3.どうして皆そう思うのかな
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結局のところ、ウチと古崎さんは適当なところでお茶するということもなく、駅の周囲を散策していた。
もちろんそれはウチのナンパに難があったから(だけ)ではなく、
古崎さんと喫茶店に入る。
=古崎さんは他の人には見えない。
=傍目にはウチのちょっとイかれた独りトークショー。
てなわけで。
ウチは別に、慣れてるし、一向に構わなかったんだけど、古崎さんがいたたまれないのだそうだ。
まるで難破になりかねない。
まあ、古崎さんは何も飲めないから、お茶に誘っといてウチしか飲まないという状況にしかならないわけだしね。
それにウチも、実を言うと喫茶店の仕組みが未だによくわからない。大学の唯一の友達と一緒に何度か行ってはいる、というより半ば強引にくっついて行ってはいるのだけど、毎回サイズのところであたふたして友達に白い目で見られている。
まあその子は普段から三白眼なんだけれど。
ふむ。
「まあ、あなたに話しかけたのもウチの……趣味というか、お節介でね。今でこそ友達いるけど、去年まで友達一人もいなくてさ。小さい頃から、あなたみたいな人見かけたら話しかけてたの」
へえ……と古崎さんは不思議そうな表情になった。
「どうして話しかけられるんですか? 幽霊なんて見えたら、普通は避けると思うんですけど」
もっともな疑問だ。そして今までにも何度もされた質問だ。
ユーレイの皆に。
「さっきも言ったように、ね。ウチ友達いなかった時期が長くてさー。まあ今でも別に多いってわけじゃないんだけどね。三人かな?」
「そうでしょうか……こう言うとなんですけど、工藤さんは友達多そうに見えます」
「なはは、それ前にも言われたことあるなあ」
何でなんだろうねえ。ウチにはそれの方がよっぽど不思議だ。
「それに……と言うと後付けっぽいけど、さ。今までたくさんの人に会ったけど、一人も、なんて言うのかな、怖い人っていなかったんだよ」
「怖い人というと……」
「ほら、あれだよ。ホラー映画みたいな、っていうか。言っちゃあ悪いけど、悪霊っていう感じの人」
今まで会った誰もが、間違いなく『人間』だった。
「だからかな。ウチは見かけたら話しかける。で、もし何かウチにできることがあるんなら、手伝う」
小さい頃から、ずっとそうしてきた。
とあるユーレイの……お陰で、そうあれた。
「まあ、そんな理由だよ」
あはは、と頬を掻いた。古崎さんはしみじみと、
「なんて言うか……変わった人ですね、工藤さん」
「あ、やっぱりそう思う?」
自分ではあんまりそんなこと思わないんだけどね。
今まで出会ってきた皆が皆、口を揃えてそう言うのですよ。
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