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ロケットパンチ

作者: HAL model

嫌いな食べ物って どうしてあんなに嫌いなんでしょう。

食卓に乗っているだけで もう絶望的な気持ちになります。楽しいはずの食事が拷問に変わる瞬間ですよー!

嫌いな食べ物



うわぁ これ入ってる。

この口の中に ぎゅわっ て拡がるエキスの感じ。

噛んだ時のギュギュって感触も耐えられない


湧き上がる嘔吐感

何度も えずき その度に涙が溢れる


なんとも我慢できない

細胞レベルで受け付けない

頭から爪先まで充満するこの拒絶感



慌ててお店のトイレに走り

ウオシュレットの便器に向かってリバース。

口から鼻から

怪しい液体をネバネバさせながら

涙を流してる。


私はネギが嫌い。



嫌いと言う単語で表現できるレベルじゃない。

蕁麻疹が出たり 呼吸困難の症状が出ないだけで

食物アレルギーだと思う。


職場の同僚との 飲み会で楽しく飲んでいたのに、私ともあろう者が油断した。


皮 かと思って手にした焼き鳥は


ねぎま だった。


手元のジョッキを気にして

掴んだ串をしっかり確認していなかったの。


クチに入れてパクっと噛んだその瞬間

ぎゅうう とヤツを 歯が潰していく感触。

溢れ出るネギ汁 口の中に拡がる ケミカル臭のような独特の味覚。


ぞわぞわと 足の裏から 鳥肌が立ち上がってくるのがハッキリとわかる。

鳥肌は一瞬で腰をめぐり背中を経由して 頭の先まで走り抜ける。


「ゔ ゔぇゔぇゔぇえええええええええええ」




とても可憐な独身女子から漏れたとは思えない獣の咆哮のような唸り声をあげトイレに走った。


「ゔぉえええええ」


そして 鼻からも液体を垂らしながら

リバースの真っ最中。


私がたとえ菜々緒レベルのイイオンナでも

100年の恋も冷めるようなシチュエーションだけど

なぜか 職場で1番人気の セクシーイケメンが心配そうについてきて背中をさすってくれていた。



いや、酔ったわけでは無いのだよイケメン君

優しいイケメンって ものすごい破壊力。


きっと私は 口の端に お通しの塩キャベツでも付けながら べろべろに吐いていたと思う。

しかも酔ったのではなく 嫌いなネギで。

絶望的にカッコ悪い。




思い出すと まだ幼かった子供の頃、

幼馴染とよくお互いの家を行き来して遊んでいた。

私は女の子のお人形を持ち 幼馴染は 戦隊モノかロボットのソフトビニールの人形を持ち

それで どうやってお話が成り立つのかわからないお人形ごっこをしていたように思う。



どういう流れでそうなったのかは覚えていないが

私は幼馴染の持っていたロボットの手を引っこ抜いた。何か パンチが飛ぶのだという そのシーンを再現していた。

私はなに気なく

引っこ抜いたお人形のロケットパンチを口に咥え

そして歯で ぎゅうと噛み締めた。


質の悪い 塩化ビニル樹脂が歯で潰れ

苦いようなケミカル臭が口の中に拡がる

明らかに口に入れてはいけないであろう有毒な何か。


その時の口に広がった臭いと口の中の感触

それは 凄まじく強烈に私の脳に刻み込まれた。

細胞レベルで拒絶しなければいけない物質として。




どこで どう間違ったのか

その口に広がった恐怖体験の記憶は

その後、口にしたネギの味と結びついてしまい現在に至る。



だから私がネギを口に入れた時

私の口の中には 質の悪い塩化ビニル樹脂の

ロケットパンチが入っているの。

どうやったら飲み込めるというの??






「その話、もう何十回も聞いたよ」

パジャマの旦那が あははとまた笑ってる。


だって、食べず嫌いだとか いうんだもの。


私がネギ嫌いなのには

このような壮大な物語があるのですよ!


「血液サラサラになるんだってTVで言ってたよ」


旦那が まるでホトケサマのような

温和な顔で笑って言う。


ええい ロケットパンチで

血が綺麗になんかなるものか。



旦那は

あの背中をさすってくれたイケメンではない。


もう6年くらい経つのかな。


私がトイレで鼻水やら何水やらを垂れ流していた時

旦那は 上司の説教タイムに捕まっていたそうだ。

地味なタイプの旦那はいつも損な役回りだった。



あのイケメン?

そりゃあ イイ男で セクシーだったけど

本当か嘘か アレコレ噂が絶えなかったし。



チョッピリ味見したらさ


地味でも美味しいご飯なのか

ロケットパンチなのか

すぐわかるじゃない。


飲み込めないわよ ロケットパンチなんて。




ちょっとオトナな ムフフフーな感じで幕です。

チョッピリくらいは 味見しないと

どんな味なのか わからないですものねw


楽しんで頂けたでしょうか

読んで頂きありがとうございました。

また遊びに来てくださいね!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 嫌いなモノは誰より早く、野良猫並みの嗅覚で察知するんですよね。 自分はゴキブリです。 そうそうあるある、分かる分かると思いながら読みました。 面白かったです。
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