#17 はじめてのおつかい(柚葉さん・まひろさん・聡くん編) その2
今回のおつかいルートはこのマンションを出て、反対側に回ると信号がある横断歩道が現れる。
そこを渡り、まっすぐ突き当たりにコンビニエンスストアを右に曲がり、さらにまっすぐ行く。
本来はそこには横断歩道があるが、歩道橋も存在する(それらはどちらを使ってもいい)。
それを通過したら、おもちゃ屋であるトイザうすでクリスマスツリーの飾りを買って帰るというものだ。
しかし、ここで注意点がある。
そこには子供の誘惑であるおもちゃがたくさん売られているのだ。
彼らはその誘惑に負けずにクリスマスツリーの飾りを買いに行けるかどうかが焦点となる。
◇◆◇
聡くん達も早紀さん達と同様にエレベーターを待っている。
『あっ、エレベーターがきたよ!』
『ほんとうだ!』
『のろう、のろう!』
さすがに今回は「低い方のボタン」を押してくれるのかと思いきや……。
『とどかなーい……』
『わたしもやってみるー』
『ぼくもー』
案の定、今回も普通の高さのボタンに手を伸ばそうとしている。
ちなみに、代わる代わる押してみようと背伸びをして頑張ってみるが、全く届かない。
『なら、もう1かいずつやってみようよ!』
『そうだね』
『うん!』
3人は再び届かぬそのボタンを押そうと必死だった。
◇◆◇
そのシーンを見ていた僕達はほぼ同じタイミングでこう叫んでいた。
「「うぁぁぁ……ちがーう!」」 と――――。
やはり、このシーンを何度見てもそこだけツッコミを入れたくなる。
黒川先生も同じところにツッコミを入れていたので、おそらくそこで何かを感じたのだろう。
「先ほど、ジャスパー先生が1人で実況中継をしていた訳が分かりました! コレはコレでツッコミどころが満載で面白いですね」
「まぁ、僕は先ほどは恥ずかしながら実況中継と言われながら拝見させていただきましたが……」
からからと笑っている彼女に対して、僕は苦笑を浮かべながら、答えるしかない。
◇◆◇
僕達が話している間に聡くん達はマンションを出ていた。
おそらく彼らは低いところにボタンがあることに気づき、それを押したのだと思う。
『いちばんしたまでついたね』
『そうだね』
『トイザうすまでしゅっぱーつ!』
『『おーっ!』』
柚葉さんを先頭に聡くん達はマンションの反対側にある信号がある横断歩道へ歩き始めた。
『まいごにならないようにしないとね』
柚葉さんは聡くんとまひろさんの手をつなぐ。
そうすれば1人だけ迷子にならずにおつかいに行けると彼女は思ったのだろう。
彼女らは仲よく横断歩道を渡り切り、次の目印のコンビニエンスストアへ向かってゆっくりとした足取りで歩いていた。
『ぼく、このみち、とおったことがない……』
『あたしも……』
『わたしも……』
どうやら彼らはこの道を通ったことがなかったため、警戒しているのだ。
その時、『どうしたの?』と見知らぬ女性に話しかけられた。
『あのね、あたしたちはコンビニにいきたいんだけど、みんなでまいごになっちゃったの……』
まひろさんが事情を話す。
その時の彼女の目には涙が溢れていた。
『あら、迷子ではないわよ? ずーっとまっすぐ行くとコンビニがあるはずよ?』
『ほんとう?』
『ええ。まっすぐ行ったところだからね』
『『ありがとう!』』
彼らはその女性にお礼を言う。
まひろさんは自分の服のポケットからハンカチを取り出し、涙を拭き取り、彼女らは再びコンビニエンスストアに向かって歩き始めた。
2016/12/21 本投稿
※ next 12/22の0時頃更新予定




