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現代に帰還した"元"邪悪な魔女は平穏に暮らしたいけど、駄目そうなので周到に準備して立ち回りながら無双します  作者: 忘八


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潜入開始

漸く、敵地潜入書けた


でも、すまないけど短い

ゴメンね


 人々が深い眠りに着く真夜中。

 月明かりが大地と海を照らせど、夜は月明かりをモノともせずに大地と海を余すこと無く漆黒の闇へと覆い隠していく。

 そんな闇に抱かれた海の上は実に静かで、静寂のみが支配していた。

 魔女が収監される島の周囲に停泊する軍艦。

 その甲板上で周囲の警戒に当たる夜勤の歩哨(見張り)達は退屈そうに欠伸を噛み殺して眠たそうにしながら、周囲を望遠鏡で見渡していく。

 周囲を見渡しても海の上は何処も闇に覆い尽くされ、静寂(しじま)に満ちていた。

 真面目に職務を遂行すれど、退屈そうにしてしまう歩哨達は気付かない。

 自分達の足下。

 海の中を静かに泳ぎ進む独りの夜盗が悠々と警戒網を抜け、着々と確実に島へ接近している事を気付かない。

 闇に包まれた海中は実に視界が最悪極まりなかった。

 だが、夜盗。

 否。

 ドライスーツと酸素ボンベ。

 それに各種装具を詰め込んだドライバッグを装備し、顔をフェイスペイントで迷彩を施した正樹は迷う事無く静かに一定のペースで泳ぎ続けて着実に接近して行く。

 そうして島から約500メートルほど離れた海上まで泳げば、海面から静かに顔を出して自身の位置を確認。

 ほんの僅かな短い時間で上陸予定地点と其処までの距離を確認すれば、水の音を立てる事無く静かに潜って海中を移動していく。

 暫くすると、正樹は上陸予定地点である一番険しく切り立った崖の下まで泳いでいた。

 波に全身を打たれながらも正樹は崖に両手を伸ばして手掛かりに手を掛けていく。

 そうして両手で手掛かりを掴めば、背筋も利用して装備も加味された自身の体重を持ち上げてダイビング用のヒレの付いた右足を崖の小さな取っ掛かり部分に掛けた。

 その後はゆっくりと確実に手掛かりを1つずつ掴み、手脚での3点保持を維持しながら崖を少しずつ登っていく。


 「俺のやってる事って、ネイトさん(ネイサン・ドレイク)よりも滅茶苦茶なんだろうな」


 ゆっくりと時間を掛けて半分まで登った正樹は独り言ちると共に己自身に呆れてしまう。

 海中を数キロメートル泳いで、その後に休み無しで切り立つ崖をフリークライミング。

 しかも、深夜に暗視装備を用いずに手探りで。

 マトモな思考の持ち主ならこう言うだろう。

 「自殺行為だ」と……

 だが、他に潜入出来るポイントが無い以上。

 道半ばに死ぬ。

 そんなリスクを承知の上で、正樹は本気で挑む(バカやる)事を選んだ。

 そして、それは今の所は順調に進んでいる。

 合わせて4つの手脚を巧みに操り、4つの内の3つで崖にしがみつつ着実に登っていく。

 察知される可能性が極めて低くなる程の遠く。

 闇に埋め尽くされた()()()()()涼子とエレオノーレは、着実に崖を登っていく正樹の姿を眺めていた。


 「凄いな。魔法を一切用いずに泳ぎ切って、その後に手探りで崖登りをするとは……奴は本当に魔法使ってないのか?」


 流石のエレオノーレも正樹の行いに些かドン引きしてしまう。

 長い距離を遠泳。

 遠泳後は休み無しで崖をフリークライミング。

 そんな体力バカを初めて見れば、ドン引きしてしまうのも無理は無い。

 そんなドン引きするエレオノーレと同様に涼子もドン引きしていた。


 「アイツ、実はジョー・ギリアンとかコブラとかだったりしない?」


 涼子から見ても、伝説的な漫画の快男児の名を挙げたくなる程に正樹の体力と技量はデタラメ過ぎた。

 そんな涼子の挙げた名を知らぬエレオノーレが「その者等は誰だ?」と、首を傾げてしまう。

 だが、涼子は気にする事無く崖を登っていく正樹を静かに見詰めていく。

 見詰める内に正樹は崖の迫り出した部分まで登っていた。

 迫り出して壁の様に塞がられた部分。

 其処は誰もが避けて通る場所であろう。

 だが、遠くに見える正樹は平然と其処の下部をヤモリの様にピタリと張り付く様にして組み付くと、スルスルと登り始めた。

 そんな正樹の姿に涼子はまたもドン引きしてしまう。


 「マジかアイツ……やっぱ、頭イカれてる」


 「どう言う事だ?」


 首を傾げるエレオノーレの問いに涼子は呆れ混じりに答える。


 「普通なら登る前に決める登る手順と道筋にあんな迫り出した部分があったら避けて通る。でも、あのイカれは気にする事無く登ってる……マトモな奴なら必要に迫られない限り絶対にしないわよ」


 涼子の答えを聞くと、エレオノーレは察した事をそのまま口にして問う。


 「と、言う事は奴は最初から其処を登る事を考えていたと言う事か?」


 「そう考えざる得ないわね。妙に其処の部分の写真をずっと見てたと思ったけど……何考えてんのよ?」


 エレオノーレの疑問を肯定した涼子は正樹に呆れるしか出来なかった。

 そんな呆れられる正樹はヤモリの様にスルスルと登り続け、終いには迫り出した部分から抜け出していた。


 「マジか……アイツ、クリアしやがった」


 「その様だな。ん?そのまま更に登り始めたぞ」


 エレオノーレの言う通り、正樹は休む事無くフリークライミングを続けて居た。

 そんな正樹に涼子は益々ドン引きしてしまう。


 「体力オバケ過ぎて引くわ」


 そんな体力オバケの正樹は崖の頂上まで1メートルの所まで迫っていた。

 すると、正樹は動きを止めた。


 「あら?休んでるのかしら?」


 「そうじゃない崖の上を見ろ」


 惚けた事を言う涼子にエレオノーレが言えば、崖の上にはランタンを手に巡回する2人の歩哨の姿があった。


 「どうやって気付いたのよ?」


 呆れ混じりにボヤく涼子の視線の先では崖にヤモリの如く張り付いてジッと息を殺す正樹の姿があった。

 正樹は息を殺したままピクリとも動く事無く巡回する歩哨が立ち去るのを静かに待ち続けていく。

 それから程無くして、歩哨達は去った。

 だが、正樹はピクリとも動く事は無かった。

 1分が過ぎて、2分経った。

 しかし、正樹は崖に張り付いたまま動こうとしない。

 そんな正樹に少しばかりもどかしさを感じた頃。

 正樹は再び崖を登り始めた。

 スルスルと静かに崖を登り、音を立てる事無く這い上がって登頂を果たした正樹は周囲を見渡していく。

 入念に敵の姿が無い事を確認すると、身を屈めた状態で静かに小走りし始めた。

 少しして一切音を立てる事無く一番近い森の中に入った正樹は森の奥まで進むと、其処でリブレス式の酸素ボンベとドライバッグを地面に下ろした。

 荷物を下ろしてからドライバッグを開け、身に纏うドライスーツと足ヒレを脱ぎ始める。

 海水の冷たさから身を守るドライスーツを脱ぐと、その下に纏う迷彩服が露となった。

 迷彩服姿になった正樹はドライバッグからトレッキンシューズを出して履くと、それ以外の装具類も出していく。

 テキパキとドライバッグから取り出した装具類を身に纏い、ストラップ付きの暗視ゴーグル(ENVG-B)を目に嵌めて電源を入れた。

 そうして闇の中での視界を確保すれば、リブレス式の酸素ボンベとドライスーツ。

 それに足ヒレをドライバッグに詰め込み、口を閉めた正樹は折畳式の携行シャベルを手にすると、穴を掘り始めた。

 ドライバッグが収まる程の穴を掘ると、掘ったばかり穴の中にドライバッグを入れて土を被せていく。

 最後に取っておいた表面の土を被せれば、ドライバッグの隠蔽は完了。

 携行シャベルを腰に巻いたピストルベルトの後部にある専用のパウチに戻した正樹は、漸く一仕事済んだ。

 そう言わんばかりに静かに大きな深呼吸して疲れた身体に酸素を取り込んでいく。

 酸素の補給と共に呼吸を整え終えると、音を立てる事無くその場でゆっくりとしゃがんだ。

 それから左腰にある弾嚢へ手を伸ばし、蓋を開けて中からフィルムケースを1つ取り出す。

 フィルムケースの蓋を開けた正樹はソレを口に近付け、中に詰まっている水を飲み干した。

 水分補給を済ませた正樹はフィルムケースを弾嚢に戻すと、頭部に装備したインカムに向けて語り掛ける。


 「此方、チョールト(чёрт)潜入成功。これより偵察を開始する」


 インカムを介して涼子達に潜入成功を報告した正樹は望遠レンズ付きのフィルム式カメラを手にすると、静かに周囲を警戒しながら歩き出すのであった。




今回は正樹の体力オバケ振りが発揮された回


キロ単位遠泳して、その後に高い崖をよじ登ってのフリークライミング

魔法による強化は一切抜きに自前の体力と身体能力だけで完遂しての潜入

流石の魔女でもこんな魔法等用いない純粋な体力オバケを滅多に見ないぞ

それに潜入の仕方もイカれてる以外の言いようが無いと思うよ?多分だけど


ある意味でこの潜入方法は筋肉式潜入と言わざるを得ない←


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