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現代に帰還した"元"邪悪な魔女は平穏に暮らしたいけど、駄目そうなので周到に準備して立ち回りながら無双します  作者: 忘八


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敗北

プロを相手にトーシローのカカシを用いる理由は何だ?


 その日の昼過ぎ。

 "犬小屋"を完全に放棄出来る迄に証拠隠滅を完了させると、正樹は涼子に告げる。


 「最初にも言ったが、当面は接触を極力避ける方針だ。なので、滅茶苦茶ムカついて不愉快極まりないが作戦も延期する」


 悲願たる復讐完遂の一助とする為、例のヤマは踏みたかった。

 だが、ソレをしたくとも警察の気配が近くでする以上。

 リスクを承知で無理にヤマを踏む支度をするのはバカ丸出しでしかない。

 そう、プロとして、指揮官として決断した正樹に涼子は尋ねる。


 「ねぇ……連中が全員、都合良く疫病に掛かったらどうなる?」


 涼子の問うた疑問に対し、正樹は即座に拒否で答えた。


 「辞めろ。下手しなくても俺達の仕業って線で捜査されちまうから」


 「駄目?」


 当時の邪悪な魔女としての一面を露わにする涼子に正樹は「絶対に辞めろ」と、指揮官として告げると理由を語る。


 「確かに魅力的な案だ。しかし、感染経路の捜索で必ず俺達が捜査線上に浮上して逆効果になる可能性の方がデカい。つうか、余程のボンクラでも俺達に辿り着くレベルだ。それに……」


 「それに?」


 「疫病を起こせるって知られてみろ?確実に国家権力からガチの監視される。下手したら一生ブタ箱で人生送る羽目になるか、暗殺チーム送られまくる事になる。そんなの流石に御免被るぞ」


 文明や司法が現代と並ぶ世界で長年プロの悪党として生きて来た経験を持つ正樹が理路整然に理由を語れば、涼子は納得してくれた。


 「それ言われたらぐうの音も出ないわね」


 「だから、俺達が出来る事は大人しく善良なカタギを演じるだけなのさ……だから、当面は長い休暇をゲット出来たと思えば良い」


 自分達が出来る事は、大人しく善良な市民として振る舞う事だけ。

 そう改めて正樹から告げられると、涼子は前向きに考える事にした。


 「なら、私は貴方の装備造りに時間を費やす事にするわ」


 涼子が長い休みを自分の装備を作る為に使う。

 そう言えば、正樹は釘を刺す様に注意点を述べる。


 「作るにしても衣類とかの装具だけな。間違えても武器作るなよ?銃刀法(銃刀法違反)引っ張られ(逮捕され)てからの余罪ゴロゴロでブチ込まれるとか洒落になんねぇから……」


 「解ったわ。因みに装備に関してリクエストある?」


 涼子から装備に冠するリクエストを問われると、正樹は答える。


 「贅沢に望むなら……戦闘服は上下は長袖で軽量かつ動き易い事。コレが最低条件だな。で、その上で難燃性とか防刃性とかも有ると良い。後、マジックテープじゃなくてボタン式にしてくれ……取り外しの度にベリベリ音がしない方が良い」


 正樹から戦闘服に関するリクエストを聞けば、涼子は次のリクエストを尋ねた。


 「戦闘服は解ったわ。なら、プロテクターとか装具類に関しては?」


 「最低でも軽くて動き易い奴。プロテクターに関しても軽量で頑丈なのが良い。とりま、プロテクターは両膝と両肘に欲しいし、ギア……プレキャリみたいなのに関しては前と後ろに軽くて頑丈な防弾プレートが欲しいし、そのプレートの後ろには衝撃吸収性能が良いトラウマプレートもセットしてくれると助かる」


 正樹のリクエストを聞くと、涼子は少しだけ思案してから答える。


 「一先ず、戦闘服に関しては貴方の提示した条件をクリア出来る。因みに色は?」


 戦闘服に関しては正樹の提示する条件は問題無くクリア出来る。

 そう告げた涼子から色はどうするのか?

 問われると、正樹は色を指定すると共に必要数を告げた。


 「黒と白。それに陸自(陸上自衛隊)の使ってる迷彩の3種類。それと、ウッドランドかタイガーストライプって迷彩のどっちかも頼む。数は4着ずつで……無理そうなら2着ずつでも良い」


 「色も数も問題は無いけど……メタルギアのオクトカムみたく出来るって言ったらどうする?」


 「滅茶苦茶魅力的な機能なのは認めるんだけどよ……魔力とかで行われるんなら、要らない。君に限らず、魔力感知能力を持った奴に即座に居場所がバレるリスクは避けたいんでな」


 魔法を用いない戦いの専門家からの意外な視点を告げられると、涼子は感心すると共に己の中にある職人としてのチャレンジャー精神に火を点してしまう。


 「魔力感知の点は盲点だったわ。なら、私や私以上の奴ですら感知出来ないレベルのオクトカムを作ってみる事にするわ……」


 ヤル気になった涼子に正樹は、ただ一言だけ告げた。


 「君の熱意に全て任せる」


 「そう言われると、俄然ヤル気になっちゃうじゃん……つー訳で、貴方をさっさと返したら早速始めるわ」


 「出来上がりを楽しみにするよ」


 正樹から期待の声を掛けられると、涼子は扉を召喚した。

 涼子が召喚した扉に手を掛けた正樹は、己が聖域たる平和で平穏な日常へと戻ろうとする。

 すると、涼子は忘れていた事を思い出したさの様に正樹の背へ向けて告げる。


 「あ!忘れる所だった!」


 「何だよ?」


 涼子の声で止まった正樹は振り向くと共に訝しむと、涼子は正樹へ高級感と気品に満ち溢れた10の黒い箱を差し出した。


 「約束してたトレジャラーブラック(高級煙草)……1カートンよ」


 1カートン分の高級煙草を渡されると、正樹は思い出した様に言う。


 「あぁ……そういや、そんな約束してたな。1個やろうか?」


 正樹から1つ差し出されると、涼子はやんわりと断った。


 「私の分なら既にあるから気にしなくて良いわ」


 「そうか。ありがとな」


 正樹は感謝と共に別れを告げると、今度こそ己の聖域へと帰った。

 自室に帰った正樹は涼子から貰ったトレジャラー・ブラックを雑貨屋で買った米軍払い下げのアモ缶(弾薬箱)へと入れた。1つだけ残して……

 早速、報酬として貰った高級煙草を味わいたくなったのだろう。

 正樹はトレジャラー・ブラックとプライベート用のスマートフォン。

 それに財布をズボンのポケットに入れると、部屋を後にした。

 リビングに顔を出すと、母親が父親と共に暢気にテレビを眺めながらオヤツを食べていた。

 そんな両親に向け、正樹は言う。


 「ちょっと出掛けて来るね」


 「夕飯までには帰って来なさいよ」


 「解ったよー」


 暢気に返した正樹はリビングを後にすると、さっさと家から出た。

 外に出ると、当然ながら間抜けな尾行者の気配と視線を感じた。

 だが、正樹は気にする事無く歩みを続ける。

 歩みを進める正樹は背後から距離を保って尾行を続ける間抜け(尾行者)2人に対し、呆れ混じりに心の内でボヤいてしまう。


 マジで素人丸出し過ぎる。

 オマケに連中は視線誘導の為の囮かと思って周囲を確認しても本命が居ねぇし……

 空からドローンとかUAVで監視してるかと思ったけど、してねーし……


 「流石に衛星からのデバガメだったら笑うぞ。アホ過ぎて」


 呆れと侮蔑の籠もったボヤキを漏らす正樹の中で悪戯心が芽生えようとしていた。


 プロらしくするんなら、気付いてないフリを継続して尻尾を一切出さない。

 コレに尽きる。

 でも、あのトーシローのカカシ共を何もせずに放置するのはツマラナイ。

 実にツマラナイ……


 「何か丁度いい感じの、手頃な悪戯とか嫌がらせ無いかな?」


 酷い言い草だ。

 しかし、尾行が尾行対象にバレた時は一気に危険になるのも事実。

 尾行に於けるそんな教訓を生命を奪う事無く、与えたい。

 そんな優しさを見せて上げようと思っていた。

 断じて、休日を台無しにされた事への腹いせをしたい訳では無い。


 うーん……

 良い案が浮かばないし、先ずは楽しみにしてた高級煙草を味わいに行くとしよう。


 悪戯(嫌がらせ)を具体的にどうするか?

 ソレを考えるのを一旦は辞める事にした正樹は通学等で毎度利用する最寄り駅に到着すると、切符を購入して改札を通った。

 それから少しして、尾行者達も切符を買って正樹の後を追う様に駅のホームに上がる階段を登っていく。

 2人の尾行者から見ると、暢気に駅のホームで両耳にイヤホンを嵌め、静かに佇む正樹の姿は明らかに油断している様にしか見えなかった。


 「私達の尾行に気付いてないようね」


 「気付いてたら、両耳にイヤホン嵌めて音楽は聴いてないだろうしね」


 「本当に危険な奴なのかしら?」


 「話が本当なら何十人も殺した危険な奴って話なんだけどね……」


 2人は暢気に言うと、実際に目の当たりにしている正樹が情報とは違う危険じゃない雑魚。

 そう感じてしまう。

 だが、()()()()()()

 何故ならば、正樹の両耳に収まるイヤホンから音楽は()()()()()()のだ。

 正樹は油断している姿を演じると同時。

 何時でも戦える様、既に臨戦態勢を整えて居た。

 そして、2人の尾行者のスマートフォンを介して会話も盗聴して居た。


 俺が危険な奴ねぇ……

 一応は煙草とか酒を除けば、普段は清く正しく生きてるんだけどなぁ……

 そりゃ、ヤマ踏む時はバチクソ違法な事してるけどさ?


 いけしゃあしゃあと自分は善良なカタギであると宣うと同時、違法な事(犯罪)をする犯罪者である事を正樹はキチンと自覚していた。

 勿論、悪人である事も自覚している。


 確かに俺は悪人だ。

 万死に値する程の悪人だ。

 でもな、毎度毎度ずっと悪い事をしてる訳じゃないんだけどなぁ……


 「俺だって、偶には善きサマリア人よろしく善良な振る舞いもする時が有るんだぜ?」


 正樹が小さな声で漏らした言葉は嘘臭く、胡散臭い物言いにしか聞こえないだろう。

 だが、善人であれ、悪人であれ……

 誰もが『"善きサマリア人"』になれるのも事実。

 なってはいけない理由は何処にも無い。

 皆無と言っても良い。


 閑話休題(話を戻そう)


 2人の尾行者は正樹の思惑通り、電車に揺られながらイヤホンを嵌めて音楽を聴く姿を見て、正樹を脅威と見做す事が無くなった。

 肝心の正樹は2人を内心で嘲笑う。


 救いようの無いアホだな。

 よくもそんなんで生き延びて来れたと思うよ。

 そこら辺のチンピラや民兵と比べても尾行技術は駄目だ。

 殴り込みが専門だとしても、相応に訓練すると思うんだけどな……

 まぁ、それでも君等のお陰でセーフハウス(犬小屋)を放棄せざる得なくなった。

 その上、俺達は行動を制限もされた。

 其れ等を踏まえれば、君等のカスな尾行は効果的な戦果を産んだ事は認めよう。

 

 正樹は2人の尾行者の技術をカスと断じながらも、そのカスによって手痛いダメージを受けた事を認めていた。

 だが、同時に引っ掛かるモノを覚えもした。


 カスを2人ずつ差し向ける事を選んだ指揮官は何者だ?

 それに、カス達に俺達を尾行させる事を選んだ理由は何だ?


 そう。

 プロを相手に尾行させるならば、カスと断じても良いトーシローのカカシを登用するのはハッキリ言ってナンセンスである。

 何なら、あり得ない……と、断言しても良い。

 だからこそ、正樹は尾行者達に尾行を命じた指揮官の事が引っ掛かった。


 マジで秘密裏に尾行したり、監視したいなら相応の連中にチームを組ませる。

 ソレこそ専門家連中……日本なら公安も含めた警察か?

 専門家なら遣り方を心得てる。

 その上、経験も豊富だ。

 相手によっては手を変え、品を変えて秘密裏の監視を実行出来る。

 連中は警察と繋がりがある。

 それなのに、ソレをしなかった理由は何だ?


 疑問が尽きる事は無かった。

 同時に、その疑問を解する為に必要なピースも無い。

 それ故、正樹は考え(あぐ)ねてしまう。

 だが、それでも1つの最悪な答えには辿り着いて居た。


 俺の仮説が正しいなら、俺は()()()()()()()()()()()()()()

 そうなると、俺は見事に踊らされた事になる。


 その最悪な答えとも言える仮説通りならば……

 否、正樹はその最悪な答えが正答なのだろう。

 そう判断すると、愉快そうに笑ってしまった。


 「ククク……」


 笑いを堪える様にして愉快そうに笑う正樹の姿に対し、2人の尾行者は不気味なモノを感じてしまう。

 そんな不気味な笑いをした正樹は、己の敗北をこの場には居らぬ尾行者達の指揮官に対して認めた。


 「俺の負けだ。見事なまでにしてやられた……いやぁ、見事に踊らされた」


 2人の尾行者は正樹の言葉が意味する事を理解出来ずに居た。

 そんな2人が首を傾げ、正樹を訝しむ様に見詰める。

 だが、正樹はそんな2人を気にする事無く立ち上がると、愉快そうな笑みを浮かべながら席に並んで座る2人の前に立った。

 無言のまま自分達を見下ろす正樹に対し、幾ばくかの恐怖を覚える2人。

 すると、正樹は笑顔のまま用件を口にする。


 「君達の指揮官に是非伝えて欲しい」


 「え?」


 「え?」


 2人は間抜けな声を漏らしてしまうが、正樹は気にする事無く用件を告げる。


 「貴殿の打った一手は実に見事。此方は貴殿の掌でまんまと踊らされてしまった……そう伝えてくれ」


 正樹の言葉の真意を2人は理解出来ずに居た。

 そんな2人に正樹は更に言葉を続け、問う。


 「本屋から俺をずっと尾行し続けてたろ?折角なら一緒にコーヒーでも飲まないか?どうせ、今日一日尾行するんだろ?」


 図星であった。

 同時に目の前に立ち、笑顔を浮かべて語り掛ける正樹が危険な男である事を嫌でも理解させられた(わからされた)

 それ故、2人は何も答えられなかった。

 そんな2人の反応に正樹は告げる。


 「無理には誘わない。それに考えたら、君等は煙草を吸わないだろ?なら、煙草に付き合わせるのは悪い」


 そう告げた正樹はさっきまで座っていた席に戻ると、目的の駅に着くまで暢気に揺られながら待つのであった。






 解説的なモノ?

トーシローのカカシに尾行させると言う一見、駄目な一手と思われるコレはある意味で効果的な一手として使えなくもない。

矛盾してるだろうが、実際問題として正樹は犬小屋を放棄する事になり、その上、当面は活動を自粛せざる得なくもなった。


ある意味でプロの心理を上手く突いた嫌な一手である


正樹「コレを考えても普通は実行に移さないんだわ…下手なリスク背負うから。それなのに実行に移した指揮官、絶対に性悪なギャンブラーやぞ(真顔マジレス


実際、正樹は踊らされて隠れ家を放棄する事を選ばされたんだから効果は見事に発揮出来た訳である点を考慮すると実に嫌らしい一手である←


それにコレを読んでたとするなら、2人で犬小屋放棄の為の運び出しを狙って踏み込めば一発で2人を現行犯でブチ込める

それなのにしなかったと言う事は?


其れ等を踏まえれば、敗北以外の何ものでないのである…

納得いかんだろうけど、暴力抜きの戦いなんてペテン師同士の騙し合いなのでシカタナイネ


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