第219話 『 抱える問題と天使の肩もみ 』
無事本日も更新できました。我が命を懸けて天メソは更新してるww
【 side颯太 】
―― 5 ――
「颯太さん、何してるんですか?」
夜。リビングにてノートを広げていると、お風呂から出てきたアリシアがひょこっと顔を覗かせた。
シャンプーのいい香りと湿った白銀の髪が艶めかしく思いつつも、颯太は「んー」と浜返事を返すと、
「記録纏めてるんだ」
「こんな時間まで……ちゃんと休まないとダメですよ」
「ごめん。でも確認しておきたくて」
アリシアに窘められつつ、颯太はノートに視線を落とした。
「これ、ミチカって書いてありますね。今日走ったんですか?」
「うん。試しに何本か走ってもらったんだよね」
入部初日ではあるが、道火から記録を計って欲しいと懇願されたので颯太は道火に100メートルを走ってもらった。
「当たり前だけど、やっぱ昔よりも相当早くなってる」
「ふふふ。流石はミチカちゃんです」
最後に道火の走りを見た時は、たしか中学3年生の夏だった。
全国出場した時のレースもこの間ネットで確認したが、その時よりも道火は速くなっていた。
これならば、顧問の竹部の思惑通り支部大会に出場しても十分な結果は残せると思う。
「うーん」
「どうしたんですか、そんな難しい顔して?」
唸り声を上げる颯太に、アリシアはきょとんと小首を傾げた。
「このタイムなら道火は来週の大会に出られると思うんだけど……」
「けど?」
「枠がない」
声音を落として呟けば、アリシアが「わく?」と眉根を寄せた。
疑問符を浮かべるアリシアに、颯太は「枠っていうのはね」と説明していく。
「陸上は、記録会は選手全員が出られるんだ」
「ふむふむ」
「でもね、大会ってなると出場枠が各学校で3名までって限られてるんだよ」
「なるほど」
相槌が可愛い。
とりあえずアリシアの頭を撫でていると、そんなアリシアはハッ、と目を大きくして、
「もしかして、ミチカちゃん大会に出られないんですか⁉」
「それを検討中なんだよねぇ」
驚愕するアリシアに颯太は深々と吐息を落とす。
生徒が考える問題ではないが、竹部とは遅かれ早かれ相談しなければいけない事案だ。
「道火は100メートルの選手なんだけど、もう枠が埋まってるんだよ。3年と2年で」
3年の方は道火よりわずかに記録が上回っている。2年の方には道火が上回っているが、1年生に枠を取られて揉め事に発展する懸念がある。
実力主義な世界なだけに、内輪揉めも少なくない世界なのだ。現に、道火は中学で一度先輩たちから陰湿なイジメに遭っていた経験がある。
朋絵や陸人がさりげなく気遣ってくれたおかげで、どうにか大事にはならずに済んだが、その時から、道火は別のベクトルで颯太よりも勝負事に厳しさをみせるようになった。
アリシアはまだ、道火のその顔を見た事がないから分からない。
――また揉め事を起こるのは避けるべきだし、道火の立場もある。
一応、手がない事はないのだ。
ただしかし、それを道火が受け入れてくれるかどうか。
眉間に皺を寄せていると、不意に肩に手が置かれた。
「……何してるの、アリシア?」
「頑張り屋さんのソウタさんを労うのが私の務めですので」
振り向けば、アリシアは柔和な笑みを浮かべながら颯太の肩を揉んでくれていた。
どうやら、アリシアなりに颯太を励ましてくれているらしい。
「いっぱい悩んでいいですよ。その分のお疲れは、私がめいっぱい吹き飛ばしてあげますから」
「ふは。ありがとね、アリシア」
「いえいえ。ソウタさんの役に立ちたいだけですから」
それと、とアリシアは継いで、
「皆がハッピーになれる可能性があるのなら、その可能性を模索するべきだと思います」
「ハッピーになれる可能性、か」
「難しいことだとは分かってます。でも、ソウタさんならできますよ」
気がするのではなく、そう力強く言ってもらえると、本当にできてしまう気がした。
天使に背中を押してもらっているから、天使が信じているから、颯太は強く頷く。
「アリシアがそう言ってくれるなら、俺もやれるだけやってみるよ」
―― Fin ――
土曜日休む土曜日休む土曜日休む土曜日休む土曜日休む土曜日休む土曜日休む土曜日休む。
でもちゃんと更新はしないと⁉




