古い村と女の子
二人のあとを長いことついて歩いてるうちに、私の視線は自然と足元に落ちていた。
言葉もろくに通じないし、たまに前を確認しては歩くだけ。まるで作業みたいで吐きそうになる。一面の雪景色だって体力を奪う悪魔みたいだ。
ふと二人が立ち止まって何か話していることに気づく。
道にでも迷った?とにかくもう脚が限界。
「おい、じっとしてねで来い。村はもうじゃ」
しゃがんで休んでいると孫次郎に声をかけられる。顔を上げると、薄い明かりが遠くに見えた。
ようやく着いたと思うと脚に力が入り、勢いよく立ち上がった。少し高い位置の明かりを見つめながら二人を追いかける。
村の中には昔ながらの家が並んでおり、まるで時代劇みたいだなと思う。
途中小太りのおじさんはどこかへ行ってしまい、孫次郎と二人きりになった。
「ここじゃ」
そう言って指さしたのは他の家と変わらない古びた木の家だった。
中に入ると居間にこたつのようなものがあって、同い年ぐらいの女の子が足を入れて座っている。
私を見てびっくりしたような顔の女の子に孫次郎さんは何かを伝えると家を出ていってしまった。
少し戸惑ったような顔をしていたが、すぐに表情を柔らかく崩すと私に話しかけてくる。
「あいやめんこい子だがね。外んしみくてえらいしょ。火ぃ当たらんさい」
そう言うと布をめくる。方言は強いけどどうやら中に入れってことなんだと思って、私は脚を入れて横になる。
疲れで気づかなかったが体は冷え切っており、この暖かさが身に染みる。
「山ん中でひらったゆうたども、なしてそげなとこにいたんがね?神隠しにでもおうたんがか?」
少女は私に話しかけていたが言葉を返す気にはなれなかった。そのゆっくりとした喋り方も眠気を誘う。
「なんでもけったりぃんがはわかったけえはよ寝らんね」
そう言うと立ち上がり奥の方に行ってしまう。足音が遠ざかるのを聞きながら脚の冷たさが少しずつ溶ける。私は温もりに包まれながらゆっくりとまぶたを閉じていった。