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第一話:アイツは転入生

 この作品はフィクションです。

 作中に登場する人物・団体といった固有名詞は、私たちの世界のものとは関係を一切持ちません。

 一月十二日、新しい年が明けてまだ二週間も経たない微妙な時期に、アイツは転校してきた。

 担任教師に連れられて、壇上に進む。敢えて青色のチョークを探して、アイツは黒板に名前を書いた。

「よ、よろしくお願いします!」

 緊張のあまり上擦った声が、起きているクラスのヤツらから笑いを引き出した。

 むくりとその騒がしさに目を覚ました一人が黒板の前に立つアイツを見て、

「アイツ、誰?」

 再び大きな笑いが生じた。

「知らねえんじゃないのか、アイツだよ」

「あん?」

 状況が分からない生徒に、アイツは改めて自己紹介を行った。

藍都白(アイツ・ツクモ)です。

 今日からこちらの学校に転入することになりました。よろしくお願いします」

「アイツ?」

「藍都です。ツクモと呼んで下さい」

「『白』で『ツクモ』? 何で?」

 それもアイツには慣れっこだった。

「両親が変わり者なもので……」

(僕は名前に訊かれた時は必ずそう答えるようにしていた)

 しかし、蒸し返すような発言をする輩はどこにでも一人はいるようで――

「想像だが、藍都君のご両親は『(モモ)』とでも付けようとしたんじゃないかな」

 無駄に知識のある大人が口を挟んできた。

(ウザッ。だが、お前に本当の由来を教えるつもりはないからな)

「先生、解答待ってワクワクしてんなよ!」

 だからといって、クラスメイトの一人が担任をたしなめる光景に、アイツは呆れていた。

(なんて、フランクな学校だ)

 アイツが担任の方を見ると、恥ずかしそうにコホンッと空咳を吐いた。

「えー、藍都君のクラスメイトの自己紹介だが……」

 担任は腕時計をちら見して、言い澱む。

「一限が私の授業だから、そこで行うことにする。藍都君は真ん中の列の一番後ろに座りなさい。朝のホームルームは以上だ」

 と、そこへ響く足音。

 ダッ、ダダッ、ダダダッ!

 アイツが指示された席に向かう中、アイツへの一切の注目が途切れたその時だった。


 教室の、教卓側の引き戸が開くのとほぼ同時に、

「おやっさんが死んじまっちゃ!」

 女生徒が怒鳴り込んできた。

 アイツが、たぶん勢い余って噛んだんだろうとか思いつつ、振り返ればポニーテールが目を引く雀斑(そばかす)の女の子が息を上げて、立っていた。

 噛んだことを引き摺るタイプに見える女の子だったが、ただ余裕がないのか、爛々と輝かす瞳が、アイツにはただただ怖かった。

阿谷瀬香澄(アヤセ・カスミ)。アイツはアヤセ、担任に次ぐ変わり者だと思うよ」

 アイツの席から数えて、右と前に一つずつのところに座る小柄な男子がぼそりと呟くように教えてくれた。

(彼女の名前を教えてくれたことは感謝するが、要らん言葉を呟かれたし。しかも寝たふりかよ。お前の名前は何だよ)

 アイツは名前を知ったら連呼することを心に誓った。

「おほよ~? あたし以外に立っている君は、見掛けない子だね。ん、何ですと、転校生? これは訳ありかな?」

(お遊戯でウサ耳を表すような手の形のまま、耳に当てた姿は、ただあからさまに耳をそばだてているというよりも、ゲームの女勇者のように思えた。まったく勇ましくないけども)

「藍都白です」

「おお、ついにトリプル『A』ってことだね、アマノっち」

(イエーイとか、高校生が空気読まないでとるポーズじゃないからね)

 アイツ自身、アヤセが一番の変人であると認めた瞬間だ。

「で、頭文字『A』のよしみで訊くが」

(そこは担任として訊けよ!)

 転入生だからこそか、あくまでも心の内に留めたアイツのツッコミには勢いがある。

「亡くなったのは、アヤセ――お前とどんな関係にある親父さんだ?」

 一限が始まるまでのわずかな時間に、担任教師――天野高次がアイツの内心に気が付く由もなく、アヤセに回答を促した。

 読んで頂き、ありがとうございます。

 これから隔週(月)投稿※を目標として、一話あたり二千字前後で頑張ってまいりますので、お付き合い頂けたら幸いです。


※第一話目から一週間と一日投稿が遅れてしまいました。とりあえず、全体としては十話目標です。

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