10.さすが登場から格が違うぜ
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この機会を逃すと次はいつ会えるかわからない――いや、これがもしかすると明日ひょっこり出会ったりするかもしれないから本当にわからないんだけど、会えそうなときには会っておきたい。
そんな気持ちで、いつ以来かわからないくらい久し振りに走っていったんだけど、その通りには一見したところやっぱりエーカちゃんの姿はなかった。
それ程遠くには行ってない――とは思うんだけど、エーカちゃんだからなあ。エーカちゃんなら瞬間移動できますとか言われても驚かない。
ともあれ、エーカちゃんの行った方向へ行ってみる以外手はないので、ウチは早足にまっすぐ歩いていった。けどすぐに気付く。
この道、一本道じゃん。
左手は大きな道路だけど、右手は石塀に沿ってしばらく脇道はない。
「困ったなあ………」
やっぱり見失ったみたいだ。
んー、とウチは立ち止まって腕を組んだ。さて困った。どうしようか。
ちょっと考えたけど、すぐにふうっと吐息した。どうするも何も、いないんだから今回は諦めるしかあるまいな、と。
しゃーない、戻るか、と身を翻したとき。
「何かお探しですか?」
しゃん、という金属音と一緒に声が聞こえた。女の子の声だ。それも聞き覚えのある声だ。悪戯っぽい笑みを含んだ綺麗な声。
ウチは振り返った。でも道の先には誰もいない。
「それとも」
また聞こえた。割と近いところから聞こえた。でも、そうだな、ちょっと上の方から。
上?
ウチは傍らの塀の上を見上げた。
「誰かを、お探しですか?」
ふっと、その姿に何かが重なるようなブレが見え、でもそのブレも一瞬で嘘のように消え失せて。
石塀の上に、優雅に。
手や足に、色とりどりの金属輪を引っ提げて。
声音と同じ悪戯っぽい笑みを浮かべながら、エーカちゃんが座っていた。
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