表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

最終話

彩は驚いているのか表情が固まっている。



「やはり行きたくないか?」





今更遅いのだが、聞いてみた。







「い、いえ。そういう訳では無いのですが、単純に私が行っていいものなのかと・・・・・・」







帝一はそれを聞き、彩の言葉を笑い飛ばす。





「大丈夫だよ、日吉ちゃん。奈美はな、そんな心の狭いやつじゃねぇよ。逆に安心するこったい」







安心か、間違いではないかもな。何せあいつの遺書には。





「だと思うぞ。遺書に彼女が出来たら連れてきてね。って書くぐらいだからなぁ。まぁ俺の事最後まで心配してたんだろうなぁ」



彩はそれを聞き安心したのか、ホッと胸をなで下ろしている。





「ていうか高坂、あんたまだ話してないことあんじゃないの? ずっと待ってて追っかけてくれたんだから話してあげなさいよ」







え!? まだ話してないことあったっけ?



「後はなんか聞きたいことあるか? 彩」





「先輩って、なんで急に一人暮らししてるんですか?」







あれ? 話してなかったっけ?





「あーそれはな、15歳の3月で家から出されたからだな。元々義父とは仲良くなかったし、母親は義父との子供流産してから、狂ってたしな」





「先輩の家ってそんな複雑だったんですか???」







あれ中学の頃話さんかったっけ?





「俺の家族との歴史を簡単に説明するとだな、小1で親離婚、小3で義父と母親交際、小6で再婚、中学生で義父と仲悪くなる、中2で母親流産し頭狂う。みたいな感じだな」





彩は絶句している。





「そんな状況なのに私を助けてくれたんですか?・・・・・・」





相変わらず俺の事良く考えてくれるなぁお前は。





「だからこそだよ。学校に行けばいじめ。理由は確か不真面目なくせに、成績いいからだったからかな。そんで家帰れば、母親から受ける虐待の数々。親父からは何もされんかったけどな。何度か殺されかけたな」





「自分で腹を痛めて産んだ子なのに・・・・・・」





「そりゃあ俺にはわからんけどな。俺は実の親父に顔そっくりだしな、母親の親族には、クソ男の息子って嫌われてるし、実の父親の親族にはクソ女の息子って嫌われてるしなぁ。それに母親は俺よりも腹の子の方が欲しかったみたいだぞ。嫌いな男の子供より、今の親父の子供の方が大切なのかもな」







日吉は言葉を失っている。





「あのね、あんたそれいつも平然と話すけど、普通の人間そんなん聞いたらこうなるからね。小説ばりに不幸な人生じゃん」





俺は感覚が麻痺してるからなぁ、だってそれが普通だったんだもん。







「まぁそんな人生だったからこそ、奈美も彩もほっとけなかったのさ。俺が生きようと思ったのは奈美のおかげ。絶望から解き放ってくれたのは彩かもな」





「高坂の分際でカッコつけやがって、お前は出会った時からそうだよな。俺達には弱み見せるくせに女の前では絶対強がる。まぁ奈美にも日吉ちゃんにも、見抜かれてた訳だが」





ったく余計なことばっか言いやがって。



「っるせぇなぁー、しゃあないだろうが。そういう性分なんだから。俺がふらふらしてたら安心出来んだろうが」





「先輩それは違います!」



彩は怒りとは違うが、激しく言葉を紡ぐ。



「好きな人だからこそ! 弱みを見せていいんですよ! こっちからしたら頼られてないっておもっちゃうじゃないですか!」





ん? 今?



「あら? しれっと高坂か好かれてる発言したね彩ちゃん」



春菜が悪どい笑みを浮かべ日吉をイジる。





「えっいやそ、そんなことないです・・・・・・」







俺と帝一はそれに笑いを堪えきれず、笑い声を漏らしてしまう。





「まぁ高坂も彼女連れてくみたいなことボロったしいいんでね?」





「ふぁ!??? いやちょそういう意味じゃ」



俺は照れを隠しきれず、俯く。





「2人揃って顔赤らめてお似合いだねほんとに。見てて微笑ましいわ。何より高坂のそんな姿久しぶりね」





それを聞き彩の方を向くと、全く同じことをしていた。似たもの同士なんだなぁ。







「ほれそんな無駄話してたらもう着くぞ」







帝一がパーキングに車を止め俺らは荷物を持ち、車から降りる。





しばらく歩くと、溝井家之墓と書かれた墓石があった。綺麗にされており花も手向けてあった。







「綺麗な墓ですね。誰かがちゃんと手入れされてる墓なんですね」





「まぁ俺が月命日に来て毎回綺麗にしてっからな。多分この花とかは弟くんだろうなぁ」





「さて帝一掃除はされてるからいいとして、色々やるか」





まず俺らは水を墓にかけて手を合わせる。その後にお供え物の食物を置き、花を生ける。



「さぁて最後に」



俺は奈美の吸っていた赤マルに火をつけ、線香がわりにそれを置く。





「奈美、最後にお前が墓に日本酒掛けてやれ。本当はいけないらしいけど、俺たち以上の酒豪だから仕方ないべ」





彩はそれを聞き、たどたどしい手付きで墓石に酒をかける。













「これで大丈夫ですかね?」







あいつもこれで安心すんだろ。今まですまんな。もう大丈夫だ、安心して休め





「49日以来だなぁ、奈美の墓に来るのは。やっとこれでゆっくり休めんのかもな」





「まっ世話焼きなあいつの事だからねー、高坂心配で寝れてないんじゃん?」







奈美は俺以上に世話焼きだったからなぁ。















その後1時間ほど墓にはいた。供え物の食物を食べたり、帝一が多めに買った酒を飲んだり、帝一は運転手のため飲めずに悔しそうだった。





「んじゃそろそろ帰るべ。奈美も喜んでることだろうし」





みんな考えてる事は同じだったらしく、1人ずつ手を合わせ、帰路を行く。





順番的に俺が1番後ろを歩いていた。











その時俺の体に纒わり付くように風がなびく。













「彰ありがとうね、私のために墓参り毎月来ててくれて。今後は年に1度来てくれたら嬉しいなー。でも失礼かな?、日吉ちゃん? に。あの子を不幸にしたら許さないからね!」





そんな声が聞こえた気がする。 分かってるよ、ちゃんとするさ。





心の中で呟くと、まとわりついていた風が、無くなり遠くで微笑む奈美の姿が見えた。







また来年な、お前のことはちゃんと忘れずにいるさ。でもお前も望むとおり、彩を1番にするから年に1回だな。











「高坂ーおせぇぞー、もう車出るぞ」



知らないうちに時間が経っていたようだ。







「わりぃ! 待って! あっマジで出るなよ! こっから歩きはマジ無理だから!」























「おーい、里奈ー今日は、毎年恒例の墓参りだぞー。帝一は春菜も来るぞー。仁美ちゃんも来るってよーー」







「待ってよーパパー! 今準備出来たから!」





全く可愛い娘だ事。もう5歳か、俺も27になったしなぁ。里奈と言う名前は彩が付けた。

奈美の話を色々聞き、奈美みたいな強く綺麗な女性になって欲しいという意味らしい。

にしても旦那の元カノの名前1文字貰うって、言い出した時はみんなびっくりしたものだ。




「コラ! リナ! 靴下履いてないでしょ! お墓は石がいっぱいでまだ危ないからちゃんと靴で行くんだよ」





とこんな感じで今では彩も立派な母親だ。





我が家はこんな感じで毎日ドタバタしている。帝一のところも同じらしいが。





「お待たせ! 行こっか!」





「じゃあ出発するよー、帝一とセブンで合流だからねー、里奈少し待ってなー」





あいつが死んでから10年たったが、俺には守るべきものが2人出来た。

それもこれも、帝一達友達のおかげ。それ以上に彩が根気強く救ってくれたからだ。





まだまだそっちには行けねぇぜ奈美。後70年は先になりそうだ。





今行ったら怒られそうだけどな。



「パパー、おしっこしたい!」





おいおい今家出てきたばっかだぞ。





「はいよ家まで戻りますか。3分待ってな」

あくまでもフィクションであり、当作品は未成年への飲酒喫煙を推奨するものではありません

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ