新たな世界と転生の賢者
転生して1年、しっかり周りの状況が把握できるようになった
ここは日本という国の東京という地域らしい
誰もいないのを魔力で確認して部屋を歩きながら呟く
「まさか・・・転生が成功するとはな」
前の世界は確かに滅びた、仮に前の世界で転生しても生き物がいないのだから生物として生まれる事は不可能だ
世界が再生した?
神々は自らも含めてすべてを破壊した、それもないだろう
「ただ一つ言えるのは・・・楽しくなってきたという事だな」
これまでの常識が崩れた事、初めて見る精霊、魔法物がある事
全ての知識を極めた私ですら知らない事がまだあるという事に心を躍らせる
人が近づいてくる気配を感じすぐ寝具に横になる
一般的に齢1歳が苦も無く歩き普通にしゃべるのは異常である可能性が高い
寝具の寝心地は一級品で、広さはあまりないが尋常じゃない弾力、柔らかさがあることから
前の世界でいうところの貴族に値すると予想している
寝具の寝心地にうっとりしていると部屋の扉が開かれ両親が顔を見せる
「けんちゃん~ママでちゅよ~」
「翔子!僕が先に健司をあやす番だぞ!?」
・・・前の世界では100は超えてたからな、中々どうして新鮮な物がある
この一年は子供のおままごとに付き合う感覚で適当にあしらっているが
「翔子!健司!これから空港に行って海外旅行だぞー!」
海外旅行、遠征のようなものだろうか
まだ日本の事すらイマイチわかってないのだが・・・両親は気が早いらしい
母親が俺を抱きかかえて魔道具に乗る
操作は父がするらしいが、元いた世界にこのような魔道具はなかった
全身を鉄で覆い、搭乗スペースは快適
ブルン!と大きい音を立ててこちらの世界の精霊を爆発させている
初めて見る魔道具の考察をしていると母が笑顔で説明してくれる
「けんちゃんはブーブ初めてだもんねー」
「いやいや翔子!この目つきを見ろ!やっぱ男の子だなぁ・・・大きくなったら僕が良い車買ってあげるからな!」
どうやらこの魔道具はブーブー、車、二通りの呼び方があるものらしい
あの爆発精霊とも今後上手く付き合っていかなくてはならないな
そうこうしている内にブーブーが動き出す
心の中で感嘆を覚える
これはすごいな・・・
私程ではないがかなりの速度で移動している
馬車等とは乗り心地も早さもくらべものにならないだろう
母が外の風景が見える所まで私を持ち上げる
外を見るとカラフルな家が後ろに流れていくように見える
空港とやらに着くころには興奮で過呼吸になったので魔法で治した
ブーブーとは比較にならない程の轟音が響く
巨大な鉄の塊が空を行ったり来たりしている
ドラゴンの亜種か!?どちらにせよ今の私では両親を守る事はできないぞ!
「健司!あれが飛行機だぞ!」
まさか・・・!あれも人間の叡智の結晶だというのか!?
叡智を極めたと言われ、自身もそう思いあぐらをかいていた私を殴りに行きたい衝動にかられる
同時に知識欲が沸いてくる
このまま拘束されていては自由に見聞を広める事ができない
両親には悪いが・・・
私は魔力を集中させ両親に一時的な忘却と記憶の改ざんの魔法をかける
魔法を受けポカンとしている両親の手から逃れて転移の術を使い自宅に戻る
「これで邪魔者はいなくなった・・・」
ぐー
そろそろ腹が減ってきた
母はホットプレートやコンロなるものなどを使い固定化された魔法を使っていたようだが私にはまだ扱えない
試しにコンロに火の魔術、精霊を集めてみたが起動しない
「ふむ・・・これなら0から作り出したほうが早いか」
まずは腹を満たすべく魔道具の解体は後回しにする
出来上がった離乳食を口に放り込みながらこれからの事を考え頬が緩むのであった