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心渡し  作者: FRIDAY
7/28

7.ただ幸せになってほしいだけ

 


 ●

 


「私は、ケンちゃんに前に進んでほしいんです」


 しばらくして落ち着いてから、恐る恐る訊いてみると、決然と古崎さんはそう言った。


「前に?」

「はい。ケンちゃん……女の子に人気あるんですよ。カッコいいし、運動もできるから」


 ちょっと誇らしげに言った後で、でもまたすぐにちょっと沈んだ表情になった。


「でもケンちゃん、全部断っちゃうんです。大学に進学してからは凄くモテるのに、誰とも付き合おうとしないんです。そして……」


 また、目尻から一滴流れ落ちた。


「私の命日になると、毎年私のお墓の前で泣いてくれるんです。ずっと……」


 五年。毎年。

 それをずっと彼の後ろから。

 古崎さんは、見ていたわけか。


「私は、ケンちゃんには新しい人と出会ってほしい。新しい誰かと幸せになってほしい。私はもう死んでしまってどこにもいないんです。──そうして忘れないでいてくれるのは、正直に言えば嬉しいです。でも、……でも私のことは、忘れてほしいんです。いつまでも私を忘れずにいたら、ケンちゃんは幸せになれない。私は、ケンちゃんに幸せになってほしいんです」

 


 ●

 

 

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