第1話
改稿中第1話を書き直しました。
私は、小さな村に住んでいました。異世界の記憶持ちです。何の役にも立ちませんけど。そう、記憶があっても田舎の異世界。変な事を言えば狂った?変な子扱い間違いなしの、王都から離れた村の村人その1です。
生まれ変わっても長い物には巻かれろな、性格の気弱な村人です。そんなに美人ではない私が、村一番のイケメンで、権力持ちの村長の息子に結婚を申し込まれて断れる筈もありません。
思えば物心ついた頃から、どこが気に入られたかわからないまま、小さい頃から付き纏われ、周りの女の子に嫌われ仲間外れにされ意地悪や悪戯されながら過ごしていました。不自由な事もありましたが、食べる物や着る物も貢がれてましたので、困る事はありません。幼馴染のマリリンが唯一仲良くしてくれましたので、寂しくはなかったからです。
「勇者様!神託が降りました。私と一緒に宝珠を収める旅に出てもらいます」
私の夫は勇者だそうです。物語に出てくる本物が、私の結婚相手!宴の最中に押しかけて来た煌びやかな人達は、神託に従ってやってきたそうです。押しかけて来た一団の1人が王家の姫様、王女様で聖女様だそうです。驚きました、宴の邪魔もそうですが、王女様の夫になった幼馴染に注がれています。周りのお付きの人達も私達に冷ややかな視線を送ってきました。
「王家と神殿にからの勅命です。聖女である王女様との旅を、断る事は出来ませんよ」
お付きの人が私達に向かって王命と神殿からの勅命だ宣言しています。この世界に生まれ変わって初めて見ましたよ。物語にある風景、御触れの用紙を上に掲げ読んだ後周りに示す様子。本当にこんな風にするんだ〜、と心の中で呟きました。
王家に逆らう事など出来ません。勇者となった夫は、旅に強制的に連れて行かれるのは間違いなく本当です。まさか自分が小説の主人公の妻!そしてモブとは!
「さあ、勇者様お急ぎください!」
聖女様付きの騎士と、魔法使いの人達が急がせてます。勇者である夫の腕を、お付きの人達が両手を拘束して引っ張っています。逆らえず渋々立ち上がった夫を連れて、王女様の機嫌を損ねない様に動いています。でも、結婚式の真っ最中憤りを感じている夫は無理矢理連れて行こうとした人達に叫んだ。
「待ってください!俺は、結婚式の最中だ!後からにしてくれて!」
うわーっ!やめて!聖女様のお付きの人の顔が怖い!聖女様に後にとは!周りにいる親や親族の人達の顔が青ざめてます。従者も騎士も魔法使いも何故!断る!みたいに驚いてます。
気持ちは分かるけど、今言っても揉めるよ。と思っても口に出さない。聖女様の怒りが、夫本人ではなく私に向かって放たれた。
「結婚式?それは破棄してください!これから宝珠を収める旅に出るのです。穢れを纏うわけにはまいりません」
私を睨んだ聖女様は私が穢れの元みたいな風に言った。勇者になった夫は顔を見れば怒ってるのが分かる。昔から、もてた夫は美人には慣れてるのか聖女な王女様を見ても好きではないように見える。もてて苦労したってのもあると思うけど。結婚をなかった事にすると言われ呆然としている。
「聖女様の言う通りです。宝珠を収める勇者は独身でなくてはなりません」
「神官である私が認めます。これから儀式をして無効にしましょう」
本にはそんな事は書いて無かったよね?本当かな?事実逆らえないし、一緒にいてもトラブルになりそうで怖い。気の小さい私には、王女様とやり合うなんて気はありません。
一目惚れしたんですね王女様!どうぞ、どうぞ、差し上げます。元々イケメンの彼の側にいるのはちょっぴり辛かったので。腕を掴んで、私を睨んだままの王女様の姿が彼から見えないので良かったですね。見えたら引かれそうですよ。
「嫌だ!やっと結婚したんだぞ!ミリを俺の物に出来たのに!」
残念ですがお別れです。お世話になりました。貴方の事はきっと王女様が幸せにしてくれると思います。泣きそうな顔をしている彼には可哀想だと思いますが、これも運命ですよ!潔く諦めてください。薄情な妻でごめんなさい。
「諦めてください。旅が終わらない限り自由にはなりませんよ」
お付きの人の言葉に、絶望的な顔をして泣く彼(元夫)ずるずると引っ張って行きます。皆の言う通りに結婚式を挙げた日だった。
お付きの神官に、結婚を無効にされてうな垂れたまま連れて行かれてます。聖女に、世界の平和の為の宝珠を収める勇者だと神託が下ったのでは、逆らい様にないのですから彼の両親も泣く泣く息子を見送ってます。
「絶対戻る!待っててくれ!」
そんな言葉を残して馬車で旅立って行きました。多分帰れないと思いますよ、王女様が逃すとは思えませんから。私は大丈夫ですから幸せになってください。
「無理しないでね。いってらっしゃい」
人目もあるので、馬車が見えなくなるまで見送りました。元々流されやすい私が、断れずに惰性で結婚をしたのが間違いだったのです。神様は見てるんでしょうね。こんなイベントを、丁度良い感じに持って来られて別れられるのだから。モテる男の奥さんでいるのは苦痛だと考えていたので好都合でした。
「クラウス、行ったようね」
私のたった一人の友達マリリンが言います。唯一、村で私と仲良くしてくれた幼馴染です。美人で気立ての良い彼女には、隣の町にお金持ちの婚約者がいます。幼馴染のマリリンが私を心配して来てくれたのでした。落ち込んでない私を見て、首を傾げてました。
「ええ、聖女で王女様の命令には逆らえないから」
彼を見る時、目をハートにさせる聖女様が、苦しい旅に出る勇者様の負担になると、しっかり私と彼の結婚を無効にしたのはわざとですね。私と言う妻の存在は邪魔だった。お付きの騎士に、魔法使いの人達が、ひそひそ話をした後すぐ言い出しましたから間違いないです。
彼を、さっさと連れて行き話も碌々できませんでしたので確信に変わりました。別れの挨拶もそこそこに旅立ってしまったのです。1秒も、私の側に彼を置いておきたくないと、王女様が命令してたのが聞こえました。
この世界では何百年かに一度神託が降り、険しい神の山と呼ばれる場所にある神殿に、宝珠を収める勇者と聖女が生まれると言われています。世界中の国に「聖戦神託の勇者」と言う本があり、人々に語られています。大まかな話はこうです。神に選ばれた聖女と勇者が、収められた宝珠に聖なる力を注いで闇を祓うと言われています。勇者は聖女を守り、宝珠を聖樹に嵌め込むことの出来る人物として神に選ばれる人です。
「でも、良かったの?結婚した日に無効にされて」
マリリンが心配して聞いてきます。結婚式のに出てくれた貴重な友人には気の毒ですが、狭い村なので断れなかっただけなので、気にしていません。よくこう言われましたね。
「美人でも無い貴方がクラウスと一緒に居るなんて生意気よ!離れなさい!」
「そうよ!マリリンなら分かるけど、貴方じゃ納得できないわ!」
「クラウスが離れないなら、貴方から離れなさいよ!」
プロポーズされた時も、やんわり断っていたのに彼女達が押し掛けて来て散々非難された。
「クラウスに、プロポーズされたのに断るなんて何様の積もり!ブス癖に!」
「そうよ!クラウスが落ち込んでるじゃない!私達が邪魔してると思われたわ!貴方の所為よ!」
「クラウスが私達に説得してと相談されたわ!断らないでね!私達貴方を許さないわよ!」
周りの人達が怖かったんですよ。断るなんて何様!って感じ言われ!女の集団は怖い!今ではいい気味だ。と言う視線を感じますが元々好きじゃなかった相手なので、未練はありませんよ。聖女様に感謝です。今思い出しても、私の中では残念な出来事です。
「うん、自由に出来るから助かるわ」
晴れ晴れとした顔をしている私に、ちょっと驚いた顔をしたマリリンですが、そうねあなたはそう言う人よね。と納得してくれます。元々、彼に対してその気じゃなかった私がプロポーズを受けた事に当時は驚いてました。
「まさかって思っていたけど。……あなたって、本当にクラウスの事好きじゃなかったのね」
ため息つかないでください。それはまぎれもない真実ですが。色々苦労があったのよ。周りの視線が、私に向いて鬱陶しくなる前に村を出ようと思います。
「私、旅に出ようと思うの。このままここにいても、良くないと思うから」
しょうがない、と言う顔をしたマリリンに私は笑って言った。両親も親戚もいない身なので、これ以上この村に留まる理由もありません。本当は前に1度、この村から出ようとした時に彼に邪魔されて出来なかったのですが、今度は障害もないのすんなり行けそうです。
「止めても無駄でしょう?いい旅になる様に祈ってるわ」
仲の良かったマリリンは、私の性格を良く分かっているので応援してくれてる様です。
「ありがとう!マリリン!聖女様が旅立った今なら、誰にも気付かれないと思うから。マリリンも婚約者と仲良くね」
「ありがとう。貴方も幸せを見つけなさい」
「うん!じゃあね〜!」
混乱している今出て行けば、何も聞かれずに済むと思っています。村の人たちの視線に晒されるよりはましなのかなと。
まあ、彼も私より聖女様の方とが幸せになれると思うから。
村から離れ、近くの町を目指していましたが、何の因果か今は隣国のお城で暮らしています。本当に町に行こうとしてたのですが、偶々乗せてもらった馬車で知り合った人に、良い働き口があると言われ付いて行ったのが運の尽き。
そのお屋敷でメイドをしていた時に訪れた、留学中の隣国の王子に見初められそのまま隣国に連れて行かれました。平民な私が逆らえるはずないですよね。ドナドナの音楽が脳内再生されてました。
「君に、出会った時に運命を感じたよ」
違います!殿下の上に落ちただけです。鼻血まみれにしてすみません!
「殿下の上に落ちたのは謝ります!それは!勘違いです。他に運命の方がいます!」
私の胸で、窒息しそうになった事は本当に謝りますから〜勘弁して〜!恥ずかしいので忘れてください!この人には話が通じない!
「君の胸に包まれた私は楽園が見えたんだ。ああ!あの幸せをもう1度!」
天国のお花畑が見えたんですか⁉︎打ち所が悪かったんですね!良かった〜!助かって、死罪になるとこだった。
「そんな物ありません!気のせいです。正気に戻ってください!」
揺さぶってみましたが効果がありません。私の言葉が耳に入らないようで、恍惚とした表情で呟く殿下に鳥肌が立ってきました。自分の妄想の世界から帰って来てください!
「楽しみだよ、君のウエディングドレス姿。もう直ぐ私の妻だね」
いやああー!全然聞いてません!諦めてくれませんか?周りの令嬢達が怖いのですが!平民の私に王子様の相手は無理です!今着せられている服、恥ずかしいんですが!いくら私の胸が大きいからと言ってこのドレスでは外に出たくないです!
「へ、平民の私には無理です。考え直してください!王子様には、私よりもお似合いの貴族の令嬢がいらっしゃいます!」
平凡な私よりも、綺麗なお嬢様達が沢山います!胸が大きい令嬢も!涙を流しながら訴えますが聞いてくれません。
「心配しなくても大丈夫。君に危害を加える様な馬鹿はいない。……いたら始末するから」
「え?最後なんて言ったの?」
最後まで聞こえなかったけど背筋がぶるっと寒くなった。勇者になった夫と別れてほっとしてたのに。自由になったはずなのに!どうして!また、逆らえない様な人に捕まった。運ないわ〜!
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人物紹介
主人公 ミリ 前世持ちの普通の村人。爆乳持ち。
前世持ちだが記憶は役に立たない。長いものには巻かれろな性格。幼馴染の村長の息子に付き纏われ困っているが、周りの圧力に負けて結婚式を上げた。宴の最中に神託を持って聖女様一行に夫が勇者認定を受け旅に出てしまった。聖女様にしっかり結婚を無効にされた。気不味くなる村を出て、運良く貴族の家の下働きになれたが、訪れた隣国の偉い人に見初められ強制的に連れて行かれる。
村長の息子 クラウス 勇者認定された。
小さい頃からミリに夢中。やっと結婚できたが、聖女様に邪魔され夫の座から転落。今もミリの事は諦めていない。
聖女様 オランジュ・カボナース
ミリのいる国の王女様。勇者に一目惚れ、自分の意見が通るのが当たり前。聖女と呼ばれるが宝珠に聖なる力を注ぐことしかできない。他の聖女としての務めは無視している。本人は知らないが神殿での神官達の評価は最低。
王子様 隣国のミリを見初めた偉い人。
落ちて来たミリの爆乳で窒息しそうになり変態に目覚めた人。ミリを王城に連れて行く。