#7 人形転生薬 その3
「ちょっと、ジャスパー先生。この作品に「異世界転移」のタグをつけないといけないレベルだよ!」
「次のロリショタ転生薬はすぐに薬の効果が切れるわけではありません。それまでには現実世界に戻ることができると思いますので、その「異世界なんとか」は必要ないと思いますが……」
黒川先生、何を突然言い出すと思いきや……。
タグ及びキーワードのことですね。
読者のみなさま、この作品には「異世界なんとか」のタグはつかないので、そのような作品が苦手な方も安心して読み進めていただけると幸いです。
「ハイ。黒川先生、到着しましたよー」
僕は彼女と瞬間移動を使い、学校の理科室から仕事場である診察室まで一瞬で移動してきた。
僕は肘で電気をつけ、デスクの上に縫いぐるみやフィギュアを置く。
「凄い! 気づいたら本編の第9話に出てきた診察室だ!」
「そんなに僕の診察室に感動しますか?」
「そりゃ、感動しますよー。普段は作品絡みの部屋とかに足を運ぶことはあまりないのでー」
確かに、本編には診察室は何回か出てきており、最初は「図書館みたい」だという文面が書いてあったような気がする。
僕はそこまでは意識していなかったが、資料とかがあったとは思わなかった。
あとは……白衣姿なので、友梨奈さんからしたら、どこかの医療関係者か研究員だと思われたかもしれない。
そして、次の瞬間……。
突然、ドスンっと音を立て、「わぁ!」という声が耳に飛び込んできた。
「ここはどこ!?」
早くも薬の効果が切れた者が出た模様だが、黒川先生が見当たらない。
この後ろ姿は……勇人くんが周囲を見回していたが、「松井くん、重い……」と、縫いぐるみから手放し、両手をバタバタしている人物がいる。
おそらく彼女だろう。
「く、黒川先生、すみません!」
「……はやく……おろしてー……」
「本当にすみません! あれ、みんなは?」
「まだ、こちらですよ。そして、こちらは僕の仕事場である診察室です」
勇人くんが黒川先生から離れる。
僕は彼女が持っていた縫いぐるみを拾い、デスクの上に置いた。
「そうでしたか。まだ、みんなは人形のままなんですね……」
「そうですね……誰がどの人形なのか分かりませんからね……」
「ちなみに、僕はなんだったんですか?」
「それはみなさんが戻ってきたあとのお楽しみにです」
勇人くんと話している中、早紀さんと聡くんが「「うわぁ!」」と2人同時に戻ってきたようだ。
「ボク、凄く驚きました。人形でもお腹が空くことを」
「工藤、少しまともな感想をいいなよ」
「それしか感じなかったもん」
「僕はヒトとして手に触れたりしているものなのに、モノとなったら、物事を発することができないことが辛かったですね」
「秋桜寺くん、いいこと言うね!」
「工藤の感想が酷かったからなー」
「もう! ところで、黒川先生は?」
「黒川先生はボクのせいで……」
「こうなっているのです」
早紀さんと聡くんは僕から質問したわけでもないのに、感想を述べてくる。
やはり、最後は黒川先生のことになってしまったが――――。
◇◆◇
人形転生する時も帰還する時も時間差が現れた。
あれから約1日後に柚葉さんと凪さんが、約2日後にまひろさん、そして、最後に友梨奈さんが約3日後に帰還してきた。
帰還して数日間は病室で副作用がないかを確認する。
「みなさん、お疲れ様でした。この人形転生薬は転生時と帰還は個人差があることが判明しました。肝心の副作用もありませんでした」
「「本当ですか!?」」
「えぇ」
彼らはその実験結果を聞き、安堵の声を漏らした。
僕は「どんな人形だったか気になりませんか?」と問いかけると、気になっている模様。
「黒川先生からお願いします」
「ハーイ。秋桜寺くんと荒川さんはフィギュア。白鳥さん、松井くん、友梨奈さん、工藤さん、新井さんが縫いぐるみでしたー」
この実験を最初から見てきた黒川先生が縫いぐるみとフィギュアが誰だったかを告げる。
「そうだったんですね」
「まさか、私がフィギュアだったとは驚きです!」
「なんの縫いぐるみかなぁ……」
「ボクはクマの縫いぐるみが好きだなぁ」
「案外違うものかもしれないよー」
というわけで、1つ目の実験である「人形転生薬」は終了した。
今度は「ロリショタ転生薬」。
どんな方向になっていくかは僕には分からない――――。
次回からは「ロリショタ転生薬」編です!
2016/11/05 本投稿
2016/11/05 前書き追加