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#15 はじめてのおつかい(早紀さん・勇人くん編) その3

『だがしやさんどこにもないねー』

『そうだねー』


 早紀さん達は駄菓子屋がある方向とは異なり、反対側の方向にある公園のブランコで遊んでいた。

 勇人くんも彼女と同様にキコキコと動かしている。


『ゆうとくん。ボクはまいごになっちゃったとおもうんだ』

『さきちゃんもそうおもう?』

『うん』


 彼女らはブランコから降り、水飲み場で水を含み、再び駄菓子屋に向かって歩き始めた。



 ◇◆◇



「おや?」


 僕は今頃気がついたが、早紀さんは「ボク」、勇人くんは「僕」と言っていたような気がする。

 そういえば、この「ロリショタ転生薬」の場合は服薬した人の年齢が若ければ若いほど、その人の一人称や性格をそのまま引き継ぎ、体型だけがロリショタとなる。

 実際に僕や黒川先生くらいの年齢になるとどうなるかは分からない。


「実際に大人が服薬していないから分からないのか……」


 僕は頬を掻きながらそのようなことを呟いていた。


 この薬に関しては少し改善しなければならない点が見えてきた。



 ◇◆◇



 その頃、早紀さん達は『だがしやさん……』と言いながら歩いている。

 彼女らは公園から出て、純粋に反対方向に向かっているので、かなりの距離を歩いているかもしれない。


『あれ? さきちゃん?』

『どうしたの、ゆうとくん?』

『あそこにあるの、だがしやさんだよね?』


 勇人くんが何かを見つけたようだ。

 彼が見つけたものは大きな文字で『駄菓子(だがし)』と書いてある看板。


『そうだね! そのてまえかおくかに、ぶんぼうぐやさんがあるのかな?』

『いってみよう!』

『うん!』


 彼らは駄菓子屋に向かって走り始めた。



 ◇◆◇



「やっと、駄菓子屋が近くなった……」


 僕が安心したせいか椅子の背もたれに寄りかかり背中を伸ばした瞬間、部屋の扉がトントンと叩く音が耳に入る。


「なんかやけに騒がしく感じたんですが……」

「黒川先生、聞いてたのですね?」


 まさか、黒川先生に聞かれるとは思っていなかった。

 僕の突っ込みとかは筒抜けになっていたとは――――!


「ハイ。実はこっちに声が漏れてましたよー。1人で実況中継ですか?」

「ソウデハアリマセンヨ?」

「ジャスパー先生、なぜ片言! そうではなければいいんですが」


 僕は思わず片言になってしまったが、まだまだ彼女らのおつかいは続く。



 ◇◆◇



 そうこうしている間に早紀さん達は駄菓子屋に着いていた。


『あらあら、どうしたの? おつかいかな?』


 駄菓子屋の店主であろう女性が彼女らに話しかける。


『うん。ぼくたちはぶんぼうぐやさんにいきたかったけど、まいごになっちゃって』

『このちかくにぶんぼうぐやさんはあるの?』

『えぇ。文房具屋さんなら、この角を曲がって、少しまっすぐ行ったところにお薬屋さんがあって、その隣が文房具屋さんだよ』


 その女性が指を指しながら早紀さん達に道を教える。


『『ありがとう!』』

『気をつけて行くんだよー!』

『『ハーイ!』』


 彼女らは駄菓子屋の店主にお礼を言って、その場をあとにした。



 ◇◆◇



 早紀さん達は薬局を見つけ、文房具屋に到着した模様。


『やっとついたー!』

『そうだね!』


 彼女らは自動ドアを潜ると『いらっしゃい!』と男性の声が聞こえた。


『『こんにちは』』

『おっ、君達はおつかい?』

『うん』

『そうだよ』

『もし、モノが届かなさそうだったら呼んでな!』

『『わかった!』』


 2人は買うものは覚えているかなぁ……?

 勇人くんがバッグから黒川先生から預かったシャープペンシルの芯の容器を取り出した。


『まずはコレを探そう』

『うん』


 彼らはその容器を手がかりに探し始める。

 似たような容器で芯の太さが違うものだと使うことができないので、真剣な眼差しで見比べながら探していった。


『やっとみつけた!』

『でも、とどかないよ』

『おじさんにとってもらおう。さきちゃん、ちょっとまっててね』

『うん、わかった』


 勇人くんは店主を呼びにいく。

 その時、シャープペンシルの芯の容器は店主の手の中にあった。


『おじさん、あのね。ほしいのがとどかないんだ』

『どれかな? 本当だ、僕達の身長じゃ届かないね』


 その男性は容器と品物を見ながら1つ手に取る。


『コレかな? 1つかな?』

『そうだよ。2つかう』

『そうかい。じゃあ、2つな!』

『ありがとう! おかねをはらわなきゃ』

『2つで216円な』


 勇人くんは財布から300円を店主に渡した。

 彼はシャープペンシルの芯の空容器、品物を小さいビニール袋に入れ、おつりと一緒に手渡す。


『毎度ありー!』


 彼らは文房具屋から出、マンションに戻ろうとしている。



 ◇◆◇



 僕はモニタリングルームを呼んでいる別室から黒川先生達がいるところに顔を出す。


「黒川先生、早紀さんと勇人くんがそろそろ帰ってきますよー」

「先ほどまでいろいろありましたが、もうおつかいの1つ目が終わるのですね」


 確かにここまでくるまでにいろいろあった。

 僕のツッコミのうるささも一旦は終わり。


「あっ、おにーさんだ」

「おにーさん、いままでなにしていたの?」

「ちょっとお仕事をしていました」

「おしごとかぁ……」


 ロリなまひろさんと柚葉さんに言われている時に「「ただいまー!」」という声が聞こえた。


「「おかえりー」」

「おかえりなさい」


 ここは全員で出迎える。

 次の瞬間、先ほどまではロリショタだった早紀さん達が戻っているではないか!?


「あれ? ボク達、戻ってる?」

「戻ってるよね?」

「早紀さんと勇人くん。この薬はこちらに着いた時に効果は切れました?」

「確かに……」

「そうですね」


 彼女らはこちらに着いた時に薬の効果が切れたと言っていたので、ひとまずは成功かもしれない。

 まだ、あと2組くらい実験が残っているが……。


「あっ、黒川先生に渡したいものが……」

「買ったものとバッグです」

「ありがとう。なぜにシャーペンの芯が2つ?」


 松井 勇人くんが彼女にビニール袋とバッグを返した。

 やはり、ツッコムところはシャープペンシルの芯が2つのところ。


「い、一応、念のためです」

「松井くんの判断で予備も買ってきました!」

「おおっ! 本当にありがとう。そして、お疲れさま!」

「お疲れさまでした」


 さて、2組目はどなたが「はじめてのおつかい」に行くのかが楽しみだ。

2016/12/19 本投稿

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