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1編です
「夜」
2階建てのコーポの窓際から
月の光が差し込んで
ページをめくる私の手を
恋人が愛しさにかられて
行うように
包み込んでくれる
こぼれた光は
文字の谷を這うように走り
紙の端から
焦げた机に流れ落ちる
そして
土壁の広野を抜け
小さな、そして年を重ねた
木目のそらをゆったりと巡り
私の目に飛び込むことで
漸く一周した
明日の空は
まだ寂しそうに泣いている
月の貴方は
本当の暖かさを持っているのだろうか
大切な日に
断りをいれる恋人のコール
そんな慰めを
私は欲しいのではなかった
有り難うございました