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1話

 彰へ ごめんね



 これが俺が貰った彼女からの最後の贈り物である手紙。そして俺はこの日以降全てを恨み生きていくことになる。


 いや正確に言うと少し違う……か。



 ※


「彰先輩! いつもなんでそんなに怖い顔してるんですか?」



 何故こいつはいつも俺に絡んでくるんだ。俺の何が良くて、わざわざ同じ高校に入ってまで追っかけてくるんだか。


「あのなぁ日吉、俺は普通にしてるつもりなんだよ」


「でも! 中学の時と全然違うじゃないですか!」



 そう言えば彩はあの事を知らないのか。丁度離れてた1年間の出来事だもんな。


「世の中にはな知らない方がいいこともあるんだよ。じゃあな」





「彰先輩! 彰先輩ってば! もうそそくさとなんで帰っちゃうのよ!」



「なぁに彩? またあの怖い先輩追っかけてんの?」



「怖くないもん! 彰先輩本当は優しいもん! 優里は知らないだけだよ!」


「はいはい、またそれね。好きな男を追っかけるのは、良いけどあんまりやり過ぎるとウザかられるよ」


 そうだよ。そうだけどさ……。


 そんなことは分かってるよ! でも……。


 あんなに優しくて、誰よりも強くて、かっこよかったのに……。


 私が知らない一年の間に何があったんだろう……。

 ※



「高坂ー!」


 ん? 誰だ?


 俺は不思議に思い振り返る



「誰かと思えば帝一か、なんだよ全く急に……」



「お前またあのかわい子ちゃんに、口説かれてんの?」



 ったくこいつは、そんなんばっかいいやがって


「そんなんじゃねぇよ。ただの中学の後輩だ」



「まぁ細かいことは飯食いながら聞くとする。今日はどこ行く?」



「お前昨日も行ったじゃん、いいよ別に」



「んな連れないこと言うなや、俺とお前の仲だろ。久しぶりに寿司食いたいから、回転寿司行くか」



 俺の意見はガン無視かい。まぁいいけどさ……。



 ※


「いらっしゃいませー、2名様でよろしいですか?」



「はい、出来ればテーブルでお願いします」


「でしたら25番の席にお座り下さい」



 帝一が居ると、店員さんとのやり取りを、してくれるから楽だ。俺がやると何故か、毎度怖がれるからな。






「さぁて何食べる」



「あのな、着いてきたはいいが、俺そこまで腹減ってねぇぞ」



「別に良いんだよ、本題はそこじゃねぇし。腹減ってねぇならここドリンクバーあるんだから、それ飲んどけ。とりあえず俺はサーモンとイカ、マグロあたりでいいか。それとドリンクバー2つっと。送信!」


 しかし便利になったものだ。回転寿司ですらタブレットで頼む方式に最近ではなってるからなぁ。


「高坂ついでに俺のも持ってきて、いつものでいいから」


「あいよ、大体お前と飯食いに行くと、動くのは俺だもんな」


 帝一は鼻で笑いながら話す。


「そこら辺はお前の仕事じゃねぇか」


 はいはい、分かりましたよー。どうせ俺はこき使われる運命ですよー。


 そんなことを考えながらドリンクバーの前まで行く。


 あいつのいつものは、コーラの氷なしという、なんとも言えない、めんどくさいような、めんどくないようなものだ。


 二人分の飲み物を持ち、席へと戻る



「んで、お前あのかわい子ちゃんのこと、どう思ってんの?」

 


「どうって言われても、んーー後輩?」


「ちげぇよそういうことじゃねぇわ、可愛いとか、なんかもっとこうあるだろ」


 相変わらずお前は、表現が抽象的だな。


「んなもん、何も思ってねぇよ。第一お前はあの事知ってんだろ」



「あぁ知ってる。知ってるからこそ言ってんだよ」



「と言うと?」



「そろそろ自分に課した鎖……外してもいいと思うぞ俺はな。何があったかは、お前の交友関係の中で俺と、洸大、錬太郎くんが1番知ってる。俺達はお前の、悔しさ、怒り、虚しさ分かっているつもりだ。でもな前に進まねぇのは、話が違うぞ。あいつだってそれは望んでねぇだろ」




 分かってる……、帝一そんなことは分かってんだよ……。


 でもな、無理なものは無理なんだよ……。


「帝一とこの話するの何度目になるかな……、でもな正直俺は、日吉にとっては、俺なんかよりもっと良い奴が、居ると思うぞ。大事な人間死なせた、人殺しよりもな」



 帝一は俺に、箸を向けながら言う


「バカやろう! それはおめぇが決めることじゃねぇだろ。第一……奈美がお前のこと恨んでるんけねぇだろ! あいつの遺書読んだなら、どうするべきかなんてのは、1番お前が分かってんだろ!」



「恨んでない……か、恨んでくれた方が楽だったのかもな……。でもな帝一、大事な人間が辛いのに、目の前で何も出来なかった、俺には今後幸せになる権利なんかないと思う。確かに日吉は、優しいし、こんな俺を相手にしてくれている。今俺の周りにいるのは、帝一と洸大と日吉だけだろうな。もしかしたらあいつを俺は、好きになってたかもしれない。でも今はもう無理だ……」



「幸せになる権利なんかないだ? 本気で言ってんのかそれ? だったら1発殴るぞ! 奈美がな、そんなこと望んでるわけねぇだろ!」


「確かにあいつは幸せになれって言ってたな。それは置いといて、日吉はこのことを知らない。それを知ったら幻滅すると思うけどな。」



「さぁな、そこは本人次第だろ。だがこれだけは言っとく。今のお前と仲良くするやつなんて絶対にそう多くない。現に4人だけだろ? これは親友として言う。日吉のことは大切にしろ。俺ら3人は別に腐れ縁だから良いけど、あいつはお前のことを、追っかけてまで、相手してんだ。そんな人間そう居ねぇぞ」


 確かに一理あるな。でもあいつはなんでそんなに、俺の事追っかけるんだ? あの頭の良さでわざわざ定時に来てまで、俺あいつとの絡みそんなに無かった気がするが……。


 今度聞いてみるか。


「良し! 話も終わったし、腹もいっぱいになったし、一服して帰るか」



「そうするか」

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