第15話 『 颯太。あなたのことがずっと、ずっと好きでした 』
登場人物紹介
宮地颯太 (みやじそうた) 本作の主人公。アリシアを探して辿り着いた先は――
アリシア 前回行方不明になってしまったメインヒロイン。いったいどこいるの?
三崎朋絵 (みさきともえ) どこにでいるような普通の女子高校生。そんな彼女は、今日一大決心
を――。
【 side颯太 】
―― 10 ――
――数カ月ぶりに歩くこの道筋は、なんとも言えない奇妙な感覚だった。
木影に覆われた道路は立ち上る太陽すら覆い隠してその顔を拝ませない。久しぶりに味わう静謐な空気感は、颯太の覚悟を静かに後押ししているように感じた。
一歩、足を踏み入れるたびに、この山の上にある高校に通っていた思い出が蘇ってくる。楽しくない思い出ばかりのはずなのに、颯太の記憶には鮮明にそれがあった。
「登下校は当たり前だけど、部活の練習でも使ったっけ」
今思えば、地獄のようなメニューだったなと思う。なにせ、カーブのある急こう配な坂を何往復もするのだから。坂道のダッシュは慣れている颯太ですら悲鳴を上げるのだから、他の部員たちは相当だっただろう。
「あと、二人ともたまに登校したよな」
部活がオフの日に時々、朋絵ともう一人、同じ中学からの付き合いの陸人とこの坂道から教室まで行くことがあった。陸人とはごくたまにだが、朋絵とはよく一緒に登校したなと、そう今になって思い出す。
――本当に今更だ。
振り返ってみれば、彼女はずっと――それこそ白銀の少女よりも前から颯太の隣にいたはずだった。それを、颯太は今日に至ってようやく理解した。
木影が覆う坂道が終わり、木洩れ日が増す校門へと進んでいく。そのまま体育館を通り過ぎ、グランドを抜けた。
そして、目的となる場所の一歩手前。颯太にとっては最も思入れのあるグラウンドの前で自然と足が止まった。
「思ったより、感動はないな」
思入れ、といっても、颯太にとってはただの練習場だ。ここで日が暮れても練習してた記憶があるが、哀愁のような感情は涌くかといわれれば首を横に触れる程度の懐かしさだ。それでも、このグランドで、選手として努力していた事実は変わりない。
「――行くか」
そんなグランドとも早々に別れを告げて、颯太は今度こそ足を止めず待ち人がいるである場所に向かっていく。
そして辿り着く先。颯太はひとつ息を吐く。周囲に人の気配はないが、颯太は核心めいた予感に導かれるまま――目先の扉に手を掛けた。
「ふぅ」
ゆっくりと、扉を開いていく。暗い空間に光が注がれていき、そこは少しずつ全貌を現わしていく。
そこは、陸上部の倉庫だった。
距離を測るメジャーに、赤い三角コーン。ハードルやスターティングブロック。メディシンボールにトンボ――その部屋を埋め尽くすほどある、競技用と整備用の道具たち。
そんな道具に溢れた空間で一つだけ、真ん中に佇む異質な影を黒瞳が捉える。
開き切った先。そこにはいたのはやはり――
「まさか、こんなバカなことしでかす奴がいたとはな。本気で焦ったわ――三崎」
倉庫の中で待ち人を続けていたのはアリシアではなく。颯太の同級生――三崎朋絵だった。
颯太の言葉に、朋絵は背中を伸ばしながら、
「待ちすぎて、くたびれちゃった。ここ、埃臭いし長く居たくないよね」
同意を求める朋絵に、颯太はハッと鼻で笑った。
「だったら、もっと別の場所で良かっただろ。――アリシアを利用して、俺を此処まで引っ張り出すとはな」
「だって、こうでもしなきゃ颯太、いつまで経っても学校に来ないでしょ」
「だとしてもやり方ってものがあるだろ。姑息すぎるんだよ」
「男の気を引くには女はこのくらい強引でいい、って恋愛雑誌に書いてあったけど」
「その雑誌、絶対男心無視してるだろ」
「そうかな。あたし的には、颯太が作戦通り来てくれたから意外と信じそうなんだけど」
「やり方が強引過ぎるんだよ。見ろ、汗でぐしょぐしょになった俺の服を」
「うえぇ。キモ」
まだ乾ききっていない汗で濡れた部分を見せつけると、そうさせた張本人は本気で顔を引き攣らせていた。
颯太は不服そうに顔を歪めたが、一度目を伏せると表情を引き締め直す。
「――それで、アリシアはどこだ」
朋絵の戯言を強制的に切り上げ、颯太は険のこもった声音で朋絵に問いかける。
その問いかけに、朋絵は呆れた風に嘆息したあと、「やっぱりか」と小言を漏らした。
「安心して。今はあの子、学校探検中だから」
「一人でか?」
「そんなはずないでしょ。陸人が案内してくれてる」
ひとまず、アリシアの無事が確認できて颯太はほっと胸を撫で下ろす。
「あいつ。アリシアに変な真似しないよな」
「陸人は節操無しじゃないから大丈夫だよ。それくらい、颯太だってわかるでしょ」
「どうだか。数カ月会ってない間に、見境なく女に飛びつく男になってる可能性はあるだろ」
「あはは。それはウケるね」
「どこがだよ」
お腹を抱えて笑う朋絵に颯太は苦笑。
時間にしてわずか数秒。片手で足りるくらいの秒数の間だけ、二人は確かに〝友達〟と呼べる空間にいた。
けれど、颯太は本題を伸ばすつもりはなかった。だからこそ、真剣な顔つきで朋絵と向き合った。
「学校の……というより、部活の倉庫に俺をおびき出したのは、何か話があるんだろ」
「そういうとこは気付くんだ」
感心したような、けれどどこか寂しそうな顔をする朋絵。そんな朋絵に、颯太は首を横に振った。
「いや、ずっと考えてたよ。ここに来るまで、ずっと。お前が何を思ってるのかを」
「そっか。それは、うん。ちょっと嬉しいかな」
はにかむ朋絵に、颯太は此処に来るまでの道程を振り返った。
何人かに聞き込みをしていく中で、アリシアに道を聞かれた人たちが数人いた。聞けば、アリシアは『私の大事な人の友人が、その人と話をしたいそうなんです。私はそのお手伝いをしに行くんです』と誇らしそうにそう言っていたそうだ。
アリシアの想いを人伝から聞き、颯太は朋絵と向き合う決意をした。
けれど、三崎朋絵がどうしてここまで宮地颯太に固執するのかは、この瞬間でさえも結局分からないままだった。
朋絵と颯太は中学からの付き合いで、同級生で同じ部活の部員。それ以上の関係はないはず。
朋絵にとって自分は――。
「お前が俺に何を思ってるのかは、考えたけど分からなかった」
「――――」
「だから、教えて欲しい。お前に……三崎にとって俺は、いったい何なんだ」
黒い瞳と茶の瞳が真っ直ぐに見つめ合った。
恋人というにはひどく距離が離れ過ぎていて、友達というにも曖昧な距離感の二人。
この関係の答えを、颯太は知らない。けれど、朋絵だけは知っている気がした。
だから、朋絵だけが答えられる。
颯太の意識は今、眼前の少女――三崎朋絵という女の子一人だけに注がれていた。
その一瞬だけが朋絵にとっては堪らなく嬉しくて、けれど同時に、ものすごく胸が締め付ける。
颯太の意識にいる朋絵はあくまでこの瞬間だけで、これが終わればまた、あの少女に戻ってしまうのだ。手放したくないのに、朋絵は決断しなければならなかった。
三崎朋絵という【普通少女】は、宮地颯太の一瞬にはなれても、延々にはなれない。
――やば、心臓。すごいドキドキする。
早鐘を打つ心臓の鼓動。緊張で手が震えはじめる。吐く息が熱い。喉が震えて、思うように言葉が出てこない。
見つめ合う視線を、朋絵は自ら切り離した。瞼をそっと閉じると、暗い世界を古びた木の匂いと白線引きの粉の匂いが満たしていく。
呼吸を整えて、拳を震えが消えるくらい強く握って、そして、ゆっくりと瞼を開いていく。
颯太は、朋絵が目を閉じている間もずっと、真っ直ぐに見つめてくれていた。
それだけ、この決意が報われた気がした。
朋絵は颯太に儚い笑みを浮かべて、告げた。
「決まってるじゃん――颯太が好きだからだよ」
朋絵の告白に、颯太は息を呑んだ。
「――――」
衝撃と困惑。両方の感情がないまぜになって、喉の奥に言葉を詰まらせる。
「なんで、俺のことなんか好きなるんだ」
ようやく発せた言葉は、朋絵の告白に対する疑問だった。
「やっぱり、颯太ってそういう人だよね」
普通ならそんな返答に怒っても当然なのに、朋絵はやれやれとため息を吐いた。
「まぁ、分かってはいたよ。颯太の目にあたしは映ってない、ってことは」
「――――」
返す言葉がなかった。颯太が朋絵をちゃんと見たのは今日だったのだから。
未だ呆然とする颯太に、朋絵は構わず続けた。
「でもね。それでよかったたんだ、あたしは。颯太のカッコいい姿を近くで観れるだけで充分だったんだよ」
「ならどうして、このタイミングで告白したんだよ」
「色々あったよ。もっと仲良くなってからにしようとか、颯太が大会で優勝した時にしようとか、卒業式まで取っておこうとか……もうずぅっと考えてて、この気持ちに蓋をしようとしてた」
「――――」
「でもね。一番の理由は……」
朋絵がゆっくりと近づいて、颯太の黒瞳を覗き込んだ。思わず心臓の心拍数が上がる。そんな颯太の胸の内を知らない朋絵は小さく笑って答えた。
「悔しかったんだよね。あの子に颯太を取られるのが」
「あの子って……アリシアのことか」
「そうそう。アリシアちゃんに」
朋絵の言葉に、颯太は即座に脳裏にアリシアを思い浮かべた。迷いもなくその名を告げると、朋絵は「羨ましいな」と小さく溢す。
けれど颯太は、朋絵の指摘を否定した。
「何回も言ってるけど、俺とアリシアはそんな関係じゃないから」
「でも、颯太にとって特別であることに変わりはないでしょ」
「…………」
今度の指摘は否定できず、颯太は頬を硬くした。
もう何度も、アリシアとの関係は頭の中で考えて、そしてゲンさんとのやり取りで核心した。
そんな颯太の胸中を見透かしたかのように、朋絵はゲンさんと似た言葉を放つ。
「颯太がアリシアちゃんを大事だと思っているのは、もう誰が見ても分かるんじゃないかな」
「何も知らない陸人が見ても、か」
「たぶんね。それくらい、今の颯太は変わったから」
昔と今の自分がどれほど変わったかなんて分からないけれど、以前の颯太が周囲と壁を意図的に作っていた。なるべく深く人と関わらないようにするために。
けれど、それはアリシアにも同じはずだった。その壁を壊す力が彼女にあっても、颯太は距離だけは保っていた……はずだった。
けれど、朋絵からすればそんな壁はないものと同じようで。
「自覚無し男だなぁ、颯太は。颯太が思っている以上に、今の颯太、性格が柔らかくなってるよ」
「三崎視点からはどれくらいだ?」
「うーん。体育で使うマットから、高跳びのマットくらいには柔らかくなってるね」
「相当柔らかくなってるな」
朋絵の引っ張り出した表現に思わず苦笑してしまった。そんな顔に、朋絵は指を指して、
「今だって、昔の颯太なら笑いもしなかったよ」
「マジか」
「マジ。大マジだよ」
それはずっと見てきた朋絵だから分かる違いなのか、それとも、周囲が見ても一目で分かる違いなのか。おそらく、後者だろう。
それは、颯太にとっては小さな自覚だった。
「やっぱり、あの子のおかげなんだろうね」
「たぶん、そうなんだろうな」
二人の脳裏には同じ少女が浮かび上がっているはずだ。
きっと、颯太はアリシアが居なかったら朋絵とこうして向き合うことはなかった。それ以前に、もう誰とも正面から向き合うことを諦めていたはずだ。
そんな颯太を変えたのは、たった一人の天使だ。
颯太の脳裏に強くアリシアが思い浮かびると同時、朋絵の穏やかな声が告げた。
「だからね、颯太の心があの子で埋め尽くされる前に、あたしは言いたかったんだ。あたしがずっと、颯太に抱いていたこの気持ちを」
朋絵は続けた。
「あたしさ、颯太のことが気になったの、中学入ってすぐだったんだ。当時から颯太、ものすごく近づき難い空気だったから、どうすれば颯太に近づけるか考えたの。それで、陸上部に入ったんだよね」
「そんな理由で入ったのかよ」
朋絵は「いいじゃんか別に」と口を尖らせた。
「まぁ、入っても話す勇気なかったから意味なかったんだけど、でも、クラスも運良く三年間同じで、あたしなりに頑張って声かけたりして……三年間でそれなりに颯太と関係を築けたと思った」
「――――」
「高校に入っても同じクラスでさ。あたし、内心飛び上がるほど嬉しかったんだよね。また颯太と一緒だ、って」
思い返す。確かに、あの時の朋絵は意気揚々と近づいていた気がした。
「中学では選手として颯太を見てたけど、今度はもっと颯太の近くにいたくてマネージャーを選んだよね」
「そんなことの為に」
呆れる颯太に、朋絵もまた失笑する。
「あはは。ホントそれ。我ながらに馬鹿だと思うわ。でもね、後悔はしてないよ。選手として活躍する颯太を支えたい、って本気で思ってたから。皆と練習するのも楽しいしね」
少し笑ったあと、朋絵の顔から余裕が無くなり始めた。
「颯太を支えたくてマネージャーになったのに。なのに……あの日、あたしは颯太を助けられなかった」
「……三崎」
朋絵の声が上擦りだす。
「あの日から、颯太が変わって、だんだんと部活にも来なくなってさ。学校にも来なくなって、その理由をあたしは知ってたはずなのに……ッ……なのにもできなかったッ。颯太を誰より近くで見てきて、支えたいと思ったのに……ッ、あたし……颯太の苦しみに……近づけなかったんだよ……ッ」
声は嗚咽が混じり、朋絵の瞳から涙が零れ落ちていく。
「颯太のこと……好きだったのに……理解、してあげられたかもしれないのに……あたしは結局……じぶんのことばかりだった!」
吐露されていく激情は、朋絵が颯太に抱いていた〝罪悪感〟なのだろう。
あの時、助けてあげられたかもしれない可能性。その可能性を自ら捨ててしまった負い目が朋絵に涙を流させているのなら、それは朋絵の間違いだった。
「本当に、バカなやつだな、お前は」
呟くと、颯太は泣きじゃくる朋絵の頭をそっと手を置いた。
「お前は俺を見ててくれたんだろ。なら、変に負い目なんか感じるのやめろよ」
「でも……ッ、あたしが支えられなかったせいで……颯太はッ……ずっと苦しんでて……ッ」
「苦しいかないかで言われれば、そりゃ、苦しかったさ。でも、それはもう過去のことだ。今はなんとも思ってない」
「……うッ……ひぐっ……」
泣き止まない朋絵に、颯太は語り掛け続ける。
「それに、お前が俺のことをこんなにも気に掛けてくれてたんなら、俺はそれだけで救われるよ」
「うっ……うっ」
「だからもう、泣くの、やめろよ」
大粒の涙を、颯太は優しく拭っていく。朋絵の傷を拭うように。
「ごめん……颯太。今までごめん」
「なんでお前が謝るんだよ。むしろ、俺のほうが謝りたいくらいだ」
「うん。うん……うんッ」
「ああもう、鼻水まで垂らすなよ」
「止めるからぁ。泣くのも、鼻水も……だから少しだけ待ってよ」
「わーってる。泣き止むまで、ちゃんと待っててやるから」
拭っても拭っても、大粒の涙は止まない。
止め。止め。涙よ、止んでくれ。
朋絵は必死に涙を掻き分けた。カッコいい人に、カッコ悪いところは見せたくない。
ようやく泣き止んだ頃。視界に映る颯太は呆れたような笑みを浮かべていた。
「どんだけ泣くんだよ」
「カッコ悪い所、颯太に見せちゃった」
「気にすんな。女はそういう所が魅力的なんだろ?」
「ぷっ。なにそれ」
沢山泣いた朋絵の目は赤くなっていて、目頭も擦り過ぎのせいか晴れていた。でも、嗤う顔は何か吹っ切れたように見えた。
「おし。泣き止んだな」
「うん。すっきりした」
朋絵は深呼吸して、再び颯太に向き合う。
「なら、今度はちゃんと、返事させてほしい。お前の気持ちに応えるから」
「――ん」
颯太の真剣な声に、朋絵は小さく頷いた。
そして、朋絵は一歩後ろに下がった。
颯太もまた、息を整えて、胸を張る。
ずっと、颯太は朋絵から逃げてきた。けれど、今は違う。
朋絵の胸襟を知り、自分をどれだけ想い続けてくれたのか、それに気付けたから。
宮地颯太は真っ直ぐに、眼前の女の子の想いを受け止める為に、向かいあった。
そして――
「颯太。あなたのことがずっと、ずっと好きでした」
「ありがとう。そして、ごめん。キミの気持ちには、応えることはできない」
今まで傍にいてくれた少女の告白に、颯太は真正面から受け止める。そして、誠意を尽くして返した。
深々と頭を下げる颯太。その正面から、笑い声が聞こえてくる。颯太はゆっくりと顔を上げると、朋絵の目には小さな涙があった。それは決して悲しみの雫ではなくて。
「やっぱり、颯太には似合わないね。真面目な空気」
「ちゃんと返事したのに、すげぇ失礼だな。みさ……朋絵らしいけど」
「っ‼ ……でしょっ」
朋絵の笑顔に釣られて颯太も小さく笑う。そして、朋絵は表情を元に戻すと、
「はぁ、満足、満足。ありがとね、颯太。あたしの気持ちにちゃんと答えてくれて」
「爺ちゃんに言われたからな。女の返事にしっかり答えを出せない奴は男じゃねえ、って」
「そっか。じゃあ、颯太のお爺さんにも感謝しないとね」
「そうしてくれ」
「――行くんでしょ」
「あぁ」
主語はないが、颯太は頷いた。
「だったら、早く迎えに行ってあげないと、あの子……アリシアちゃんを」
「そうだな。早くいかないと、野獣の毒牙に掛かりそうだからな」
「アリシアちゃん。純粋だもんね」
「そうなんだよ。おかげで、すげぇ心配だ」
「頑張れ、颯太」
「朋絵もな」
「うん。頑張る」
「じゃあ、行くわ」
「ん。そうだ、背中、押してあげようか」
「いや、いいよ。一人で進めるから」
「そっか」
颯太は朋絵に背中を向けた。
走り出す寸前、颯太は足を止める。
「そうだ、朋絵」
「なに?」
「家に来たくなったら、いつでも来いよ。アリシアも会いたいと思うし、俺も、友達として待ってるから」
「…………っ」
その言葉に、朋絵からの返事はなかった。それでいい、そう走り出そうとした時、朋絵が声を上げて言った。
「なら、明日……明後日! 絶対に行くから! 颯太と、アリシアちゃんに会いに!」
思わず笑みが零れた。颯太は振り返ると、
「あぁ、来い! アリシアが楽しみに待ってるよ」
「颯太は楽しみじゃないんだ」
「言わせるな、アホ――またな」
「うん。またね」
走り出す。もう振り返ることはなかった。
大きな泣き声が、ずっと後ろから聞こえていた。
―― Fin ――
朋絵の告白会! いかがだったでしょうか?
諸々の裏背景はあとに。まずは颯太にちゃんと気持ちを伝えられた朋絵に頑張ったねと褒めてあげたいですね。颯太も、朋絵と初めて向き合って、告白を受け止めた。お互い、結果は分かってはいたけれど、それでも思いの丈を相手に伝えた。いやホント、作者も二人を見習わなきゃですね。トホホ。
朋絵という普通少女は颯太の隣には立てなかったけれど、今度こそちゃんと、友達になれました。
颯太も朋絵を友達と思ったからこそ、最後に三崎から朋絵と呼んだんですね。尊み秀吉やぁ。
次回が二章の本当のラストになりますが、お話としては二章『白銀少女VS普通少女』は無事幕を閉じました。読者の方々、ご拝読。誠に感謝申し上げます。(土下座
そして、天罰のメソッド。pixivにも公開されていますが、そちらも今日で最終回となります。
二人が下した決断。その行く末をどうか見届けていただけると作者冥利に尽きます。
本サイトには変わらず毎日投稿していくと思いきますので、こちらで最終回を読みたいという読者様にはもうしばらくお楽しみにお待ちください。
それでは天罰のメソッド。引き続きご拝読のほどよろしくおねがいします。
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