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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第一部  【 白銀の邂逅編 】
12/234

第11話  『 三崎朋絵 』

登場人物紹介~

宮地颯太 (みやじそうた) 潮風第一高校に通う二年生。現在は不登校中であり、その原因は不明

              のまま

アリシア   天界から追放された天使。颯太を見つけた矢先に修羅場に立ち会ってしまって。。。

三崎朋絵 (みさきともえ) 陸上部マネージャー。茶髪の髪と腰に巻いたジャージが特徴的な女の 

              子。颯太と因縁があるらしいが?

【 side朋絵 】


 ―― 6 ――


 ――最近、颯太が女を連れて遊んでいると、朋絵は休み時間に小耳に挟んだ。


 初めはそんな噂、誰かが颯太を疎んで吐いた法螺話だと無視していた。

 あの颯太に限ってそんな不良まがいな事をするはずがないと、朋絵と同じ部活の男子だけはずっと否定を続けていた。


「やっぱり、颯太だ」

「……三崎」


 偶然の再会を果たした同級生――颯太は朋絵に気付いて自販機の前で足を止めた。

 今日で一学期が終了。日程は午前中のみで部活もオフ。空いた午後は家でダラダラしようと思っていた矢先、友達に誘われてこのデパートまで遊びに来た。あまり乗り気でなかったせいか空気に馴染めず、隙を見計らって逃げた。そして、何をするわけでもなくふらふらと歩いていたら、見覚えのある姿を捉えた。

 それがまさか颯太だったとは、思いもよらなかった。

 朋絵にとってはそれは嬉しい誤算だった。

 朋絵は胸内の昂ぶりを抑えつつ、声音を抑えながら質問した。


「どうして颯太が此処にいるの?」

「出会い頭にそれか。別に、俺がどこにいようが俺の勝手だろ」


 露骨に不機嫌な態度を取る同級生に頬が引き攣った。颯太は朋絵を一瞥したあと、自販機に視線を戻してしまった。


「お前こそ、どうしてこんな所にいんの。部活は?」

「今日は竹部先生が夏風邪で休んだから、部活はオフになったの」

「ふぅん」


 自分から聞いたくせに関心のない生返事だ。

 朋絵は頬を引きずらせながら、先程の質問を繰り返した。


「それで、颯太はどうしてここにいるの?」

「……たまたま。暇だったから」

「一人で来たんだ?」

「ボッチ前提なのが無性にイラっとくるな……そうだよ一人だよ」

「…………」


 朋絵は妙な間に眉根を寄せるも、肯定した颯太に「ふーん」と淡泊に頷いた。


 ――そっか。一人なんだ。


 朋絵はよっしゃ、と内心でガッツポーズした。


「ならさ、久しぶりに会えたんだし、一緒に遊んでいかない?」 

「……めんどい」

「めんどい、って。いいじゃん。ちょっとくらい。思い返してみれば、あたしたち、中学からずっと一緒だったけど、遊んだことなかったじゃん」

「当たり前だろ。俺はずっと走ってたんだから」

「――っ」


 颯太が素っ気なく吐いた言葉が朋絵の胸に刺さった。偶然会えた喜びが先走って、失言に喉が唸る。

 朋絵はどうにか笑顔を保ちつつ、颯太を振り向かせようとする。


「だ、だからさ、一緒に遊ぼうよ」

「くどい……お前、友達と一緒に来てるんだろ?」

「それはそうだけど……でも大丈夫だからっ。明日香たちにはメールで伝えておくし……」

「どう説明すんの? 俺と一緒にいることがもし知られたら、被害被るのはお前だろ」

「そんなことっ! ……ない」


 語尻が弱くなって、そうでないと断言できない朋絵に颯太は一瞥だけくれた。氷のように冷ややかな視線を。

 そして、颯太は自嘲気味に言った。


「気にするなよ。元は俺が学校に行っていないのが原因なんだし」

「それが分かってるなら、どうして学校に来ないの」


 朋絵の険のある声音に、颯太は何食わぬ顔で答える。


「気分」

「嘘。颯太はそんな適当な理由で何かを止めたりしない」

「ハッ。お前が俺の何を知ってるんだよ」


 颯太は朋絵の言葉を鼻で笑って一蹴した。そして、今度は朋絵の方を見る事もなく自販機にお金を入れていく。

 ガコンッ、とペットボトルが落ちたのを拾うと、颯太はまたお金を入れ始めた。


「……どうして、もう一つ買おうとしてるの?」


 朋絵の言及に、颯太の手がピクリと止まった。


「颯太、一人で来てるんだよね?」

「喉が異常に乾いて、一本じゃ足りないんだよ」


 適当に流されて、それが朋絵にとっては釈然としない。


「本当は誰かと来てるんじゃないの?」

「だから俺が誰と来るんだよ。あぁ、もしかして、みつ姉と来てると思ってんの? 残念、みつ姉は今日仕事だから」

「…………」


 妙に早口で、それに颯太が焦っているように見えた。

 その時だ。


「――ソウタさん」


 不意に、朋絵ではない誰かが彼の名前を呼んだ気がして、声のした方を振り返った。

 そこに居たのは、くまのぬいぐみを抱きかかえた少女だった。


「――アリシア!」


 おそらくは彼女の名であろう。その名前を呼んだ颯太が、今まで朋絵が見たことない表情をしながら彼女の下へ駆け寄った。


「待ってて、ってそう言ったじゃん。迷子になったらどうすんの」


 颯太に叱責されながらも、少女は安堵に満ちた表情を浮かべていた。それから、しゅん、と項垂れると、


「ごめんなさい。私も最初は大人しく待ってようとしたんです。でもソウタさんが居なくなってから急に不安になって、気付いたらソウタさんを探してたんです」

「あー。やっぱり一緒に連れて行くべきだったかな。ごめん、アリシア」

「違いますよ! ソウタさんが帰ってくるまで待てなかった私が悪いんです!」

「いいや、アリシアを一人にした俺が悪い」

「私です!」

「俺が悪い」

『ぬぬぅ~』


 互いに自分に非がある事を認めず、何故か睨み合いを始めてしまった。

 朋絵はそんな状況に置いてけぼりを喰らって、ただ傍観していた。


 ――誰かに謝ってる颯太、初めて見た。


 颯太とは付き合いがそれなりに長いと自負している朋絵だが、颯太が人に頭を下げている場面や、ましてや誰かと友好関係を気付いている場面は目撃したことがなかった。

 それを知っているからこそ、颯太が少女に特別な感情を抱いているのが瞬間的に理解できてしまった。


「噂、本当だったんだ」


 それは空虚のような声音だった。

 颯太が女遊びなどするはずがない。そう頑なに信じてきたものが瞬く間に瓦解していく。

 眼前に映る光景が、そうさせたのだ。

 胸中に、激情が渦巻く。

 色んな感情がごちゃ混ぜになって、混ざり合った結果で生まれたのは〝失望〟だった。


 ――こんなもの見るために、颯太と再会したんじゃない。


 朋絵を蚊帳の外にしていた二人。その内の一人が朋絵の存在にやっと気づく。


「ソウタさん、このお方は?」

「ん、あー……一応、同級生ってやつかな」

「そうなんですね。では挨拶をした方が……」

「止めて!」


 朋絵の怒声に、少女はびくっと肩を震わせた。

 朋絵はハッと我に返ると、


「ご、ごめんなさい。今のは、その、ちょっとテンパったっていうか……びっくりしたというか……とにかく何でもないの。だから、気にしないで」

「わ、わかりました」


 言い訳にもならない羅列でその場をどうにか凌ぎ、朋絵は一息吐く。

 少女の方も、先程の朋絵の怒声で動揺したのか躊躇っている。ならば重畳だと、朋絵は颯太を糾弾するような目つきで睨んだ。


「学校に来ないで女の子と遊んでるとか、最低ッ」

「ついこの間も似たようなこと言われたけど……まぁそうだな。最低だな」


 面倒くさい、と言わんばかりに適当にあしらう颯太の態度に、朋絵の感情はさらに揺さぶられる。


「ならなんで、そんな澄ました顔してるの⁉」

「関係ないからだよ。俺が学校と部活に行くことと、アリシアの面倒をみることは」

「関係ないって……どっちが大事なのかくらい、すぐ分かることでしょ!」

「分かってる。分かった上で、俺は〝今やりたいこと〟をやってるつもりだ」

「ッ! それが、その子と一緒にいることなの?」

「――――」


 問いかけに返事はないが、颯太の黒瞳が肯定だと告げていた。

 その目に強い意思を感じて、朋絵は奥歯を噛み締めるしかできなかった。

 さらに颯太は冷酷に朋絵へと言った。


「そもそも、俺が何をしていようが、部外者のお前には関係ない」

「――――」


 徹底的に朋絵と颯太の関係性を否定されて、朋絵は顔を俯けてしまった。


 ――ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!


 激情が収まらなかった。

 そして、それは爆発した。


「……関係なく、ない……ッ!」


 ギリッ、と音がなるほど歯を強く噛んだ。振り絞った声を上げると、朋絵は顔を上げて己の胸を強く叩いた。


「あたしは陸上部のマネージャー! 颯太の退部届はまだ竹部先生が保留にしてある! だからまだ、颯太は陸上部の一員なの!」

「それがどうした」

「だから! 連れ戻すから。颯太をもう一度、トラックで走らせるから」

「走らない。俺はもう二度と」

「ううん。走らせるッ」


 お互いに、頑なに譲ることはなかった。


「お前が俺になにを求めてるのかは興味ない。だけど、これ以上、俺に首を突っ込むのはやめてくれ。竹部先生には、早く退部届承諾させるよう言っといてくれ」

「自分で言えッ」


 朋絵は首を激しく横に振った。

 意地でも頷こうとしない朋絵に颯太は諦念したように吐息すると、


「じゃあな、元マネージャー。――行こう、アリシア」


 そう、別れ際に皮肉を言って、颯太は歩き出した。少女は朋絵を気にしながらも、颯太に置いていかれよう足早に去っていった。

 二人の背中が段々と見えなくなる。


「絶対、あの女から颯太を引き離してやる」


 朋絵は決意をむき出しにして、そう呟いた。


                   ―― Fin ――



ついに登場! 三崎朋絵!

颯太の同級生にして陸上部のマネージャーという肩書を持つ彼女は、前回お知らせした通り早速本編で大暴れですね。

颯太に恋心を抱く朋絵。偶然デパートで再会を果たした矢先に、颯太にはぶっきらぼうな態度を取られ、そして知らない少女が颯太の隣に並んでいた。

これだけ聞くと中々にきつい状況ですが、流石は陸上部のマネージャーです。強いメンタルで「颯太をもう一度走らせる」と宣言しましたね。

朋絵のことも沢山語りたいことがあるのですが、ここで颯太の過去が一つ明らかになりましたね。

そうです。颯太はなんと、元陸上選手だったのです! 本編にはまだ語られていませんが、実は物凄く有名な選手だとか?

そんな颯太がどうして高校も不登校になって部活にも来なくなってしまったのか、それ関しては本編を読み進めていってください(土下座)

ついに役者が揃った第二章 『 超絶美少女VS普通少女 』! どうかお楽しみにしててください。

毎日更新なので結構な速度で進ます((笑い

  ではではまた次回でおあいしましょう!

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