4.聴かせて頂戴あなたのお話
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「それじゃあ……古崎さんの話、聞いてもいいかな」
ちょうど、自然公園の中に入っていたので、噴水の周りのベンチの一つに二人で腰掛けた。
「えっと……私の話、というと」
「思いついたこと思いついた順に、好きなように話して聞かせて」
古崎さんはしばらく思い悩むように俯いていたけど、やがて静かに話し始めた。
「そう、ですね。私が……その、死んだ、のは、多分五年くらい前だと思うんです」
「五年前?」
「はい。多分、私が17歳の時です。理由は病死、だったと思います……その辺りは曖昧なんです」
「ああ、うん」
そうなっている人は、結構多い。時にはどうして死んだのかさっぱり覚えていない人もいる。
「彼は私の幼なじみで、何というか……」
「恋人同士?」
古崎さんはちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。
うん。いい笑顔だ。
「彼──江ノ島・健輔というんですけど、江ノ島君と私は、はい、恋人同士だったんです。家が近所で小さい頃から仲良くしてて、小学校も中学校も、高校も同じところに進学しました」
心もち楽しそうに、古崎さんは話す。
「小さい頃は私、その、おてんばで、よく悪戯して怒られてたんですけど、そういうときは、必ずケン──江ノ島君も連れ回していたので、江ノ島君も一緒に怒られてました。中学に上がってからはケン──江ノ島君もちょっと生意気になってきて、口喧嘩も結構やりました。いつもケン──江ノ島君が謝ってくれて終わるんですけど。成績は私の方がちょっとだけよくって、よく勝負して奢ってもらったりしてました。高校に進学するまでは、そんな感じで」
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