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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第一部  【 白銀の邂逅編 】
22/234

第21話 『 友達だって 』

登場人物紹介~

宮地颯太 (みやじそうた) 絶賛不登校中の本作主人公。釣りは海派だが基本は漁港でしてる。

陸人 (りくと) 第二章でアリシアを学校案内させていた颯太と朋絵の同級生。ようやく出番です。

【 side颯太 】


 ―― 5 ――


 ――天使が過去を知る一方。颯太は珍しくクラスメイトと漁港にいた。


「いやー、まさか、お前があんなに可愛い子と一緒に住んでるとはね。ビックリしたわ」


 釣り糸を垂らしながらケラケラと笑う少年――陸人に、颯太はバツが悪そうな顔した。


「色々、事情があったんだよ」

「ほぉ、それは、それはどんな事情か気になりますなー。……で、いったいどんな?」

「ぐいぐい詰め寄るな。それと教える気はねぇよ」

「えー。なんでだよ。言っても別に問題はないはずだろ。それとも何? 何かの陰謀に巻き込まれてるとか?」

「なんだその中二な発想は。……普通に、説明しづらいんだよ」


 苦虫を噛んだ形相の颯太に何かを察したのか、陸人は「ふーん」と鼻で生返事して、


「ま、絶賛不登校中のお前が訳もなく女の子を連れ込んだのには何かしらの理由はあるんだろうと思ってたけど、ま、今日はいいか。その辺の事情はまた今度聞くわ」

「そうしてくれ」


 と深く言及を止めた陸人の察しの良さに颯太は内心で感謝する。単純に、口で言うには気恥ずかしかった。

 そして、二人は無言になる。くるくると互いに垂れた糸を巻きながら、針先のイソメがいるか確認して、もう一度、海面に向かって投げた。


「ところで、どうして俺はお前と二人で釣りに来てるんだ?」

「すげぇ今更聞くじゃん」

「いや、話題が無くなったなと思って」

「それ思っても口にしないやつだから……」


 言葉通り、無言のまま男二人でいるのは中々に精神的に来るものだった。陸人もそのことは共感していたようで、苦笑を浮かべながら答えた。


「どうしてって言われてもな。約束したじゃんか。アリシアちゃんに学校案内する代わりに、俺とどこでも遊びに行くって」

「そんな約束した覚えないんだが? あと勝手にアリシアをちゃん付けで呼ぶな。捻るぞ」

「イタイイタイ⁉ なにその腕力⁉ 頭潰れる⁉」


 無性にイラっとして、気付けば左手が勝手に陸人の頭を力強く握っていた。涙目で白旗を上げる陸人に辟易としつつ、


「陸部の時といい、この前のこといい、お前は突拍子なく俺と関わってくるよな」

「あはは。なんかお前のことはほっとけないんだわ。なんだろ、構って欲しくなさそうにしてるのに本当は構って欲しい野良犬みたいな感じ?」

「どんな感じだ」


 陸人のよく分からない例えに颯太は深い溜息を吐く。

 陸人は基本、こんな風に快活な性格なのだ。楽観的で人あたりも良い。朋絵のように、友達も多かったはずだ。そんな奴が、どうして颯太と一緒にいるのが謎だった。


「なんかもうどうでもよくなってきた。お前といると時々自分の考えてることが馬鹿らしくなるから不思議だ」

「あれ、俺いまディスられてる? ねぇ、ディスられてる?」

「半分半分だよ」

「なんだよー。俺なりに気使ってやったのにー」

「……何の気だよ」


 拗ねた顔する陸人が異様に気になって、颯太は眉根を寄せた。

 追及する颯太の顔を、陸人はちらっと覗く。一瞥して、空気が変わったことは颯太でも分かった。


「んなもん。お前と朋絵のその後に決まってるだろ」

「本題はそれか」


 ようやく、颯太は陸人に呼びだれた理由を理解した。

 確かに、朋絵から告白された日から時間はそれなり経っている。話を聞くには丁度良い頃合いだろう。


「そういえば、お前もあの日の共犯者だったな」

「共犯者とはまた人聞きの悪い。俺も聞かされたのは当日だぜ? 朝の五時に、いきなり朋絵から電話が掛かってきて、颯太に告白するから、アリシアちゃんを学校案内させてあげて、って」


 寝起きにそれは中々だな、と颯太は内心で苦笑した。


「まぁ、俺も朋絵がお前に告白するって聞いた時点で、協力するって決めてたけど、まさか女の子を学校案内させるのが役目だったとは……噂に聞く絶世の美少女を拝めて最高だったからいいけど」

「今度はこの拳が腹を撃つぞ?」


 軽口を叩く陸人に、颯太は頬をひくひくさせてその軽口を引っ込めた。そして、逸れそうになった本題に舵を戻す。


「とにかく、結果はどうであれ、朋絵はお前に告白したんだろ」

「あぁ。告白、されたよ。あと、その場で返事もした」

「じゃあ、俺的には結果オーライだ」


 告白された日。颯太は己と感情と、そして朋絵の向き合い、その答えも出した。それはきっと、朋絵も同じなはずだ。


「今は普通に、友達してやってるよ。俺よりアリシアとの方が仲いい気がするけど」


 実際、アリシアは今日朋絵に会っているらしい。何をしているかは知らないが。


「なんだ、アリシアちゃんに嫉妬か?」

「嫉妬なんてするか」


 絡もうとした腕を払うと、陸人は不服そうに唇を尖らせる。それから、


「はぁ。颯太くんや。振った相手と仲良く普通に会話できるって、それだけですげぇことだからな? それ分かってるんですかね」

「口調が腹が立つな……分かってるよ、それくらい。だから、朋絵には感謝してる」

「……ならいいけど」


 ふーん、と陸人は曖昧に頷いた。


「とにもかくにも、颯太も朋絵もちゃんと向き合えて俺は良かったよ」

「悪かったな。お前も、一応だけど心配してくれたんだろ」

「馬鹿野郎。一応じぇねえや。こーんくらい心配したわ!」


 竿を置いて、陸人は両手いっぱい振って答えた。それが何だか可笑しくなって、颯太は小さく笑った。そして、陸人はいつになく真剣な口調で言った。


「俺は、中学からずっとお前ら二人を見てきた。……いや、正確には朋絵の方を見てたかな。だからさ、報われて欲しかったんだよ、朋絵には。結果や形がどうであれ、中学から抱き続けてきた恋心が、中途半端に終わって欲くなかったから」


 語る陸人の顔に、颯太は咄嗟に朋絵があの日見せた表情を似重ねてしまった。

 中学から朋絵を見続けて、彼女の恋心を応援する、その姿勢は、朋絵が颯太に告げたものと同じで。

 五年を経てようやく、颯太は陸人のそれに気づいた。――否、気付けた。


「そうか。お前、朋絵のことを……」

「あぁ。好きだよ」


 躊躇なく、陸人は堂々と言い切った。

 陸人がいつから朋絵に恋心を抱いていたのかは分からなかった。中学、高校、それだけの付き合いなのに、気付いたのは今になってようやくで、颯太はいかに周りを見てこなかったか思い知らされる。


「陸人、その、わるか……」

「おぉっと、謝るのは無しだぜ。颯太くんよ」


 頭を下げようとする颯太を制止したのは、他ならない陸人だった。


「どうせ、自分のせいで俺が朋絵に告白チャンスがなかったとか思ってんだろ」

「うっ」


 図星だった。口ごもる颯太に、陸人は「ふざけんな」と頭を軽く叩いた。


「さっき言ったろ。俺は、朋絵の気持ちを応援してたんだ。朋絵がお前に告白するまでは、俺も朋絵に告白しないって決めてた。これは自分勝手に決めてたこと。だから、お前が謝る筋合いはない」

「――――」


 陸人は言った。チャンスはいくらでもあったと。颯太が不登校になってから、落ち込んでいた朋絵に寄り添って、そのまま告白することができた。それでもしなかったのは、朋絵の恋路を邪魔したくなかったからと、朋絵に告白する勇気がなかったからだと。


「それも今日までだ。こうやってお前と釣りをしてるのは、朋絵がお前と向き合ったように、お前が朋絵に向き合ってくれたように――俺も、向き合わなきゃならないものを確かめる為だったんだから」

「向き合う……何にだよ」


 問いかけると、陸人はニカッと笑った。


「そんなもん、俺が朋絵に告白することに決まってんじゃん!」

「――――」

「残りの高校生活で、俺は全力で朋絵にアプローチする! 今年の夏に告白することは無理かもしんないけど、けど、俺は高校卒業までに絶対、朋絵に告白するからな!」


 無邪気に笑ってVサインを見せる陸人に、颯太は呟いた。


「そっか。頑張れ」

「…………」

「? なんだよ」


 目を瞬かせる陸人に、颯太は訝し気な顔をした。


「お前が誰かを応援するようになったとか信じられないわ。何か悪いものでも食ったか?」

「なんだムカつく心配は。俺だって普通に誰かを応援したりするわ」

「嘘つけー。前の颯太だったらそんなことぜぇったいにしないね」

「言い切るなよ」


 ぽこっと、陸人の頭を殴って、陸人はわざとらしく「いてっ」と言った。


「はー。やっぱ、颯太色々変わったわ。マジで不登校中に何があったん?」

「特に何もない。強いていえば、アリシアの面倒を見てたくらいだよ」

「なるほど。つまり、颯太を変えたのはアリシアちゃんか」

「――そうかもな」


 素直に肯定する颯太に、陸人は面食らった顔で「ホント何があった?」と呟いていた。

 思い当たる節がいくつもありすぎて、颯太はそれが何故か嬉しかった。

 どんな出会い方であれ、アリシアと出会わなければ、颯太は今、こうして陸人と話してすらいなかったと思う。朋絵の告白も、きっと受け止めることができなかっただろう。


「ま、諸々含めて、颯太が元気そうでよかったわ。最後にお前見た時、死んでたからな」

「言い過ぎだろ」

「いや、これはマジよ。死体が歩いてる感じだった」

「普通に怖いだろ、それ」


 陸人がお化けの真似をしながら冗談交じりに言う。それを、颯太は笑って受け流した。

 こんなくだらないことで笑えるようになった。昔の自分だったら、たぶん笑っていないだろうと、今の自分と比較して気付く。

 辛いことを乗り越えられた訳ではない。まだ、胸には大きなしこりが残ったまま。それでも、笑えるくらいには、確かに元気になった。

 これが誰のおかげかは、もう分かっているから――。


「颯太」

「なんだよ」


 不意に名前を呼ばれて、颯太は陸人に顔を向けた。

 呆けた顔をする颯太の胸に、トン、と陸人の拳が当たった。


「お前の中の悩みとかが全部解決したらでいいからさ、そしたらまた学校来いよな。俺たちはいつでも、お前を待ってるから」

「――――」


 胸に当たる拳の熱が伝わる。

 陸人たちは、本気で宮地颯太の帰りを待ってくれているのだ。

 その想いに、颯太は応える。


「そうだな。気が向いたら、行くよ」

「おう。待ってる」


 にしし、と陸人は屈託なく笑った。

 それから、二人はまた釣りを楽しんだ。

 結局、その日は魚が釣れることはなかったが、颯太は清々しい気持ちだった――。


                 ―― Fin ――


やぁっと! Twitterサイトに飛べるようにできました!

作者の成長は後にして、天めそ第21話、いかがだったでしょうか。

今回は新キャラ、陸人の初登場回になります。まぁ、何話前にはすでに名前は出てきているんですけね。しかーし、こうしてちゃんと登場したのは初めて!

今後、朋絵と陸人のこともしっかり書きたいなぁ、と思いながら、まずは不登校少年くんと白銀モノホン天使ヒロインちゃんの物語を書き切らなきゃ、ですね! ……先が思いやられる二人だわ。

そんな訳で天罰のメソッド、次回も宜しくお願いします!

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