文化祭と合コン
秋といえば文化祭だ。
コウ達軽音部は毎年何組かがライブを開く。
コウもその準備で大忙しだ。
僕達茶道部も茶会を開くが一年生は段取りと裏方、来年以降のために色々と教えてもらう勉強の年だ。
そうは言っても格好はちょっとする。
初めて着物を着た。
静かな表舞台と一歩裏に回ると戦場。
表舞台が優雅さを醸し出している分、落差がひどい。
コウ達のバンドが出る時間には休憩をもらって体育館へ急ぐ。
少しするとコウ達が出てきた。
コウはベースを弾いて音を合わせている。
お! 緊張してるか?
MCが始まると俺はコウに手を振った。気がついたようだ。向こうから見えるもんだな。
女の子達から声援が上がる。
僕も楽器が出来たらモテるかな。
そういえば茶道部に入ったら合コンを組む約束してたな。
「ねえ、松本さんって彼氏いるの?」
同じ茶道部の同級生が僕がライブに行くと言ったらついて来た。
「え、藪から棒に何? ……いないわよ」
「さっきのバンドのベースが僕の友達なんだけど今度一緒に飲み会しない? 友達も一緒に」
「それって合コンってこと?」
「まあ、そういうことだね。三、四人くらい集めるけどどうかな?」
松本さんはちょっと考えていた。
「同じクラスの子に聞いてみるね。そのくらいなら言えば集まるかも」
僕たちは連絡先を交換した。
週末、僕たちは学生がよく使う居酒屋に居た。
松本さんを含む女性三人に僕とコウを含む男三人が個室に居た。
どんな趣味だとか、どんな音楽が好きだとか最近見た映画やドラマ、動画のどれが面白くて、どれが好きなんてことを酒の肴に盛り上がっていた。
「松本さんってどんな男性が好み?」
「あたし? そうですね。今まで好きになった人っていないから難しいですけど、グイグイ引っ張ってくれる人かな? そういう竹中君は?」
「そうだな。一緒に笑ってくれる子かな? 笑いの沸点が低い。明るくて、あと美人でスタイルが良ければなお良し!」
「最後に本音が出たわね。コウさんはどんな女性が好み?」
「俺? 基本的には俺のことを好きになってくれる子かな。だいたい、付き合っても俺のペースって変わらないからそこをわかってくれる子がいいな。田中さんはタイプってある?」
コウは隣に座っているロングの茶髪の子に話を振った。
「わたしより背が高い人。それでわたしのこと大事にしてくれる人かな?」
田中さんは他の女性たちより頭一つ大きかった。
「レナって身長いくつだっけ?」
松本さんは僕たちをふるいにかける気か?
「……百七十、ちょっと」
「だったら、ここにいる男たちはとりあえずクリアだな」
ギリだけどな。と僕は心の中で突っ込んだ。
「それでまりはどうなの?」
田中さんは話題をそらす。
「面白い人。無口な人って苦手なのよ。いっぱい話をしてくれる人がいいな」
「そうするとナカは難しいか? そういえばナカの好みってどんな子だ?」
コウは同じ軽音部の中村に話を振った。
「優しい人」
「「「「「乙女か!」」」」」
総ツッコミが入った。