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なーろっぱ世界の短編 婚約破棄とか聖女とかドアマットとか転生とか

もしもの時の転生審問官! ~婚約破棄は奴らの狩場だ!~

作者: マンムート
掲載日:2026/05/22


「ヨクアル侯爵令嬢アクヤー! お前との婚約は破棄させてもらう!」


 夜会では、よくある婚約破棄が始まった!



 破棄するのは、いかにもキラキラ金髪の王太子ダメニン。


 破棄されるのは、侯爵令嬢アクヤー。


 なんだか名前だけでこの先の展開がわかりそうだが、気のせいだぞ! 



「理由をお聞かせ願いますか?」


 聞かんでも丸わかりやん、と会場の多くの人間は思ったが。


 ここは婚約破棄、これを聞くのは様式美。


「お前は! 聖女ドローネとオレの清い関係を邪推し、身分を笠に着てかよわいドローネに対して悪口雑言! さらに! 教科書を燃やすわ、階段から突き落とすわ、取り巻きを使っていじめるわ、手下を差し向けて女の身には耐えられそうもないおぞましい行為をさせるわ! 傷を負わせるわ! 実家を潰す――」


 発情したオスザルのように顔を真っ赤にしてエキサイトするダメニンに、慌てて口を挟んだのはその腰にぶらさがっている聖女ドローネ。


「で、殿下! わたしを慮ってそう言ってくださるのはありがたいですが、おぞましい行為はされておりませんし、傷も負わされておりません! まだ実家もあります!」


 聖女は、出るところは出て、出てはいけないところは出ていない、泣きボクロが似合う垂れ目のピンク髪だ! 王太子とアホな側近達以外には性女と呼ばれているぞ!



「おっといかん。なんせ婚約破棄だからな! それにふさわしく少々盛ってしまったよ。だが、アクヤーは、そうしたのと同じくらいに悪辣な女なのだ! つまりほぼ事実だ!」


「「「そうだそうだそうだ!」」」


 王太子ダメニンの取り巻き、もとい、側近3人衆のコーラスがうなる!


 怒鳴っているだけなのでとっても下手だが、これも様式美!


 しかも、近衛隊長の息子、宰相の息子、大商人の息子と、これまた『婚約破棄につきものの無能トライアングル』だっ!



 アクヤーは表情を変えずに、


「証拠はございますか?」


「かわいげのない女め! それだからオレの蝶を失うのだ!」


「殿下、そこは『寵』でございます」


「そういうところだよ! 泣いて縋るとかそういうのもできないのか! こんな風に!」


 視線を送られたドローネは、よよ、と王太子にしなだれかかり、


「殿下……わ、わたしが悪うございました……海より深く山より高く反省いたします……ですから捨てないでくださいませ……オヨヨ」 


「そうかそうか、アクヤーは反省しているのか……ならば、側室として側においてやろう! そして仕事は全部するのだぞ! オレはドローネと愛し合うという崇高な務めで忙しいからな!」


「お側においていただけるだけでありがたいです……王太子殿下は神のような方です」


 ダメニンは、ドヤ顔を決めて、アクヤーを見下ろし、


「見たか! こんな風にするんだよ! やってみろ!」



 わたしたちは何を見せられているんだ?


 と会場中の人々は思ったが。


 疑問に思うまでもなく、これぞ婚約破棄なのだ!



 アクヤーはあくまで冷静に。


「わたくしの問いする答えがまだなのですが。わたくしが、聖女を虐げていたという証拠はございますか?」


「ドローネが泣いていた! それが証拠だ!」



 ああ、ばかだ。


 会場中の気持ちがひとつになった!


 そして、こうも思った。


 これは、ざまぁ!?


 もしかして、わたしたち、オレ達、ざまぁの目撃者になれるのか!?


 年に一度はどこかで起きるが、立ち会えるのは貴重だ!


 しかも、王太子の自爆! レア度高し!


 家に帰ったら「今日は、典型的な婚約破棄とざまぁを見たぞ!」と自慢できる!



「アクヤー様……アクヤー様がひとこと、謝ってさえくだされば、全てを水に流すつもりでおります……どうかひとこと謝ってください」


 ドローネの涙うるうる聖女ムーブに対して、アクヤーはあくまで毅然と


「証拠もなく、事実でもないことに謝る謂れはありません。そして、わたくしの方には証拠がございます」


「証拠だと!? 虚勢を!」


「「「証拠だと!? 虚勢を!?」」」


 王太子と側近三人衆のコーラスがうなる!



 ばばん! と会場の入り口の扉が開け放たれた!


「証拠ならここにある! 会場の人々の心の中! 記憶の中にな!」


 かっこいいセリフと、逆光と共に現れたのは、


「き、きさ――い、いえ、あっ、あなたは隣国のスゴツヨ帝国の皇太子! スパダリー殿下!」


 思わず声が震え腰がひけてしまうダメニン。


 国の規模が3対1、資源が10対1、人口比で5対2、軍の強さは30対1、そしてイケメンぶりは数値化さえできない絶望的な差!


 腰がひけるのも仕方ないぞ!


「あ、いい男! なにあの一発で妊娠させられそうな腰つき! じゅるるる」


 目を輝かせる聖女ドローネ。


 メスの本性マシマシの視線はスパダリーにくぎ付けだ!


「「「王太子の御前であるぞ!」」」


 と空気を読めない、無能三人衆!



 スパダリーは、メスの視線に全く反応せず。


「そもそも、だ。こちらにいらっしゃるアクヤー嬢に、そこの下品な色気ばかりの女をいじめる暇などない! なぜなら、この国で、外交でも、内政でも、王都内のちょっとした苦情の受付でも、お悩み相談でも、どんな時も、どんな場でも、交渉に出て来るのは、アクヤー嬢ただひとりなのだからな!」



 会場のひとびとは思った。


 なにそのワンオペ。


 だけど、そういえば、王宮にどんな問題をもちこんでも、交渉に出て来るのはアクヤー以外見たことがない。


 確かにみなの記憶の中、心の中に証拠はあった!



 なんという説得力! そしてなんというブラック!



 そしてこうも思った。


 この国、終わってる!



 ダメニンが絶叫する。


「う、うそだ! 人がそんなに働けるわけがない!」


 スパダリーが軽蔑でキンキンに凍り付いた冷たさの声で告げる。


「何も働いていないお前が言うと説得力があるな」


「お、オレだって働いているぞ! ドローネと愛をしている! 1日に35回したことすらある! 愛は心の仕事だ! ドローネお前も何か――はへ?」


 腰にすがりついていたはずのドローネは、いつのまにか、スパダリーの足元に、ざざざざっと身を投げ出しているではないか!


 あれは伝説の五体投地!


「反省します! アクヤー様はなにもしておりません! わたし……ダメニン様に命令されて心ならずもウソを……しくしく。そのたくましいお体で、わたしを罰してくださいませ~♪」


「ど、ドローネ!?」


 呆然とするダメニン。


 舌なめずりしながらスパダリーにすり寄るドローネ。



 出た! 光速の掌返し!



「ふぎっ」


 ドローネが、スパダリーの華麗なキック一発で吹っ飛んだ!


 出た! 光速の成敗!


 吹き飛んで、壁まで飛んだドローネは、そのまま壁に貼り付いて動かない!


「大きなゴキブリが来たので蹴り飛ばしてしまったよ。他国の皇太子に許可もなく近づいてきたのだから、当然だが……さて」


 スパダリーは一転して、愛しそうな視線でアクヤーを見やると。


「この国では、侯爵令嬢に謂れなき冤罪をかぶせ、しかも、国王陛下の許しもなく婚約破棄をするような王太子に対しては、どんな処置をくだすのだ?」


 アクヤーが応える。


「今までの判例と照らし合わせれば、廃嫡、王族からの除籍、断種、鉱山での強制労働です」


「うむ。常識的なラインだな」


 会場のひとびともうなずいている。


 そして、アクヤーは、ダメニンに向かって優雅なカーテシーを捧げた。


「「婚約破棄、謹んでおうけいたします」」



 会場中の人々から、拍手があがった。



 いやぁいいもん見せてもらった!


 これで孫子の代まで語り伝えられるぞ。


 家に帰ったらナルハヤで話さなくっちゃ!



「そ、そんな!? お、オレは、今、壁に潰れてはりついているゴキブリにだまされただけで! ぜ、ぜんぶさくっと撤回するから!」


 無能三銃士もここぞとばかりにコーラス!


「「「だまされたんです」」」



 その瞬間。


 はるか頭上から、大音声が響き渡った。



「しばらく! しばらーく! みなさましばらーく!」


 参加者達の視線が声の方へ集まった。


「こ、この声は!?」


「な、なにもの!?」



 巨大な丸天井から舞い降りてきたのは3つの人影。


 お揃いの灰色僧服をまとったデブ・ヤセ・ボンキュッボンの三人組だ!



 三人組は、重力を感じさせない身ごなしで、タンッと会場に降り立つと、声を揃え宣言した。


「「「デュワーデュワー♪♪ 我ら、もしもの時の転生審問官!」」」


 会場中に緊張と、期待のふるえが走る!



 転生審問官とはっ!?


 説明しよう!


 それは、この世に徒なす転生者を狩って狩って狩って狩りまくる、問答無用の正義の使徒!



 デブが慇懃無礼に礼を示し、


「サンチョあるヨー。ぐふふ。おみしりおきアルヨー」


 片メガネのヤセが直立不動のまま


「パンチョだ」


 ボンキュッボンの妖艶な美女が艶やかな笑みと共に。


「ミンチェよぉ。よ・ろ・し・く」


 そして高らかに宣言した。


「この会場に転生者がいますわ~! 今から各国代表が認めた権限をもって転生者審問を行います!」


 会場が、ざわり、とする。




 転生者とは!


 転生者とは、さまざまな異界の神々が、異世界から送り込んでくる異邦人達のことであるっ!


 その能力や知識で、人々を誘惑し、善を装い、世界に混乱を齎す邪悪の中の邪悪!




 パンチョと名乗った神経質そうなヤセが、片メガネを、くいっともちあげ。


 会場を、ぐるりと見回すと。


「反応ブルー。強烈な転生者反応を検知。蒼反応はホール中央だ」



 会場が、ざわり、とする。


 ホール中央に立っているのは、王太子と王太子側近のみ。



「では、断罪をはじめますわ~」


 妖艶な美女が上へ向かってまっすぐに腕を伸ばすと、巨大な紋様が頭上に顕現した!



 世界に絡みつく蛇を真っ二つに断ち切る鎌の紋様だっ。



 出席者たちは驚愕した。



「あ、あれは! 転生者排除許可紋様!」


「あれがそうなのか!? はじめてみた!」



 それは、この世界の全ての国が結んだ協定『ミナミスナマチ協定』によって定められた排除許可紋様。


 この紋様を提示してから、転生者を排除すれば、罪には問われないのだ。


 なぜならそれは殺人では無く、世界の敵を排除する崇高なお仕事なのだから!



 出席者たちは感動していた。


 拝んでいる人々までいる。


 なんと婚約破棄よりももっと珍しいものを見ることが出来たのだ!


 今夜ここへ出席出来てなんというラッキー!


 ありがたやありがたや!



「結果が出た。転生者は、その女だ。タイプは潜伏タイプだ」


 パンチョと名乗ったヤセが、指さしたのは。



 ヨクアル侯爵令嬢アクヤー。



 出席者たちは驚いた。


 え、そっち?


 壁で潰れてるゴキブリじゃないの?



「ち、ちがいますわ! わたくしは、いわれなき婚約破棄をされそうだった被害者です!」


 スパダリーも叫ぶ。


「そうだ! アクヤーがそんなおぞましい存在のはずがない!」



 だが、転生審問官の目はごまかせない!


 アクヤーの額いっぱいに、『転』の文字が、ぴっかぴっかと青点滅しているのだ。

  


 出席者たちは感動した!


 なんというわかりやすさ! 観客へのサービスはばっちりだ!



「アクヤーが転生者だなんて! 何かの間違いだ!」



 そういうスパダリーの額には『ル』の文字が、ぴっかぴっかと赤く点滅中!



 出席者たちの誰かが呟いた


「ル?」


 妖艶な美女、ミンチェが解説してくれる。結構親切だぞ!


「『転』は転生者ですわ~。『ル』はループ。つまり時を繰り返しているという印ですわ~」



 なんとスパダリーは、ループ存在であったのだ!


 ちなみにループ存在は、転生審問官の管轄ではないので、残念!



「やっと! やっとアクヤーを救えると思ったのに! 何度も何度もあのバカ王太子に処刑されたアクヤーを! そのたびにこの愚かな国を焼き尽くして滅ぼしても後悔が残るばかり! 今度こそと!」



 会場のひとびとは思った。


 わたしたち、オレ達、何度も滅ぼされてるのかよ!?



 サンチョと名乗るデブが、ぐふふ、と笑った。


「心配ないアルヨー。この転生者はタイプ潜伏アルヨー。つまり、元の人格に寄生するタイプということアルヨー」


「で、では、アクヤーは」


「ぐふふ。存在するアルヨー。その女の中にアルヨー」



 アクヤーは、いや、おぞましき転生者は、能面のような顔をしていたが、


 髪を炎のように逆立てて、


「おのれ! おのれぇ! にっくき転生審問官! またも我がささやかな楽しみを奪うというのか! 神なんだから別の世界の人間おもちゃにするくらいいいじゃない! ここで潰してくれるわ!」


 転生者は全身から、青白い稲光を発しだした。


 おお、神っぽくてまぶしいぞ!


 パンチョが冷静に分析する。


「タイプ潜伏からタイプGに変化」


 誰かが聞いた。


「タイプG!?」


 妖艶な美女、ミンチェが解説してくれる。やっぱり親切だ!


「GはつまりGOD。異界の神の印ですわ~」


 サンチョが補足する。


「この世界。転生者をいくら送り込んで来ても、我々が駆除してしまうアルヨー。でアルから、本体が乗り込んで来たというわけでアルヨー。あいやー」


 パンチョが渋くうなずく、


「だから潜伏型だ。潜伏型は反応がちいさい。力は弱いが探知に時間がかかる」


 ミンチェが続ける。


「この人、自分で政治を全部やってたのをいいことに、転生者清浄宣言をして、転生者排除分担金の支払いを停止してたのよね~。そうすると監視が緩くなるから~」



 アクヤーの口が、顎の付け根まで裂けた。


「ふふふはははは! もう遅い! 我の本体の神力と、この肉体の間には、すでにエネルギー経路が形成されている! 転生審問官どもよ! 我が真の力を知るがいい!」


 ざざっと爪が伸び!


 そのきっさきが審問官たちに向けられた! あやうし転生審問官!


「ごっとびーむ!」



 こんな時なのに、出席者たちがこう思ったとしても許してもらえるだろう。


 ださいネーミング!



 だが、なにもおきなかった。どうした神!? ガス欠かっ?



「ば、ばかな! なぜごっとびーむが!? 名前を間違えた!? ならば、ゴッドレーザー! くっ、これでも出ないのか!? 神光線! 神ビーム! すごいビーム!」


 慌てる転生者に対して、ミンチェが妖艶に笑った。


「罠にかかったのはお前の方よぉ~。この会場自体が、閉鎖結界になるように細工しておいたのよ~」


 パンチョがニヒルに


「こういう面倒なことばかりオレに押し付けやがって。だが仕事だからな」


 なんと! 神のエネルギー経路は切断されていたのだっ!


 流石は転生審問官! 強いぞ我らの審問官!



 転生者、いや神は、ぐぬぬと唇を噛み、


「お、おのれ! ならば!」


 自分の首筋に手をあてた。手が光る。


「くくく。この娘の首を切り捨ててくれるわ! 転生審問官! お前は転生者は殺せても人間は殺せぬ!」


 なんと我が身を人質にするとは! それでもお前は神か!?


「転生者に殺された場合はちがうんですよ~。事故として処理されるんですよ~」


「そんなこと通達されてないわ! でたらめよ!」


 神の叫びを、パンチョが一蹴する。


「情勢の変化に対応して3年前に改定された。改定なら内部だけで変更が可能だ」


「「そういうのはちゃんと稟議を通しなさい!」」


「あ。今、アクヤー嬢の人格が少し出たアルヨー。真面目さんアルナー」


 スパダリーが、はっと顔をあげ、


「や、やめてくれ! あの中にアクヤー本人がいるんだろう! 殺さないでくれ! 彼女はもう何度も何度も何度も、あのダメニンに殺されているんだぁぁぁ! 斬首、火あぶり、縛り首、毒殺、溺死、暗殺、無数の男の慰み者に! もうこれ以上彼女を!」


 サンチョが、ポケットからハンカチを取り出すと、


「それはお気の毒アルネ-……あいやー」


 目元の涙をそっとぬぐう。


「そうよ。この人間の女はとっても気の毒なの! 家族にも見捨てられ、苦しんで苦しんでひとりで泣いてたのよ。そんな気の毒な女を――」



 サンチョは、デブな身体に似合わぬ素早さでいきなり跳躍した!


 速い! 速すぎる!


「アイヤー! 十七条の拳法アルヨー!」


 神の腹に掌底を叩きこんだ。


「げふぅ、こんな気の毒なお――」


「アタタタタタタタタタタ!」


 凄まじい連撃が、アクヤーの身体を襲う!


 余りの連撃に、宙の一点で固定されているようだぞ!



 出席者たちは思った。


 血も涙もねぇ!


 いったいさっきの涙はなんだったんだ?



「げぼぉぉぉぉぉぉっ!」


 アクヤーの口から、青白い光の塊が飛び出した。


 その体は、最後の一撃で、ふわり、と宙に舞い。


「アクヤァァァァァァァァァァ!」


 髪を振り乱し全力で駆けつけたスパダリーの腕に、すっぽりと納まった。


「アクヤー! しっかりしろ!」


「このこえは……すぱだりーさま……」


「そうだ! わたしが前王妃に疎まれ辺境に身を隠していた時、君に助けて貰ったスパダリーだ! あの時から君だけをずっと!」


「ああ、あの時の男の子が……」


 見つめ合うふたり! ふたりの額から『転』と『ル』が消えているぞ!


 なんだかいい感じのシーンが展開されている!


 だが、観客たちの興味は、そこにない!



 アクヤーの口から放たれた光の塊は、妖艶な美女、ミンチェの胸に吸い込まれてしまった!


 その顔が邪悪に歪む。


「くくく。はははは! なかなかにいい体ではないか! 転生審問官と言えど、神の魂の前では無力! この体を使えば――」


「うふふ。かかったわね~」


 ミンチェの顔の右側が、妖艶な笑みを浮かべる。


「な! お前の意識が残っているというのか!? ばかな!」


「だってぇ、あなたが取り付いたのは、わたしの、カゴだもの~」


「カゴだと!?」


「そうよ~。あなたみたいな魔物がだーい好きなカゴなのよ~。最高の呪物。それがわたしの胸には埋め込まれてるのよ~。あなたみたいなのを引き寄せて捕まえちゃうためにね~」


 そういうと、ミンチェは、自分のおっぱいのあたりをぽちっと押した。


 ミキサーが回転するような音が響き渡った! なんだこれは!


「で、ではわたしは入ったのではなく吸い込まれ――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


 口の半分から絶叫が響いた。



 妖艶な美女の顔の左側が、醜く歪み、恐怖に目を見開いている!


 だがっ右側は、恍惚とした表情を浮かべ、舌なめずりをしているぞ!


「ああ~ん。いい、お・と」


 徐々に、左側の顔と、右側の顔が一致していく! なんという不思議!


 右側の顔が、全体を支配していく!


 回転音が止まると、ミンチェは


「はぁぁ……カ・イ・カ・ン」


 となまめかしい声で呟いて、口から、真っ赤に輝く球を吐き出した!


「回収終了ですわ~。あと、もう一件はよろしくね♪」


「おまかせアルヨー」「ああ、仕事だからな」



 パンチョとサンチョは、壁に叩きつけられて張り付いた聖女に近づくと、


 

「ふむ。こいつも反応蒼。タイプはSだ。転生前の名前はコスギミチコ」


 

 誰かが聞いた。


「Sっていうのは……?」


「セルフ。本人そのものが転生者だ」


「つまり~、肉体の持ち主が最初から存在しないタイプですわ~」



 デブのサンチョの手から、いきなり炎が噴き出す!


「焼却アルヨー」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」


 聖女はよく燃えて、一瞬で消し炭になりましたとさ。


 あわれ。


「安心するアルヨー。転生者は人間じゃないアルネー」




 こうして世界は守られた!


 だが、あれが最後の転生者とは限らない!


 戦え転生審問官! 負けるな転生審問官!



 熱病のあと突然性格が変わったりしたらご一報を!




 ちなみに、アクヤーに逃げられたダメニンも、仕事を全部押し付けていた王家も、ひどいことになり。


 この国は滅茶苦茶になったが。


 それは転生審問官が関知するところではないんだってさ。




たくさんの作品の中から、本作をお読みいただきありがとうございました。


最後までお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。


少しでも心に残るものがあったり、何かを感じていただけたなら、


評価や感想をいただけるととても励みになります。


別の物語も書いておりますので、もしよろしければ、そちらも覗いてみてください。



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― 新着の感想 ―
なにこれ(称賛)
他にも急発展した小貴族や期待の新星冒険者や片田舎で妙な特産品が出た所とかが彼等の狩場と。 この辺も標的なら転生者の恩恵受けてる地元民との軋轢すごそうだなぁ。 悪役令嬢タイプでも元の人格がカスならまとも…
戦え審問官!負けるな審問官! その世に転生者のいる限り! ところで自首した転生者だったり元の魂に知識だけ提供している同居タイプだったりはどうなるのかは気になりますね
感想一覧
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