表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心渡し  作者: FRIDAY
PR
28/28

28.終わりから始まったあなたたちの物語がどうか幸いであらんことを

 


 ●



 数日後。


「……え、あれ?」

「あ、こんにちは工藤さん」


 駅前のベンチ。何度か並んで座って話したことのあるそこに、古崎さんがちょこんと座っていた。


「えーっと」


 何ともコメントしづらい。

 古崎さんはころころ笑いながら、


「お久し振りです。あの日以来ですね」

「あ、うん……いや、ウチはてっきり……」

「ああ、はい。実はしばらく江ノ島君と離れて行動してて……いろいろと思うところもありまして。でも、工藤さんも見かけましたか? ケンちゃん」


 うん、と頷くと、古崎さんは本当に嬉しそうな笑顔になった。

 ほこほことした、暖かい、幸せそうな笑顔。


「ケンちゃん、フジタさんに応えてくれたんです……やっと、やっと進んでくれたんです」


 うん、とウチも笑顔になって頷いた。幸せそうな人の笑顔を見ていると、こちらも自然と笑顔になってくるものだ。

 これは、夢枕云々を訊くのは無粋かな。


「工藤さんのお陰です。本当にありがとうございました。工藤さんがいなかったら……」

「え、いやいや全然全然。ウチなんてそんな」


 何だかわやわやに掻き回しただけで。

 古崎さんは首を振った。


「そんなことないです。工藤さんがいなかったら、私は何もできませんでした。何も言えませんでした。何も伝えられませんでした……私もケンちゃんも、ずっとあのままでした。工藤さんのお陰です。本当に……ありがとうございました」


 深々と礼をされて、ウチはかなり気恥ずかしくなった。


「あ、あはは、えーっと……古崎さんは、今後はどうするの?」


 我ながら妙な質問だとは思ったけど、古崎さんはあまり悩んだ様子もなく、


「もうしばらく、ケンちゃんを見ていようと思います。何ができるわけでもないですし、何をしようっていうわけでもないですけど。心残りがあるってわけでもないんですけど……ケンちゃんが幸せになるのを見届けるまで、もう少し」

「うん……いいんじゃないかな」


 ウチも頷いて答えた。


「あ、それじゃあ、たまに会いに来てもいいかな。世間話でもしに」

「あ、はい。是非来て下さい。私も誰かとお話したいですし……」


 五年も誰とも会話できないのは、結構辛かったんです、と古崎さんははにかんだ。

 ウチは胸を張った。


「もちろんさ。いっぱい来るよ。ウチは大概暇でその辺ふらふらしてるから、なんなら何の気なしに話しかけてくれてもいいよ」

「はい。ではお見かけしたらそうさせてもらいます……あれ、でも工藤さん大学生ですよね。そんなに暇多いんですか?」


 純粋な疑問のようだ。ウチは返答に窮して含み笑いをもらした。


「ふふふ……あ、いや別にサボってるとかそういうことはないからね? ね!? 問題ないよ!?」

「はあ……まあ、それなら」


 女子高生に心配されてしまった……これからは気をつけないと。

 たまには眼力ちゃんみたいに勉学に勤しんでいる姿勢を描写しとかないと。

 あ、いや、でもほら、ウチって影で努力して表では全く努力なんて知らないフリするタイプだからさ。

 えへ、えへへへ。


「……工藤さん?」

「え、あ、あは、何でもない何でもない」

 またしても女子高生に、しかもさっきとはまた違う質の心配をされてしまった……反省。


「それじゃあ、また来るよ。次回はウチがどれほど勉学熱心かを御披露目しよう」

「え、あ、はい。お願いします」

 またね、とウチと古崎さんは手を振って別れた。



 結局のところ、とどのつまり。どう言い繕ってもウチはただ古崎さんと江ノ島君の間を引っ掻き回しただけだったように思う。それがたまたま、偶然、丸く収まってくれたっていうだけで。

 誉められたことじゃあないだろう。勝手に手を出して滅茶苦茶にして去っていくなんて、メサイア・コンプレックスもいいとこだ。

 救世主気取りもいいとこだ。

 次もうまくいくとは限らない。

 次にこういうことがあったら、ウチは考え得る限り最悪の形で終わらせてしまうのかもしれない。

 最悪の終わり。

 ありがた迷惑どころか、ただの迷惑。


 ――でも。

 それでも、ウチは余計なお世話を続けるんだろう。

 自分勝手だとは思っても。

 迷惑だろうなとは思っても。

 さっぱり何の美談にもならない、ウチのわがままを。

 それに、今では相談に乗ってくれる友達もいる。

 以前のウチでは有り得なかった、考えられもしなかったことだ。

 そうやってウチと皆を引き合わせてくれたのは、直接的ではないけれど、ユーレイの皆であったわけだし。

 今のウチを、ウチの心を、ウチの人生を形作ってきてくれたのは、今までウチが出会ってきたユーレイの皆であるわけで。

 お礼、というのも何だか一方的で、ちょっとおかしな話だけれど。


 まあ、そんな感じで。

 これからも、ウチはこういうお節介を続けていく。

 今回のお話は、ウチの、ウチの出会った人達との物語の、その中の一つ。

 彼女を忘れなかった彼と。

 彼を想い続ける彼女のお話。

 何だかいろいろあったけれど、幸いにも今回も、こんな感じで。

 めでたし、めでたし。



 ●



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ