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 私は今、成田からニューギニア航空直通の飛行機に乗りこんでいる。

 疑問がふと頭をかすめた。アオは何をして暮らしているのだろうか。彼女は警察に自首した。殺人なら懲役刑でもおかしくない。しかし、彼女はこうして手紙を書いている。エアメールに書かれた住所を検索してみたが、普通の集合住宅地で、刑務所からの投函というわけではなかった。普通に暮らせている。だが、何故だ。

 頭に浮かんだのは、今西教授がM族に下した最終評価だった。

 教授は言った。目の上のたんこぶと。彼は日巴企業と国合同の、総合的な資源開発に協力していた。私の提案に嬉々としていたが、本来は彼らを疎ましく思っていたのではなかろうか。

 そんなおり、村の対日感情の悪化と、私の失踪事件が起こった。

 教授は、M族の恐ろしさを把握しつつ、私を泳がせて利用し、上手くいけば開発交渉を進め、失敗すれば私の犠牲を利用して非人道的なM族の行為を取り上げ、後ろ盾のなくなった彼らを治安維持と人命救助の金看板で叩き潰し、開発を進めて日巴の共同経済の促進を図ろうとしていた。そう取れないだろうか。

 幸運にも私はM族のアオによって生還し、彼女にどうか救いの手をとお願いした。そこで、彼らは私とアオを日巴の変わらぬ友情としての象徴としていつでも仕立て上げられるように、アオをお咎めなしにした。残されたM族が政府によって排除された、その裏で。無辜の民を手にかける彼らの生き残りが行方不明になっても、誰も何も思わないだろう。

 私は自分の想像にうすら寒い思いがした。

 教授が私にしたODA職員の話は、実は取引だったのではないか。

 アオがどこにいるのか知らないかと聞いて、二週間後、エアメールが届いた。このタイミングは、不自然ではないのか。

 彼らはアオを手中にしていて、私と教授との会話を聞きつけ、彼女に何か手紙を書いてみてはとそれとなく促したのではないか。私にその真意をそれとなく知らせるために。君は賢い。きっと分かってくれる。教授はそう言った。

 私は教授に連絡し、件の職員にも会いにいこうと思った。どんな裏があれ、アオはそれで助かったのであれば、それでいい。手を組もうじゃないか、この社会のシステムと。

 空港の大きな窓で、悠一と父と母が、横一線に並んでどこからでも見えるように大きく手を振っていた。

 私は彼らに手を振りつつ、もう片方の手で、母と作ったイチゴのジャム缶を握りしめていた。

 私とアオは、罪を共有していた。母の目を盗んでジャムから砂糖をすくった罪、そして、アオが人間として凶行に及んだ罪。そして――

 飛行機が滑走路から飛び出していく。

 アオが懺悔する私への罪を、すくって共有したかった。

 そうすれば、また元通りになれる。そんな気がした。

 

                                        <了>

この度の執筆に当たりまして、吉田敦彦著「日本神話の源流」を参考にさせていただきましたが、

物語に沿った意図的な引用と解釈をいたしました部分がありますことを、ここにお詫び申し上げます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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