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9話

「彩、行くか? 俺の過去を知りに」





彩はその言葉を聞き、少し落ち着きを取り戻し、答える。





「先輩の過去? よく分からないけど行きます。ずっと気になってたんです」





「そうと決まりゃはえぇな、高坂準備しとけ。俺は車パーキングから出してくるから、30分で戻る」





そういい帝一は、玄関を出ていく。





とりあえず風呂に入るか。





「春菜、彩を一瞬頼む」







「全く仕方ないわね、帝一のツレだから許してあげる」











先輩はお風呂に行ってしまった。



もう二度と起きてくれないかと、ずっと不安だった。



私は自分を責め続けた。でも先輩たちふたりは、私を優しく慰めてくれていた。



いつもの事だから……と。





「ねぇ日吉ちゃん、高坂さ顔つき変わったでしょ。あなたのおかげだよ。きっとね全部吹っ切れたんだよ」





吹っ切れた? 過去のことが……?







「まぁ後で高坂は話してくれるわよ」











あれから時間がたち、俺は支度を済ませ帝一が迎えに来た。







「じゃあ行くか、あいつのとこに」







「んだな、彩にもちゃんと話さんとな。まぁ道は長いからゆっくり話せそうだな」







そんなことを言いながら家を出てみんなで、帝一の車に乗り込む。





帝一が運転し、俺が助手席、2人は後ろだ。





彩が不思議そうな顔をして口を開く



「本宮先輩、免許持ってるんですか? まだ17じゃ……」





俺たち3人は、思わず笑ってしまった。





「あぁそっか、彩は知らんもんな。帝一と、春菜は一個上だよ。帝一は全日の高校辞めて、うちの定時来たのよ。春菜はうちの学校の全日」







「えっ?? ずっと3人同い年だと思ってました……」







帝一と春菜が爆笑しだした。この野郎共……。







「まぁ高坂の方が上に見られること多いしねー」







「おめぇが老け顔だからだよ、高坂」









やっぱりそういうよな。





「っるせーな、あーどーせ老け顔ですよ」







そんなやり取りをしていたら、彩も笑いだし、元気を取り戻したようだ。





車が駐車場を出て走り出す。





!!!???







「あっ帝一、コンビニと花屋寄らんと」







「ばーか、おめぇの考えなんてお見通しだわ、花とあいつの吸ってた赤マルと、好きだった日本酒もトランクに積んである。だから30分待たせたんだよタコ」







ったくむかつくぐらいに、俺の考えわかってやがる。さすが大親友だな。





「さぁて彩、どこから聞きたい?」







彩は少し表情を曇らせる。







「先輩……。ほんとに聞いても大丈夫なんですか?」







????





「いやまた、起きなくなっちゃうんじゃないかって……」







おめぇら説明してねぇのかよ。







「大丈夫だぞ彩、あれは記憶蘇った時に、いつもなるやつだ。まぁ2日も寝込んだことはなかったが。帝一と、春菜慣れてたべ? 散々去年の今頃それになってたからな」





彩はそれを聞き、安心したのか質問をしてくる。







「まず先輩は、なんであの事件の後、私に会ってくれなかったんですか?」







あれ以来確かに彩には会ってなかったもんな。





「あの後な、学校中の奴らが、俺に絡んできたんだよ。まぁあれだけのことすれば、そうもなるけどな」





「おめぇの無茶する癖は、昔からなのな」





そう言いながら帝一は、タバコを加える。





「帝一から、聞いたけどやっぱりそういう事だったのね。相変わらず面白いやつね」





そう言いながら春菜もタバコに火をつける。







彩は理解出来ずに、フリーズしてしまってる。



「簡単に言うとな、お前にまで絡まれるのが怖かったんだよ。どんだけ殴られても、どんだけ馬鹿にされても、俺は一切手を出さなかったしな」







彩は驚き大きめの声で言う



「なんで手出さなかったんですか! あの時は出したのに???」







「それは男にしか分かんねぇよ、な高坂」





「だなぁ。春菜も分からんべ?」







「もちろん意味わからない」





帝一はやっぱり分かるか。流石だな。







「なんだろうな、彩を守るために手を出すのと、自分を守るために手を出すのじゃ話がちげぇかな。彩のことも馬鹿にされたけど、俺は手出さなかったな。偉いだろ? 帝一」







鼻で笑い答える。





「んなもん、あたりめぇーだ」





後ろの2人からは、?マークが出まくっている。





「あのなはーちゃん、馬鹿にされて手出したら、その内容認めることになるだろうが」







2人とも謎が解けたのか、急に表情が明るくなった。





「まっそんな感じだ。てか彩煙大丈夫なのかよ」







「全然大丈夫ですよー、親も吸ってるので慣れてますよ」





じゃあ俺も吸うかな。タバコを咥え火をつける。



煙を吐き出し、窓枠に左肘をかけ口を開く。



「次は何を聞きたい?」





「先輩が高校に入ってからの事ですかね。それとなくは本宮先輩から聞きましたけど……、やっぱりちゃんと聞きたいです」







「話せば長くなるけど、話さなきゃだな。俺にはな高校に入ってすぐ打ち解けた、溝井奈美っていう、女子がいたんだ。帝一と春菜の中学の同級生だな。

そいつはな、俺よりもひどい虐待を受けていた。暴力もそっちじゃない方の、虐待もな」





日吉は急な展開に、少し理解が追いついてないみたいだ。







「それから、俺たちが付き合うまでは、早かったな。入学して2週間ぐらいで付き合いだしたな」







「あん時はみんなでいじったわー、懐いな」







「すげぇいじられたわ、まぁそんなことがあってな、あいつは家に帰りたくないからって、俺の家に半居候してたな。

それから2ヶ月ぐらい経った日にな、親に俺と付き合ってることがバレて、俺と別れろってずっと言われてたみたいでな。俺も俺でこんな性格だからよ、別れて辛い思いするぐらいなら、一緒に遠い地で暮らそうって突っ走ってたのさ」









日吉は新鮮な眼差しで頷いている。





「あの時の高坂は、今より殺意剥き出しだったわね。まぁそうもなるわよね、あんなにお互い大事にしてたんだもの」







「そうなぁ、その後半月ぐらいで奈美は、自殺してしまったんだよ。俺はその時に奈美以外の記憶を、全てなくした。でもこいつらが毎日のように、病院来てよ根気強く思い出させてくれたんだよ。奈美もな、馬鹿でよ俺には迷惑掛けられない、俺を巻き込めない! って突っぱねてな。俺が追い詰めたのもあると思うな」





日吉はいつの間にか、泣いている。





「あの馬鹿はさ、俺の恨み言の一つや二つ遺書に書いとけばいいものを、書いてあったのは全部、感謝と謝罪。そして思い出の数々。憎んでくれてた方が楽だとも思った時もあったよ」







彩は泣くのを必死に堪え、口を開く。





「先輩それは違いますよ……。ほんとに感謝していたんだと思います。私もそうでした。絶望してた人生に、貴方という光が現れ、楽しく過ごせたんだと思います……」







「ほーらな、日吉ちゃんもそう思うだろ? もっと言ってやれ。こいつ俺たち二人が言っても聞かねぇんだよ」







「日吉ちゃんが多分合ってるかな。奈美はね、あんたのことをちっとも憎んでなかったわよ。いっつも惚気けてきてたんだから」







そうなんだろうな、今まではそれを認めれなかったのかもな……。







「これからは3人のその言葉を信じることにするさ、そして彩、今向かってるのはその奈美の墓だ」

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