終わりとはじまり
現代を舞台にした小説は初めてです。
現実と違う部分があってスルーでお願いします。
面白い、面白くないだけでも結構ですので感想お待ちしております。
酷評歓迎です。
今日、葬儀に行った。
コウと知り合ったきっかけは大学のオリエンテーションの時にたまたま席が近い。
そんなたわいのない理由だった。
「俺、坂本 香っていうんだ。コウって呼んでくれ。君は?」
「僕は竹中 達也。タケナカでもタツヤでも好きに呼んでくれ」
それがコウと初めて交わした言葉だった。
お互い地元は大学から遠く、近くのアパートに一人暮らしをしている。
僕もコウも友人は同じ大学に来ていないという共通の理由により、お互いの携帯の番号を交換した。
オリエンテーションも終わり家に帰ろうかと立ち上がると、コウが声をかけてきた。
「なあ、竹中。このあと何か用事あるか? 飯でも食べに行かね?」
特に用事の無い僕はコウの誘いに乗ることにした。
行った先は学食だった。
「どっかの居酒屋じゃないのかよ」
「たっくんは月初めからそんなに金使って大丈夫なのか?」
「たっくんってなんだよ。まあいいけど。確かにまだどのくらい必要かわからんし、これからもお世話になる学食のレベルっていうものを確認するのも必要だな」
「たけなか、たつやでどっちも頭にたがつくからたっくんでいいだろう」
僕たちは自販機で食券を買い、セルフサービスの列に並ぶ。
食事をお盆の上に乗せ、空いている席に適当に座る。
「なあ、入るサークル決めたか?」
大学一年生で履修科目の次にサークル選びは大事だ。
「僕はテニス部に入ろうかと思ってる。高校時代にもやってたし」
「ほう、見かけによらず体育会系なんだな。俺は軽音部かな」
「音楽やってるのか? そっちの方が意外だな」
確かに俺はやせ形でがっつりスポーツをやっているようには見えない。
それに比べコウは見た感じからスポーツをしてそうな人懐っこそうな顔をしている。
「高校時代はサッカーやってたんだけど、サッカーはもういいかなと思ってな。大学だとサッカーよりバンドの方がモテそうじゃない?」
まあ、僕も在学中に彼女は欲しい。
「テニスよりバンドの方がモテるか?」
「そりゃ、どっちも腕次第じゃないか?」
ごもっともだ。
「僕は音楽の点数悪かったんだよな。音痴だし」
「じゃあ、あきらめてテニス頑張れよ」
僕はテニス部をなめていた。
大学のテニス部なんてチャラく試合練習だけをして、あとは女子部員としゃべっているのかと思っていた。
朝練、昼練、夕錬。週末飲み会で吐くまで飲む。
よっぽど高校時代の方が楽だ。
「おーい。そっちの部はどんな感じだ?」
入学して約一か月、僕はコウの部屋に遊びに来ていた。
コウは料理ができて、食材を持ってくればいい感じに料理してくれる。
高校時代に居酒屋でバイトしていたかららしい。
「うん、ぼちぼちかな。女の子もそこそこいるし、先輩に美人がいるぞ」
「こっちは女子と絡む暇もないよ。やめっちまおうかな」
コウはぶり大根をもってリビングに来た。
「いいんじゃないか。どうせ八十年の人生だぜいろいろなことを経験しようぜ」
「夏休みに入ったら自然消滅するかな。いただきます」
「じゃあ、たっくん。夏休み旅行行かないか?」
「旅行?」
「ああ、お互いバイクがあるだろう。それで日本一周しようぜ! 大学生って言っても三年からは就職活動とかで忙しくなるし、ニ年は部やサークルがさぼりにくくなるだろう。この夏休みに行こうぜ」
大根が染みてて美味いな。
ぶらっと日本一周か面白そうだな。
「よし、乗った! それで計画は何か決まってるのか?」
それから僕たちはルート、予定日数、予算を話し合った。
なるべく下道を使い、フェリーも考慮に入れた。
そして一つ俺たちはこの旅のルールを決めた。
スマホの地図は使わない。
アナログの地図のみ。どこか目的地に行くのが目的じゃない。過程を楽しもう。間違いを楽しもう。
バイクにスマホをつけてナビで移動すれば迷うことがない。
アナログの地図のみだとお互いバイクの場合、どこかで止まって確認しないといけない。全然知らない道だ。迷う可能性もある。そこに新たな発見があるかもしれない。
僕は夏休みに向けてバイトを始めた。
足りない分は申し訳ないが親のスネをかじろう。
バイトを始めるとバイトを理由に部活を休む日数が増えた。
そうするとだんだんと部内での僕の影が薄くなり、夏休み前には休んでも特に何も言われなくなった。
学校に行って、バイトして、コウの家で夏休みの準備とバカ話でニヶ月があっという間に過ぎた。
夏休みは目の前だ。その前にテストが待っている。
僕たちはコウの部屋でテスト勉強をしていた。
「そういえば、コウ。合コンって行ったことあるか?」
「合コン? 誘われたことはあったけど断った」
「なんで? もったいない」
「だって俺、彼女がいるから」