといって人ひとり分の気配に気付かないはずがない。いったいどれだけ隠密行動に長けているのだ。
そんな颯太の心情を読み取ったかのように、みつ姉はウィンクして告げた。
「安心して、そこは空気の読める姉らしく、気配を消して二人の会話を聞いてたから!」
「もはや忍者だろ。それ……」
観念したようにため息を吐いて、颯太はみつ姉の無駄な才能を受け入れた。それから、よっと立ち上がると、人のウィンナーをつまみ食いしていたみつ姉に黒瞳を向けた。
「で、話聞いてたみたいだけど、みつ姉、何かいい案あんの?」
「もぐもぐ……ん、まぁ、今日はその為に来たようなものだからね」
「ん? どゆこと」
首を傾げていると、みつ姉は足元に置かれた紙袋に手を突っ込んだ。そして、みつ姉は鼻息を荒くしながら、アリシアと颯太の前にそれを突き出したのだ。
「じゃっじゃーん! これなーんだ!」
「もしかして、ハッピ……ですか⁉」
真っ先に答えたのはアリシアだった。
みつ姉はアリシアに向けて親指を立てると、
「大正解! さっすがアーちゃん。良い子~。ソウちゃんはまだまだねぇ」
「ヒキョウダー。エコヒイキダー」
「そんな力が籠ってない抗議ってあるの……」
颯太にしては珍しく乗ったノリを、しかしみつ姉は頬を引き攣らせて反応に困っていた。
軽く羞恥心を覚えながらも、颯太は咳払いして話を元に戻していく。
「アリシアの為に法被持ってきてくれたのは嬉しいんだけどさ、それ、サイズとか大丈夫なの?」
確か、みつ姉が最後に法被を着たのは中一の時だったはずだ。
「大丈夫よ。ちゃんと、アーちゃんが着られるよう仕立て直しましたから。なんなら、今着て確認してみる?」
「だって、どうするアリシア?」
「えーと、そうですね。着てみたい、です」
恥ずかし気に答えたアリシアに、颯太とみつ姉は顔を合わせる。そして、互いに力強く頷くと、
「よし、早速着てみましょう!」
みつ姉は好奇心で目を輝かせながら、法被をアリシアに渡した。
それから一、二分程度で法被を着終えたアリシアは、頬をほんのりと朱に染めながら、
「どう、でしょうか?」
「きゃー! 可愛いわよアーちゃん!」
「うん。似合ってるよ」
アリシアの普段気慣れない服装に照れている表情も相まって、その可愛さにみつ姉は堪らず発狂。颯太も平常心を装っているものの、内心でガッツポーズした。
「悔しいけど、私が着ていた時よりも可愛いわね。ソウちゃん、いつになったらアーちゃんと結婚するの?」
「みつ姉より可愛いのは確かだけど結婚をする予定はございません。……まだ付き合ってもないんだぞ」
「あらあらー」
「……なんだよ」
軽口にツッコんだつもりが、みつ姉は口元を抑えてにやついていた。
「べつにー。ただ、可愛いとか、まだ付き合ってもない~、なんて、まさかあのソウちゃんが口にするとはねー」
「う、うるさいな」
愉快そうに揶揄ってくるみつ姉に、颯太は歯切れ悪くそっぽを向いた。
「あの、お二人は先程からなにを話してるんですか?」
「なんでもないよ。アリシアの法被がサイズ合って良かった、って話してただけ」
「? それにしては、ソウタさんの顔が赤いように見えますけど……」
「だってよー、ソ ウ タ さん」
「~~~~~ッ! あーもう! 何でもないから! いいから早く朝ご飯食べるぞ! みつ姉、ご飯食べてく⁉」
「食べてく食べてく~」
「それでしたら、みつ姉さんは私の隣がいいです!」
「私もアーちゃんの隣がいいわ!」
「はぁ~。じゃあみつ姉はアリシアの隣で、俺はご飯用意してくるから……納豆用意してやろうかな」
「ちょっとソウちゃん、私これから町内会の人と会議あるんだけど⁉」
「フンッ。さっきのお返しですー」
「アア~。ごめんね、ソウちゃん。さっき意地悪したことは謝るから、だから納豆は許して~」
「みつ姉さん。好き嫌いはダメですよ」
颯太。アリシア。みつ姉。三人は本当の姉弟のように睦まじかった。
そんな和気藹々とした一時を過ごしながら、
ウミワタリはもう始まっている。
―― Fin ――
いやぁ、バイト終わって編集は死にますね!
この場を借りてちょっと作者の生活事情を、あ、いらないって方はどうぞスルーして結構です!
作者さん、実は専門学生なんですよね。加えて一人暮らし! 今二年生で就活真っ最中なわけで、そして卒業制作をしなきゃいけない現状。さらにはバイトもあるので、天罰のメソッドの編集はぶっちゃけ深夜1~2時頃にやるんですよね。幸い、お話自体は既に完成しているので、あとはなろうサイトに上げる為の編集だけなんすが、これが楽しく、大変で、そして眠い! もうとにかく眠い!
天罰のメソッドの編集はぶっちゃけ眠気との戦いでもあるんですよね。
編集が終われば少し休んで次は絵を描く。平日は学校とバイト。休日は編集、シナリオ作りとバイト
と、こうやって生きてるのが不思議な人なのです。あ~あ、壇黒斗みたいにコンテ機能ないかな~っていつも思ってます((笑い
ちなみに、編集の時は作業のおともにリゼロのロングショット流してます。良い曲ですよね!
ここまで完全に作者のミイラ生活のお話でしたが、今時計見て見たら深夜3時回ってるじゃん⁉
ここからは今話のあとがきです。
前回の不穏な空気と打って変わって、今回は賑やかな回でしたね! うん! これこそ終章!
ついに開幕したウミワタリ。その一日目に行われる神輿担ぎ、それにアリシアは参加することが決定しました。どうしてアリシアは唐突に神輿担ぎをしたいと申し出たのか、それは先のお話で明らかになるのでお楽しみを。少なくてすまん!
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