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現代に帰還した"元"邪悪な魔女は平穏に暮らしたいけど、駄目そうなので周到に準備して立ち回りながら無双します  作者: 忘八


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82/114

ダンテ・レイエスの如く

一線越えた行い


 深夜に安眠妨害して来た不届者達を天国か地獄に送ってから約10時間後。

 学校が昼休みを迎えると、早々に昼食の弁当を食べ終えた正樹は屋上で涼子と電話で話していた。


 「君の方に客は来たか?」


 「いーえ。来なかったわ」


 涼子はシレッと嘘を吐いた。

 招かざる客達は正樹の予想通り来た。12人ほどだ。

 しかし、何故か彼等は高度15000メートル上空に飛ばされてしまった。

 マイナス50度から60度の極寒であり、酸素濃度は13パーセントしかない極限の空に放り出されてしまった彼等は、其処で凍りつきながら窒息死した。

 そして、死体は太平洋の何処かに棄てられ、今では魚の餌となっている。

 今頃は魚達の糞として海中を揺蕩っている事だろう。

 そんな事を一切触れる事無く、涼子は客は来なかった。

 そう返すと、正樹に尋ねる。


 「貴方の方には客は来たの?」


 「いいや、()()()()()。お陰でグッスリ眠れた」


 正樹もシレッと嘘を吐いた。

 御互いの嘘から、互いに招かざる客を始末した事を察すると、涼子は更に尋ねる。


 「それで?どうするの?向こうは戦争する気満々だけど?」


 「言ったろ?先ずは会談を持ち掛けるって?其処で俺達の冤罪を晴らして、可能なら根回しも進めたい」


 正樹は紳士的な答えで返して来た。

 だが、涼子は正樹が本気で殺し尽くす為に策謀を張り巡らせている事を察する。


 「具体的には何処までやるの?」


 そう問われると、正樹は勿体振って答える。


 「そうだな……一応は此処は文明社会だし、綺麗事大好きな連中ばかりだ。それでも、そう言う連中に配慮してやらんとならんのが実に不愉快極まりない」


 「要するに?」


 「先ずは戦闘の意思を持たない連中を現地から引き剥がす。ほら、幼女戦記でもあった様に先ずは攻撃時刻を勧告して、期限までに退避せずに残っている場合は敵と見做して殺るってあったろ?ソレをする」


 正樹から解りやすく説明されると、涼子は納得すると共に反論する事無く認めた。


 「私は別にソレで良いわ。でも、貴方の事だから他にもあるんじゃない?」


 「理想は行政の力を使える事なんだが……其処は無い物ねだりだから、諦めてインフラ周りにも工作を仕掛ける」


 幾つもの軍事作戦に従事して来た元軍人として、さも当然の様に正樹が言えば、涼子は呆れながらもワクワクとした様子で問う。


 「貴方の得意分野を見れるって訳ね?」


 そんな問いに正樹はボヤく様に否定する。


 「得意分野じゃないんだけどなぁ……」


 嘘は言ってない。

 ただ、正樹にとってはそう言う事をやり慣れてるだけの事でしかない。

 だが、傍目から見れば、専門家である以上は得意分野と言われても仕方無いだろう。

 そんなボヤきを漏らす正樹に涼子は尋ねる。


 「私に出来る事はある?」


 「連中の寄宿制の学園の住所を後で送る。学園とその周囲3キロ圏内に魔導系の仕掛けが無いか?調べられるか?」


 正樹から命じられると、涼子は出来る出来ないではなく、期限を問うた。


 「期限は?」


 涼子の答えから出来る。

 そう判断した正樹は、涼子にハッキリと要求する。


 「3日で頼む」


 「性急ね」


 涼子の言葉に正樹は理由も交えた上で問うた。


 「可能なら今週の土日で片付けたい。こんな面倒はさっさと終わらせたいのは君もだろ?」


 正樹から告げられた言葉に涼子は納得と共に同意するしかなかった。


 「解ったわ。何とか間に合わせてみるけど、延びても怒らないでよ?」


 涼子の要求を正樹は承諾した。


 「その時は前以て延びるって報告してくれ」


 「了解。他には?」


 「君が確保した真犯人の顔や真犯人による犯行の瞬間の映像ないし、画像を用意してくれ……連中との会談で使って会談を有利に進めたい。3つずつ頼む」


 会談に於いて、ソレは肝心要とも言える武器であった。

 正樹の要望を涼子は承知した。


 「良いわ。用意しておく」


 「頼んだ」


 そう言い残して電話を切った正樹は溜息を漏らすと、スマートフォンをポケットにしまって屋上を後にした。

 階段を降り、教室からの響く賑やかな喧騒をBGMに廊下を歩んで行く正樹は尿意を催したのだろう。

 男子トイレに入った。

 奥の小便器の前に立つと、制服のズボンのチャックを開けて陰茎を引っ張り出して小便を排出させていく。

 トイレに誰かが入る足音がした。

 だが、正樹は気にする事無く、小便を続ける。

 程なくして小便がキレ良く終われば、陰茎をパンツの中にしまってズボンのチャックを閉じてジッと見詰めて来る相手……自分と同じ制服を身に纏う塚原に対し、吐き捨てる様に尋ねた。


 「律儀なのか?それともバカなのか?」


 正樹の問いに塚原は訝しむ。


 「何だと?」


 訝しむ塚原に正樹は嘲る様に言う。


 「無防備にションベンしてる所を殺れば簡単に殺せるのにしないなんてのはバカ以外の何者でもないって言ったんだよ、()()()()


 己を侮蔑し、バカにする言葉を叩き付けると共に偽物と断じる正樹に塚原。

 もとい、偽物は己の本来の姿とも言える塚原とは似ても似つかぬ体型と素顔を露わにすると共にニッコリと笑顔を浮かべて告げる。


 「ションベンしてる所を殺られたら、流石に君が間抜け過ぎて可哀想と思ったんだ。それより、何で俺が偽物と解った?」


 挑発混じりの質問に対し、正樹は個室の壁に寄り掛かりながら質問に答える。


 「アイツが本気で誰かしらを殺るんなら、奴は躊躇う事無くションベンしてる所を刺す」


 正樹が質問に答えた。

 それと同時。

 偽物は何時の間にか短剣を手に迫って来た。

 目にも留まらない速度で切っ先が突き出され、正樹の腹部に迫ろうとする。

 だが、それよりも早く。

 正樹は後ろに勢い良く下がると共に、トイレの個室のドアを大きく開けていた。


 「な!?」


 視界がドアで阻まれ、切っ先が見事に深々とドアを貫くだけに終わる。

 残念な事に正樹の腹を抉る事は出来なかった。

 正樹は前に跳び出すや、左手で勢い良くドアを閉めると共に腰を僅かに捻りながら、反対の右腕の脇を閉める。

 そして、ドアが完全に閉じて後ろに退いていた青年と目が合った瞬間。

 青年の間合いに踏み込むや、思い切り腰の捻りと背中のバネを大いに活かしたロシアンフックで青年の顔面を打ち抜いた。

 見事に顔の中心を打ち抜かれた青年は折れた鼻から血を流しながら、タイルの床にドサッと倒れる。

 そんな青年を見下ろしながら、正樹は青年の胸を踏んで体重を掛けていく。

 青年から苦しみに満ちた呻き声が上がり、青年は己を踏み付ける正樹の足を何度も強く叩いて脱出を図ろうとする。

 だが、正樹は平然と涼しい顔をしたまま、スマートフォンを手にすると電話を掛けた。

 勿論、電話した先は110番である。


 「もしもし警察ですか?学校の中でナイフで刺し殺されそうになりました。犯人は取り押さえてあります。直ぐに来てください。学校は……」


 学校名と自分の名前。

 それから、学校内の何処か?

 そうした情報を全て揃えた上で正樹がスマートフォンに向かって告げると、青年は高を括った様に不敵な笑みを浮かべる。


 「どうせハッタリだ。お前等が警察に頼る訳が無い。それに俺達のバックには警察が居るんだ。逆にお前等が逮捕される」


 そんな青年に正樹はスマートフォンの画面を見せた。

 画面を見た瞬間、青年は顔を青ざめてしまった。

 正樹はスマートフォンの画面を見せたまま、嘲笑を浮かべながらわざとらしく大声で言う。


 「え!?君は警察の人の命令で僕を殺しに来たんだね!!と、言うことは警察庁に勤める鮫島 (あきら)さんの命令で僕を殺しに来たんだね!!?」


 スマートフォンを介し、警察のオペレーターにもシッカリ聞こえる様に大声で告げた正樹は満面の笑みを浮かべながら青年を見下ろすと、通話を切って笑顔で告げる。


 「俺だって日本国民だし、未来の納税者で有権者なんだ……警察に助けて貰う権利を行使したってバチは当たらないだろ?」


 コレ以上無い程に酷い言い草だ。

 しかし、歴とした日本国民であり、未来の有権者にして納税者なのは事実である。

 酷い事実を笑顔で述べた正樹は青年を踏み付けて見張りながら、通報した際の会話が全て録音されている事を確認すれば、邪悪な笑みと共に青年に感謝を述べた。


 「ありがとう。君のお陰で交渉材料が出来た。実に助かる……コレで交渉が有利に進められる」


 正樹の感謝に青年は言葉と共に生気を失い、何も言えずに居た。

 そんな青年に正樹は尋ねる。


 「俺達が君の友達を殺したって言うが、誰が言ったんだ?」


 「…………」


 正樹の質問に青年は沈黙で返した。

 すると、正樹は青年を踏み付ける足を退かすと、青年に告げる。


 「黙秘権を行使するって訳ね……なら、折角だし、良い弁護士を紹介してやるよ」


 そう前置きすると、正樹は笑顔と共に拳を翳して弁護士を紹介した。


 「挨拶しろ。"(こぶし)"弁護士だ」


 男子トイレが"拳"弁護士の登場と同時に、"真実の部屋"と化した後。

 (こぶし)弁護士の尽力もあり、黙秘権を行使していた青年は聖歌隊の如く高らかにペラペラと全て語って教えてくれた。

 青年が識る限りの情報を得た正樹は警察の皆様が駆け付けて来るのを静かに待つのであった。





 駆け付けて来た警察の皆様に殺人未遂の現行犯で顔は痣だらけ。

 それどころか、腕や脚が1本ずつ折れている青年を引き渡し、最寄りの警察署で事情聴取を受けた後。

 正樹は警察署内のある部屋で、とある警察官僚の女性とサシで見詰め合うと慇懃無礼に語り掛ける。


 「貴女のクソみたいな働きのお陰で私の生活が滅茶苦茶になったんですが、ソレに関して制式な謝罪って無いんですか?」


 そう問うた正樹はスマートフォンを取り出すと、青年の失言とも言える言葉を再生した。


 「どうせハッタリだ。お前等が警察に頼る訳が無い。それに俺達のバックには警察が居るんだ。逆にお前等が逮捕される」


 その録音を聞かさると、警察官僚の女性……鮫島 (あきら)は頭を抱えながらも正樹に謝罪する。


 「今回の件は大変申し訳なく思っている」


 鮫島 明の謝罪を正樹は受け入れず、寧ろ更に責め立てていく。


 「アンタの不始末で状況は一気に悪くなったんだぜ?アンタの立場がどうなろうが知ったこっちゃない、何せ通報時にアンタの名前を出してやったから上と下から詰められても……ソレは自業自得って奴だ」


 其処で言葉を切った正樹は一息置くと、更に言葉を続けた。


 「貴方の御友人(ビジネスマン)にも伝えたが、俺達は連中の手下を殺ってない。一応、連中と彼女が接触した時には生きている証拠もある」


 そう告げると、正樹は涼子に残させた当時は生きていた証拠とも言える動画を見せた。

 鮫島 明はソレを見ると、無言のまま渋面を浮かべてしまう。

 そんな彼女に正樹は言葉を続け、問うた。


 「亡くなった被害者2人と顔は一致するのか?」


 「この2人で間違い無い」


 正樹の問いに鮫島 明が肯定すると、正樹は畳み掛ける様に言葉を続けて行く。


 「更に送られた動画には連中が逃げていく後ろ姿もある。と、言う事は彼女(涼子)は2人を殺していない証明に他ならない訳だ……違うか?」


 鮫島 明は沈黙でしか返せなかった。

 そんな彼女に正樹は問う。


 「遺体の司法解剖はしたんだよな?したんなら、死亡時刻と死因が解る筈だが?まさか、してないとか言わないよな?」


 正樹の問いに鮫島 明が教える事は無かった。


 「捜査情報は部外者には教えられない」


 鮫島 ()の当然の答えに正樹はハッキリと告げる。


 「だよな……当然だ。取り敢えず、俺達は件の2人を殺害した真犯人に関する情報を提供する用意がある。無論、この件に於いても沈黙しても良い」


 正樹に告げられると、鮫島 明は問う。


 「何が望みだ?」


 望みを問われた正樹は要求する。


 「先ず第一に、俺達は御行儀良く和平交渉を向こうに持ち掛けたい。だから、連中との会談をセッティングして欲しい。次に俺達を逮捕しようとするな。第三に、連中が和平交渉に応じなかった場合は俺達の本来の雇い主の命令に従い、連中を殲滅する……その際、アンタ等や行政の協力が欲しい」


 「一先ず、この3つが俺の望みだ」そう締め括る正樹に鮫島 明は答える。


 「最初の和平交渉の為の会談は必ずセッティングしよう。その際、私も参加して良いか?」


 「寧ろ、してくれ。第三者による監督下になきゃ泥沼になっちまう」


 正樹が鮫島 明の要望を承諾すると、鮫島 明は正樹の要求の残りに関する事を触れた。


 「逮捕するなに関しては君が先日言った通りの条件で良いならって事で……ソレが駄目なら、深夜未明の放火殺人事件に関する重要参考人にとして貴方を引っ張る」


 断固たる意思と共に告げられると、正樹は不敵な笑みと共に嫌味で返す。


 「放火殺人って何ですか?僕、身に覚えが無いんですけど?」


 正樹の嫌味を涼しい顔で受けながら鮫島 明は最後の要求に関して苦々しく告げる。


 「最後の協力に関しては立場上、公式には出来無い」


 その答えに正樹は強気に有無を言わせずに返した。


 「なら、非公式でやれ。嫌だって言うんなら、今回の件をマスコミにリークして、アンタの立場を台無しにしてやる。後、仲良しのビジネスマンとの件もマスコミや世論から興味を大いに引くんだろうなぁ……楽しくなりそう」


 正樹の脅迫に鮫島 明は渋々ながらも首を縦に振るしか出来なかった。


 「解った。可能な限り、君の要求に従う」


 「賢明な判断、ありがとう御座います」


 鮫島 明の言葉に正樹は皮肉をタップリ込めて感謝の言葉を述べると、釘を刺した。


 「あ、口封じとかは無しで御願いしますよ……そんな事されたら、僕は死ぬ時の道連れを沢山欲しくなりますし、日本で3度目のキノコ雲とか上げたくなっちゃう……あ、道連れする際の1人目は幼稚園に通う貴方の御子息である優君なのでよろしく」


 正樹の言葉に鮫島 明は絶句するしか出来なかった。

 ソレは、正義の味方が打ち倒すべき極悪人に敗北した瞬間にも見えた。





Fucked up situations call for fucked up solutions.


意味は翻訳機能が正しいなら…

『滅茶苦茶な状況には、滅茶苦茶な解決策が必要だ』


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