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▼アイオライト▼


ブライダルフォトショップ『colorful drops』は、従業員の8割が女性だ。

結婚式は女性の人生で一番と言っても過言で無い一大イベント。そのイベントのその瞬間を残す花嫁が、少しでもリラックスして些細なことでも相談できるようにとオーナーが配慮した結果だ。

そして、そこで働く数少ない男性が慌しく走り回っていた。


「トオルくん悪いんだけど、倉庫から印画紙二ケースよろしく」

「あ、倉庫行くならついでに台紙もお願いします」

「神崎くん、それ終わったら会場への搬入機材準備が待ってるから」

「了解ッス」


神崎トオルは親のコネでここにアルバイトとして入った。神崎の親は有名なプロカメラマンで、その対象はグラビアアイドルだった。

高校生の時分までは多いに反抗していた。悪友とつるみ繁華街で適当に女を漁り、一晩限りの関係を楽しんだ。

もちろん学校になど行くはずもなく、留年は当たり前だった。三回目の一年生になる前に夜遊びが学校に知られて、自主退学になった。


「うえぇ~、今日の機材半端な量じゃないなぁ」


リストアップされた機材を頭に浮かべながら、トオルはげんなりした。しかし足は止まらず、台車を押して倉庫に向かう。

誇りっぽい倉庫を開錠しようと鍵を挿すとすでに開いていた。怪訝に思いドアを開けると、誰かが一番下の段に身体を突っ込み探し物をしていた。

ユニフォームの後ろポケットから覗くアイオライトのストラップで誰だかすぐにわかった。去年入った桜庭リサだ。


「なんつーカッコしてんスか」

「っ!あだっ!」


あからさまに驚いたリサは、跳ね上がった瞬間に頭を打ちつけてその場にうずくまる。


「桜庭サンがそんなことしてるなんて珍しいッスね」

「今週いっぱい表に出るなって、軟禁命令が出たんだよ。花嫁に不幸がうつるってさ。あたしゃ伝染病かっての」

「あぁ、ナルホド」

「ちょっと、何納得してんの?」

「だって桜庭さん、三日前は魂が散歩に出かけてる感じだったんスよ?」

「そんなに酷かった?」

「ブサイク三割増でした」

「ムカつく」


自分の顔をぎゅっと掴み変顔をしてみせるトオルにリサはローキックを入れる。


「いって!!何すんスか」

「さっき頭ぶつけたからそのお返し」


あっかんベーをして倉庫を出て行く姿は、トオルより2歳年上とは思えない幼い行動だ。

クスクス笑いながらも、トオルは諸々の欲求に耐えた自分を褒め称えたい気分だった。


「ったく、人の気も知らないで暢気ですよね、桜庭サンは」


散々女でいい思いをしてきた自分が、初めて手を出すのに戸惑った相手。桜庭リサは神埼トオルの初恋相手だった。


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