3話
日吉と中華屋に行ってから、はや1週間が経つ。
それからというもの……、あっ見つかっちまった……。
「彰先輩! 今日一緒に帰りましょー!」
また今日もか……。ずっとこんな感じなんだよなぁ。
「今日はこのあと、店行って書類取りに行くから無理だな」
言い訳が最近底をついてきた……。
日吉はあからさまに落ち込みながら言う。
「そうですか……、じゃあまた今度で」
また断られちゃった……。私の事嫌いなのかな……。
優里の言う通り、やり過ぎなのかな……。
「おーいかわい子ちゃんー」
良いなぁ可愛い子は……。
「おいってば! 君だよ君! 日吉ちゃん」
……えっ? 私?
振り返るとそこには本宮先輩がいた。
「本宮先輩であってますよね? 私に何か用でしたか?」
「いやなんかな落ち込んでるから、飯でも食いに行こうぜって、誘いかな」
待って……、これは高坂先輩のことを聞くチャンスじゃない! これを逃す手はない!
「ぜひぜひ! 聞きたいこと沢山ありますし」
本宮先輩はニコッと笑みを浮かべ話す。
「じゃあ電話するから少しだけ待ってな」
そういいスマホを取り出し電話をかける。
「出るかなー、あっでた。 もしもしー、あー俺。ちょっと日吉って女の後輩と飯食いに行ってくる」
誰だろう?
「いやうん、ごめんってそういうんじゃないよ。前から話してる高坂のやつ」
先輩の彼女さんかな? だとしたらら申し訳ないことをしちゃったかな。
「いつもゴメンな、あいつは腐れ縁だからほっとけねぇんだ。ありがとう」
そう言い終え電話を切った。
「おう、ゴメンなじゃあ行くか! 近場のファミレスで大丈夫?」
「はい大丈夫ですよー! それより先輩大丈夫なんですか?」
先輩は私の不安なんか吹き飛ばすように笑う。
「ん? あぁこの電話ね、大丈夫大丈夫、高坂って行った瞬間諦められたから。彼女も俺とあいつの関係については、諦めてるからな」
それ笑い事じゃないと思います……。
まぁそれぐらい仲良いのかな、2人は……。
※
あれから私達は、ファミレスに来て席へ着き注文を終えた。
「それで? 聞きたいことって何かな?」
なんとも単刀直入な……。
「ええっと……、言ってしまうと先輩に、何があったのか教えて欲しいんです」
先輩は顎を触りながら悩んでいる。
「んーとな、この話は俺がしていいのかも、分からなければそもそも長くなる。どっから話せばいいかわからない」
やっぱり簡単には教えてくれないか……。
先輩が突如険しい顔になる。
「ひとつ聞くけどさ、なんで自信満々に変わったって言いきれるの? もしかしたら、何も無かったかもしれないじゃん、あっ怒ってる訳では無いよ」
……確かにそう言われると困る。
「一言で言ってしまうと、直感ですかね……。でもなんて言うんでしょう……、確実に中学校の頃より、殺気というか威圧感みたいなものが高まってるんです。昔から確かにありましたけど、もっと優しさに包まれた感じだったんですよ」
私が話し終え暫くすると先輩は、微笑み語る。
「それ聞いて安心したわ。君はあいつの事を分かってくれるかもな……」
「じゃあ教えてくれますか!」
「全ては教えられん、これは本来俺が、言っていいことじゃないからな」
「少しだけでもいいです! 教えてください!」
「しゃあなしだな。彰はな高校に入ってから、とある子に出会った。そいつは色々あって闇が深かった。常人であれば同情する程にな」
そっからどうやったら……。
「でも彰は同情しなかった。それは世間的に見たら、最適解じゃないかもしれない。でもあの子にとっては、彰の対応が最適解だった。それを分かってやったのか、素でやったのかは、わからない」
彰先輩の場合は確かに、どっちか分からない……。
「そして2人は時を待たずに意気投合し、トントン拍子に恋人になった。俺は中学の頃を知らねぇが、この時の彰が、1番楽しそうだった」
彰先輩なら恋人ぐらいいるよね……。でもうちの高校にそんな感じの人見たことない……。
「これが前提条件な。あいつが今こんなになってるのは、大事なものを守りきれなかった。それだけだ」
えっ? どういうこと……!?
「あいつの年齢とか諸々考えても、あれは不可能だった。どう考えてもあいつは悪くない……。でもなあいつはそれを悔やんであぁなってる……、それだけだ」
それって……、闇が増すのもあたりまえか……。
「さぁてギブアーンドテイク、奴の話を教えたんだから、君と彰が昔何があったのか教えて?」
「えっ? いや、それはちょっと……」
「そっかぁー、あー残念だなぁー、教えてくれれば少しぐらい、アドバイス出来たかもなのになぁー。あー残念」
アドバイス!
「教えます! 教えますから!」
先輩は悪い笑みを浮かべる。
「じゃあ聞かしてくれ」
「えっとどっから話しましょう……」