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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第一部  【 白銀の邂逅編 】
25/234

第23.5話 『 夢、天使を蝕み 』

今回は23話と24話の繋ぎです。

【 sideアリシア 】


 ―― 2 ――


 ソウタを好きだと自覚してからも、アリシアはそれをみつ姉以外の誰にも知らせることも相談することをしなかった。


 それはみつ姉に告げた通り、まずはソウタを救うことを優先にしたかったからだ。


 アリシアにとってソウタはたった唯一の想い人。その彼が苦しんでいるのに、自分がのうのうと恋愛感情に浸ることはとてもできなかった。


 もしかしたら、それを理由にこの気持ちから目を背けただけかもしれない。みつ姉に指摘され、胸襟され、それでも尚、アリシアは己が天界で犯した罪から解放されなかった。


 罪科を背負う者に、誰かを好きになることなど許されるはずないのだと。


 でも今日。ソウタから感謝された。


 自分のおかげで心が軽くなったと、力になってくれたと、そう言われた。


 それが、アリシアにとって心の底から嬉しかった。それと同時、決意した。


 ――自分のソウタに向ける恋情を、打ち明けるのはやめようと。


 再び夢を見つけて、そこへ前に歩き出したソウタ。その傍に居られるだけで、アリシアにとっては十分過ぎる幸せだった。ならば、この恋心を想い人に明かす必要はない。アリシアはこれ以上の幸福を望んではいなかった。ましてや、幸せになることなど、望んですらいないのだから。


 どう足掻いても、アリシアが罪科を背負う咎者であることに変わりはない。その罪も晴れぬまま、贖う術も持たぬ者が、幸せになるべき人と共にいるのはおかしかった。


 みつ姉の気持ちには叛くことになるが、これが、アリシアが己の恋心に下した決断だった。


 そしてこの先。ソウタの隣に立つ人が現れた時、自分は彼の隣から消えればいい。そして、あてもなく彷徨い続けるのだ。命尽きる最後の瞬間まで。


その時まではせめて、彼の隣にいさせて――。


「――ッ」


 バッ、と音がなるほどの勢いで掛布団を剥いで、アリシアは荒い息を繰り返した。


 はぁ。はぁ。はぁ。


「また、この夢」


 辺りは暗い。灯りは窓辺から差し込む月光くらいで、自分の白い肌がかろうじて見える。


「今日は、すごく鮮明に見えた。それに、まだ覚えてる……」


 額に滲んだ冷や汗を拭いながら、アリシアは苦痛に顔を歪ませて呟いた。


 この頃、アリシアは同じ夢を見るようになった。それもほぼ毎日。


 初めはうっすらと、起きれば記憶にすら残らない夢でしかなかった。


 けれど、それは日を重ねるごとに鮮明になっていった。そして、たった見た同じ夢。まるで現実に起きているのではないかと錯覚してしまうほど、アリシアの体に深く刻み込まれた。


「違う。あれは、私じゃない。私でも、ソウタさんでもないのに……なのにどうして、こんなに胸が締め付けられるの……ッ」


 夢を重ねるごとにハッキリしていく黒影。それが、アリシアとソウタによく似ていた。


 アリシアを蝕む夢。


アリシアを許さぬ、罪が見せる幻影だ。あれは。

 

 一人の少女らしきものが、少年の手を取ろうとする。けれど、少女が握った手は少年の手からすり抜ける。零れるようにすり抜けて、その手は別の誰かに掴まる。その手に抗えないまま、少女は何処かへ消えてしまう。


 何もない世界で、少女は泣いていた。そして、憎悪した。


 その怒りは、楽しい思い出の全てを忘れてしまうほどに。


 そして、少女は憎悪に身を焼かれるように、死んでいく。


 そんな夢を、アリシアは繰り返し見ていた。


「違う。私は、誰も恨んだりしない。あの人を……憎みはしないッ」


 夢の映像に抗うように、アリシアは奥歯を噛み締めた。


「私は、この世界で生きられる時間を、全力で生きるんだ」


 後悔したくないから。もし別れる日が来ても、最後は笑っていたいから。


 いつまでも、この地球に滞ることはできないとは分かっていた。


 アリシアの魂が消滅していない事実が天界に届けば、おそらく、アリシアは直ちに天界へ連れ戻され、そして今度こそ処刑される。そして、再び魂の消滅を免れるような奇跡は起こり得ない。


 アリシアはまだ、皮肉にも天使のままなのだ。人とは一線を画す存在というのは、どこかで必ず焦点が当てられる。それが、アリシアにとっての最期。


 ソウタの傍にいられるまで、あとどれくらいか。


 数十年後。数年後。数日後――もしかしたら、今日かもしれない。


 たった今消滅するかもしれない。突然別れが来るかもしれない。そんな恐怖を、アリシアはずっと味わっていた。


 ――怖い。怖いよ。


「ごめんなさい。ソウタさん」


 大切な人の名前を呼びながら、アリシアは悲痛の声を。


 せめて大切な人が起きないよう、奥歯を噛み殺しながら。


 苦悶する天使。その腕に刻まれた真紅の紋章――否、烙印。その烙印が何かに呼応するように濃くなっていく。


 果たしてそれが夢の影響か、天使の恐怖からなのか、裁きを下す者が近づいてる合図なのか――あるいは、その全部かもしれない。


 終わりの時が、近づいている。


                ―― Fin ――

今回の話、コメントしづらいなぁ。

なのでしない! というかできない⁉

何気に天罰のメソッドで初めての繋ぎ話ですね。以上! 

それではまた次回!

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