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食事と袋

この村に来てからだいたい三日が経った。

今日も一日おこめちゃんの手伝いをして過ごした。相変わらず家の外には出られないし、他の村の人と顔を合わせてない。でも、こめちゃんと喋ってるうちに何となく方言がわかるようになってきた。


「陽香ちゃん、ご飯なんほど食う?」


「おこめちゃんの半分ぐらい、昨日の夜と同じぐらいがいいかな」


私がそう言うとおこめちゃんは自分の分と私の分のご飯を茶碗によそってくれた。

おこめちゃんも孫次郎さんも、いつも私の倍ぐらいの量の白飯をあっという間に食べきっちゃう。

ご飯の準備ができると、私たちは晩御飯を食べ始めた。


「今日もお手伝いしてくれてありがとうねぇ。なんもせんでもいいのに」


「いやいや、ご飯も寝る場所も用意してもらってるんだからこれぐらいはしないと。明日も農具の手入れするの?」


「そうだねぇ。じきに畑の方が始まるけ、そんならまた別のことやんだわ」



「ただいま」


そんな話をしていると家の戸が開いて孫次郎さんが戻ってきた。肩にはなにかが入った袋を担いでいる。


「お父、早かったでね。ご飯食べんか?」


「いや、すぐに村長んとこ戻るっけなんもいらんが。そいよかこいつを見てけ」


そう言うと袋の口をほどいて中身を見せてくる。中には大量のミミズが入っていて、思わず食べていたご飯を戻しそうになる。


「ほう、めめずだか。こいつがどうしただ?」


「作業前に畑にまた入れることにしただ取ってきた。しばらく世話しといてけ」


そう言うとおこめちゃんに袋を手渡す。袋は紐で縛ってあるけど、表面が波打っていてとても見てられない。

袋から目を逸らすと孫次郎さんの手が視界に入る。その手にはたくさんの切り傷がついており、とても痛々しかった。

手を眺めていると、孫次郎さんが私の方を向き喋りかけてくる。


「そうや晴香、そろそろおめえを家から出してもえって決まっただどっかで村ん中見て回れ」


「えっ!いいんですか?」


思わず声が上がる。


「おう、悪さしんのじゃないかと決まったすけ出てもええぞ。ゆうてもそげに用事はねえっけ見て回んぐれえが丁度ええわ」


話を聞きながらソワソワする私の横で、おこめちゃんは少し困ったような顔をしていた。


「んだらば、わしゃ村長んとこ行ってくるけめめずん世話だけやっとけ」


「わかっただ。いってらっし」


孫次郎さんが出ていってから、私はおこめちゃんの方を向く。


「ねえねえ、外に出てもいいんだって!朝になったら村の中案内してよ!」


私がそう言うとおこめちゃんはちょっと嫌そうな感じの顔をする。


「家ん外か。ワシ、あんまし外出たくないんよね」


「そうなの?」


「うん、ワシは村ん人たちと合わんのよ」


「そっか。なら今のうちに外にいくのは?夜なら人いないんじゃない?」


「たしかにね、まあでもうぅん」


おこめちゃんはしばらく悩むと、覚悟を決めたように私の方を向く。


「んだば今から家ん外見て回るか。こいつらの土も集めんばいかんしな」


そう言ってミミズ袋を指差す。

ミミズのために久しぶりの外出をするのはなんだか嫌だけど、それでも私はワクワクが抑えられなかった。

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